Text:Mizuki Sikano
中学生でパソコンとDAWを使った音楽制作を開始し、現在高校生ながらテレビ番組やアニメ作品のテーマ曲なども手掛けるなどプロのボカロPとして活動している晴いちばん(16歳)とSAKURAmoti(17歳)。 今回は“今の高校生ボカロPの音楽遍歴”を覗き見るべく、J-POP、ゲーム音楽、ボカロ編に分けて対談してもらう!
目次
10代ボカロPが聴いて育ったゲーム音楽は?
今回の対談:晴いちばん×SAKURAmoti
任天堂のゲームがゲーム音楽の魅力を教えてくれた
―先ほどJ-POP編で、お2人は“通話しながら一緒にゲームをする仲”とうかがいました。
SAKURAmoti そうですね。僕らだけじゃなくてほかにも友達も交えながら、なんかもうほぼ毎日遊ぶよね(笑)。よく一緒に『VALORANT』などをプレイしています。
ー事前に“ゲーム音楽が好き”ということだけはうかがっています。お2人は小さなころからさまざまなゲームをプレイしてきたのですか?
晴いちばん そうですね。小学校高学年ぐらいまでは任天堂のゲームの影響を受けてきました。最初は任天堂のゲーム機Wiiで『マリオカートWii』をプレイしていて、そうする中でゲームの面白さだけではなく“このコースの音楽好き”とか無意識にゲーム音楽の魅力を考えるようになったんじゃないかなと思います。
SAKURAmoti 僕らはとにかく任天堂のゲームをプレイしてきたので、本当に何かしらの影響は受けていると思いますね。僕も『マリオカートWii』をプレイして、音楽が好きになったのでサウンド・トラックを買ってもらい聴いていたんですよ。小学生のころはそれを聴き込んで、何なら耳コピをして家にあったシンセサイザーYAMAHA EOS B900EXで演奏したりもしていました。
だから僕は編曲の基本を『マリオカートWii』から学んだと言っても、過言じゃないです。あとは任天堂公式のピアノ楽譜を幾つか買ってもらったりもしましたね。
―お2人共任天堂のゲームに慣れ親しんでいたのですね。
SAKURAmoti そうですね、僕はSwitchをゲットした現在でも『マリオカート8 デラックス』をプレイするし、とにかくマリオカートという感じで(笑)。最近でも南国モチーフの“ココナッツモール”というコースの音楽を耳コピして遊んだりするくらい好きです。
振り返ると、任天堂Switchが発売されたころは『スーパーマリオ オデッセイ』にハマって、主題歌「Jump Up, Super Star!」をよく聴いていたと思います。ブラス・バンドをバックに歌を入れた楽曲で、キャッチーだけどお洒落なんです。
晴いちばん 僕持ってないけど、その「Jump Up, Super Star!」って曲はよく聴いてたよ。ジャジーなコードも使うんだけど、すごくキャッチーなんだよね。
YouTubeでおすすめされたゲーム音楽を聴いて演奏
―自分のプレイしないゲームの音楽でも結構聴き込む感じでしたか?
晴いちばん そうですね。僕は小学6年生からパソコンで打ち込み始めて、ちょうどその時期にToby Foxさんが開発した『Undertale』というゲーム音楽と出会ったんです。YouTubeで『Undertale』のラスト・ボスSansと戦うシーンの動画をおすすめされて、たまたまクリックしたら音楽「MEGALOVANIA」がめちゃくちゃ良かったという感じでした。先に音楽にハマって聴き込んで、任天堂Switchで『Undertale』のプレイにものめり込んでいきました。
―YouTubeの動画をきっかけに、初めてゲーム音楽からゲームにもハマった感じ?
晴いちばん そうですね。僕はYouTubeにあるゲーム実況動画を見る習慣があったから、BGMに魅せられてからゲームにハマる機会も多かったなと思います。あと僕は『Undertale』が初めてのインディ・ゲームだったんですよね。
打ち込みを始めた時期とそれが重なったこともあり、完全に「MEGALOVANIA」と同じ音を目指して音を探して作り込みをしたり、はたまた自分なりにアレンジしたりとか、いろいろと研究した記憶があります。
SAKURAmoti ゲームを持っていないけれど音楽だけは聴く、みたいなことはよくあるよね。周囲の友人たちにも“これめちゃくちゃ良い曲だから!”とかおすすめされて、ピアノで弾いてみたりした記憶もあります。僕は任天堂Wii Uでプレイする『Splatoon(スプラトゥーン)』が流行した時期に、音楽だけ聴いていた記憶があります。
―SAKURAmotiさんもハマったゲームの音楽を打ち込みしたりしましたか?
SAKURAmoti 僕はAPPLE iPadで打ち込みを始めたのが中学生になってからだったので、小学生のころは任天堂3DS用シンセで作曲もできるKORG M01Dを演奏したり、『大合奏!バンドブラザーズDX』内でゲーム・プレイするための曲を自分で作れる機能が付いていたので、それで作曲したりもしていました。
―ゲームで演奏や作曲の練習までできたわけですね!
晴いちばん 僕も小学生のころは『WiiMusic』で楽器演奏もどきなことをして、人知れずリズム感を鍛えたりはしていましたね。あとは中学校に上がってからバンダイナムコエンターテインメントのリズム・ゲームが周囲も含めてとても流行していって、僕自身も『太鼓の達人』とかデレステ(『アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ』)とかをプレイしていました。
SAKURAmoti 僕も上達はしなかったんですけど、ゲーセン(ゲーム・センター)で『太鼓の達人』とか『CHUNITHM SUN (チュウニズム サン)』とかをプレイすることはあったなと思います。
晴いちばん この時期にバンダイナムコスタジオの作曲家の皆さんのことが、とても好きになりましたね。特にイノタク(井上拓、applebonker、TAKU INOUE)さんの“エレクトロをアイドル・ソングに持ってくるセンス”には脱帽しました。僕が現在ボカロ曲にエレクトロを落とし込んでみようと思ったきっかけでもあるので、強く影響を受けているんじゃないかと思います。
SAKURAmoti イノタクさんは格好良いよね。最近だとMidnight Grand OrchestraってVTuberの星街すいせいとのユニットでアルバムを制作していましたが、それもめちゃくちゃ良い。「Never Ending Midnights」や「SOS」を聴いて“何じゃこれは”と思いました。
女性ボーカリストの歌モノに、こういった宇宙的なサウンドやリズム感などを組み合わせてくるのは本当に挑戦的で聴いていて刺激をいただきました。
音ゲーのクレジットでゲーム音楽の作曲家を把握するように
―“この楽曲はイノタクさんのものだ!”という感じでゲーム音楽の作り手を意識するようになったのはこの時期からでしたか?
晴いちばん そうですね。音ゲー(音楽ゲーム)って、プレイ前に“誰が作詞/作曲したのか”はっきりと表示されるじゃないですか。だからゲームをプレイする度に作曲家の名前が刷り込まれていて、お気に入りの曲とかで“またこの作曲家だ!”みたいな発見もあったりしたんですよね。
SAKURAmoti 特に『太鼓の達人』は僕らがボカロ曲にハマる、ないしボカロPの文化を知っていく一番のきっかけだったもんね。
晴いちばん そうだね。
SAKURAmoti それまで僕らがプレイしていた任天堂のゲームでは“ステージのための音楽”とか“このキャラクターを表す音”といった職人的な音楽作りが聴けるなと思うんです。でも、デレステとかは“作曲家の個性あふれる音楽で遊ぶ”という文化だから、僕らの興味関心がゲームじゃなくてゲーム音楽に向くきっかけになったと思っています。
晴いちばん その後、僕は『原神』(2020)というRPGゲームにハマるんですよ。ゲーム自体は無料でプレイできるのに、音楽は陳宇鵬(Yu-Peng Chen)という中国の方が作曲して一部はロンドン・フィルハーモニー管弦楽団などが演奏するという豪華な内容で。曲数もたくさんあるんです。
この音楽を聴いたときに漠然とオーケストラへのあこがれを感じて、次第にオーケストラの作曲もしてみたいと思うようになりました。最近楽譜も購入したんですけど、それを見て自分で打ち込んで、和声学の勉強してみたりしています。ストリングスの打ち込みをする上で参考にもなりますし、今後オーケストラの編曲もやってみたいので研究を続けたいです。
―自分の音楽を発展させていく上で、ゲーム音楽は大きな役割を果たしているのですね。
晴いちばん そうですね。クラシックのオーケストラとはまた違う“ゲーム音楽のオーケストラ”というジャンルがあると思っているんです。ゲーム音楽ならではのワクワクさせたり、美しさを感じるメロディ・ラインがポイントで、それをオーケストラの壮大なサウンドで鳴らすと、とても心に刺さるんです。
そういう人の心を動かすポイントは、ボカロ曲に取り入れても良い効果を生むと思うんです。だから、これからもさまざまなゲームの音楽を参考にしていきたいです。
SAKURAmoti 僕は晴いちばんくんほど本腰入れて研究しているわけじゃないんですが、やっぱり僕らがボカロを知るようになったきっかけでもある『太鼓の達人』は今でも研究の対象だなと思っています。最近追加された「ダンガンノーツ」はボカロPのcosMo@暴走Pさんが手がけた曲で、譜面そのものがもう難しいからゲーム・プレイの観点でも難易度が高くて話題になってたりするんです。僕自身の音楽スタイルと直接つながるわけではないけれど、素晴らしい楽曲だなと思って聴かせていただいてます。
To Be Continued. ボカロ曲編もお楽しみに!
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