Text:Mizuki Sikano Photo:Chika Suzuki
初音ミクが2007年に発売されてから16年が経った。現在までボカロシーンはさまざまな波を受けながら発展してきたわけだが、先頭の一人として、その荒波の中、自分を貫きながら漕ぎ続けているボカロPがsasakure.UKではないかと思う。
今回はそんなsasakure.UKの視点で、初音ミクを振り返っていく。テーマは、初音ミクイベント『初音ミク「マジカルミライ」』などとボカロシーンの変化。
目次
初音ミクのイベントとボカロシーンの変化
ボカロPはミクイベントを機に表に出るようになった
―この記事では「初音ミクとイベント」をテーマに話を聞いていきます。まずはsasakure.UK(以下ささくれ)さんの印象に残っている初音ミクのイベントについて教えてください。
sasakure.UK 2013年に行われた『初音ミク「マジカルミライ」』の第一回目と、あと2010年の『SNOW MIKU for SAPPORO2010』です。そのときに、僕、初めて顔出ししたのでよく覚えています。
ーネットが主戦場のボカロシーンがリアルに降りてくる機会が、初音ミクのイベントだった?
sasakure.UK 当時はそんな感じでしたね。まずボーカロイドが出始めたころから裏方だと思われがちだったクリエイターの仕事が少し前に出るようになったと感じました。ボカロPも初音ミクのイベントなどを機に表に出るようになったような……そんな印象を抱いていました。
ー初音ミクの開発元であるクリプトン・フューチャー・メディアが北海道でのミクイベントの雰囲気は、首都圏などで行われる『初音ミク「マジカルミライ」』や海外で行われる『HATSUNE MIKU EXPO』などとどのように違いますか?
sasakure.UK 北海道はやっぱりミクちゃんをキャラクターとして盛り上げてくれる人が多いなと感じました!盛り上がり方にちょっとアイドル感があるんです。海外で行われたミクイベントもDJとして参加しましたが、場所ごとに盛り上がり方が違うのが面白いんです! ドイツでやったときは音楽アーティストを観る感じ、インドネシアでは皆元気だから爆踊りする(笑)。
ー海外の方が初音ミクをどのように見ているのか、音楽をどのように楽しむのか、がリアクションに影響するのでしょうね。
sasakure.UK 海外に行っても、自分の曲が知ってもらえてて、歌ってもらえてるっていう感覚が、いまだに実感がなくて。行く度に、“皆、知ってくれてる嬉しいな”っていう気分になりますね。
今のミクはかわいい以外の側面も持っている
ー『初音ミク「マジカルミライ」』の第一回目では、有形ランペイジでバンド出演されていると思うんです。そのときから10年後の『初音ミク「マジカルミライ」10th Anniversary』はどんな感じでした?
sasakure.UK よくご存知ですね。一回目のときのイベントのムードは、まだ模索してる感じだったと思います。でも去年「フューチャー・イヴ」を書き下ろしてまた『初音ミク「マジカルミライ」10th Anniversary』にお邪魔して、“大きく変わったことがあったな”と思って。
2022年の方が客層が幅広くなって、年齢も上から下まで…家族3世代で見に来ている人がいたんですよ。“色んな楽しみ方が出来るようになったんだな”っていうのを感じて、しみじみとしてましたね。
ー『初音ミク「マジカルミライ」』の第一回目と10th Anniversaryでミクのイメージも変化していますよね。
sasakure.UK 第一回目のころは、可愛いミクちゃんとしての側面が強かったんですよね。でも“そうじゃない側面を持つミクちゃんも見ることができるようになってきたな”みたいな。
ボカロリスナーの皆さんも、以前より“曲を作る人のことを考えるようになったな”っていう印象がありますし、あと“よりミクちゃんのことを大切にするようになったな”っていう、この2つを大きく感じます。
ーどんな風に大切に……?
sasakure.UK ミクちゃんの衣装、振る舞い、選曲の背景とかを楽しんでいるように感じます。あと10th Anniversaryでは、初音ミクの公式デモソングを歌っている公演があったんです。僕が「初音ミクの思い出に残るボカロ曲」に選曲した平沢栄司さんの「ballade」という曲です。
「みくみくにしてあげる♪【してやんよ】」とかが出る前に、初音ミクを開発した人たちが“これから初音ミクはどういう広がりを見せるんだろうな?”と考えながら作った曲だと思うんです。それを現在のボカロファンが聴いている状況に感動しました。
ーささくれさんは『初音ミク「マジカルミライ」』を通して、初音ミクの成長とボカロ・シーンの変化みたいなものを両方感じると。
sasakure.UK そうですね。“こんな大きくなったよ”と思いながら、色んなクリエイターがここからスタートしたんだよなって実感させられます。
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