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文:鹿野水月(plug+編集部)

昨年デビュー10周年を迎え、来年2025年2月26日には“念願だった”日本武道館公演『さようなら、武道館』を控えている、歌い手Gero。

 

8月3日(土)の札幌から全国のZeppを周るツアー「火花」を敢行していた。この記事では9月16日(月)にZepp Osaka Baysideで開催された大阪公演の様子をお届けする。

Gero Live Tour 2024『火花』大阪ライブレポート(写真有り)

 開演前30分にも関わらず、フロアには人が鮨詰めの状態で、どこか張り詰めた熱気にあふれている。兵庫県尼崎市出身のGeroにとってこの大阪のツアー・ファイナルは地元ライブでということで、ファンもその特別感を感じ取っているのかもしれない。

 ステージとフロアの両方が緑の光に照らされ、今回のツアー・タイトル“火花”の文字が浮かび上がると、Gero BANDのメンバーのパスタ(Key)、Hiroki169 ぺいちゅん(Ba)、SHiN(Dr)、海賊王(Gt)そして、Geroが登場。1曲目としてメジャー・デビュー1stシングル「BELOVED×SURUVIVAL」の演奏が始まると、ブライトで澄んだ声が響きわたる。Geroの声が絶好調であるのを確認し、2曲目「アンチェインゲイザー」では、高らかなギター・ソロと骨太なボーカルが人々をさらに鼓舞し、フロアは観客のジャンプで揺れた。

 Geroのハイトーン・ボイスが炸裂すると、そのままの勢いで「名古屋のデブ」を演奏。演奏する地域によって歌詞をアレンジしてくれるこの曲、今回は「大阪のデブ」と連呼し、たこ焼き、お好み焼き、かすうどん、肉吸い、金龍ラーメンなど大阪の美味しい物が登場。間奏では観客と「デブ」を連呼し合うコール・アンド・レスポンスの時間が設けられているのだが、ここでGeroのハイトーン・ボイスに必死に食らいつくファンの歌唱力がなかなか印象的。もし次の日本武道館ライブから初めて参加するファンが予習の意味でこのレポートを読むのであれば、全力で歌の練習をおすすめする。

 そして不思議なことに、このコールは唐突に「Geroちゃんさぁ……」と蛇足のモノマネへと進行する。蛇足風の声で「心拍数♯0822」、米津玄師の「Lemon」のサビを歌ってもファンは完ぺきに復唱した。

 その後のMCで、Geroが観客に「どこから来たの?」と問いかけると、北海道から沖縄まで全国各地の地名が上がる。この日のライブが関西人を中心に、Geroへの愛の深いファンが勢ぞろいする日であったことが分かる。

 syudouの「爆笑」のカバーでは、パワフルなボーカルには歪みエフェクトがかかり、Geroのガナリなどが心地良いサウンドで届けられる。一瞬しんと静まりかえった会場にドーンと銅鑼の音が鳴ると、重低音のトラップ・ビートが流れて、wotakuの「シャンティ」のカバーが始まった。ギター・フレーズにエレキベースのユニゾンする音や、色気に満ちた囁き声とガナリの組み合わせなど、聴く者を快感あふれる世界へ誘うシーンが多く見られた。次のハチ「ドーナツホール」では、ドラムの疾走感に、細かいメロディを奇麗にハメていく歌唱力が光る。

 歌ってみたタイムを終えて、まだ6曲目であるにもかかわらず「喪失感がえぐい」とファイナルの感傷に浸っていたが、日本武道館公演チケットが一万七千応募もあることを報告し、「何も決まってないけど、大阪城ホールってどうなん?皆で行く?このビッグ・ウェーブに乗っていく?」と来年以降のライブへの意気込みも宣言。

 各公演での日替わり曲には、歌い手の同志である湯毛のことを考えて作ったという「you」をチョイス。高低差のあるメロディも楽々と歌い上げた後に、コール・アンド・レスポンスで満足感を得たGeroは「俺たちの言いなりだね!」と歓喜。そして、ちょっと間を置いてから「一人千円くださーい!」と呼びかけると、まさかのファンは「イェーイ!」と応答した。なんて欲深いコール・アンド・レスポンスなのだろう。

 そんな盛り上がりを後にして「neon」のビートが流れると、フロアはしっとりとした都会的なムードに一変し、艶めかしい裏声がソウルな演奏に溶け込んだ。「Love-Letter」では恋する心の機微をロマンチックに歌い上げる。「Unlocked」では、疾走感あふれるロックをバックに、大切な瞬間を確かめるように全員で手を振った。

 ノイズが響き白いレーザーがフロアに突き刺すと、Geroの歌がパンチインする形で、wowaka「アンノウン・マザーグース」の歌が始まる。小気味良い早口歌唱から、伸びやかにしっとり歌う表現まで披露した。

 「ヴィータ」では、ガナリの入ったハイテンションな歌唱を披露し、メタルのドラム・サウンドに思わずヘドバンしたくなる時間が過ぎる。そして「あぶらかだぶらぶらぶらぶサマー」では、カラフルなシンセ・サウンドに合わせて皆で両手でハートを作りふりふりする振り付けを楽しんだ。次の「しゃよう」では、ステージが真っ赤に染まる中、ハイトーン・ボイスがディレイする妖艶でヘビーな音の世界が広がる。

 ドラム・ソロから「お腹空いてきたよな?」という掛け声とともに最後の曲「うどん」が始まると、<どん、どん、うどん、うどん、うどん>の歌詞に合わせて、皆がタオルを握った拳を振り上げる。15曲目とは思えないハツラツとした歌唱に、観客も負けじと復唱。Geroのファンの、ノリが良さ、下ネタ耐性、声量と歌唱力に優れていることを一気に証明した瞬間だった。

 あっという間に過ぎ去ったライブを惜しむかのようにアンコールの拍手が鳴ると、Geroがツアー・グッズのTシャツを身にまとい再登場。「大阪、1.8倍声出てる」と観客を称えていたが、本当に合唱団のようだったと思う。

 「今日は何曜日〜?」と月曜日から曜日のカウント・ダウンをし、金曜日に到達すると、目覚まし時計の効果音とともに「金曜日のおはよう」を可愛く歌い上げた。そして、『火花』ツアーの毎公演でリハを一切せずに演奏してきたという「小悪魔だってかまわない!」も欠かさない。全国各地でGeroを見守ってきたファンにとっては、独特の達成感を覚える瞬間だっただろう。フロアの皆で<バッキューン!>と大合唱した。

 このアドリブを前提としたステージでは、かえってメンバーそれぞれの魅力が生きる。パスタ(Key)の鍵盤によるオブリや、Hiroki169 ぺいちゅん(Ba)のグルービーで骨太なベース、テンションを巧みにコントロールするSHiN(Dr)のドラム、メロディ・メイカーな海賊王(Gt)のリフなど、印象的なセッションが幾つもあった。しかも、時にハードロック調になることがある、このような「小悪魔だってかまわない!」は、Geroのライブでしか聴けないアレンジなのではないか。Gero BANDの個性を存分に感じられた。

 最後の最後は、1、2、3、4、5、6とカウント・ダウンをして、初期の曲「The Bandits」を披露。言葉の力を最大限に生かすような丁寧な歌い方から、ライブで暴れる楽しさを体現するような今日イチのハイトーン・ボイスで締めくくる。最初から最後まで、観客への感謝の意が込められたコミュニケーションとロックの絶頂感をフィーチャーした演奏で『火花』は幕を閉じた。

 今回も16年間の歌い手Geroをおさらいできるような選曲で、声色のバリエーションを存分に楽しめるセット・リストだった。華麗なシャウト、ハイトーン・ボイスなど、Geroのボーカリストとして正統派なパフォーマンスはもちろん、笑えて、楽しい、破天荒なレジェンドとしての頼もしさも感じるMCはツアーごとに違っていて面白い。次の日本武道館公演ではどのようなパフォーマンスを用意しているのか、期待だ。

Gero Live Tour 2024「火花」Zepp Haneda(大阪)セットリスト

1BELOVED×SURUVIVAL

2アンチェインゲイザー

3名古屋のデブ

4爆笑(syudouカバー)

5シャンティ(wotakuカバー)

6ドーナツホール(ハチカバー)

7you

8neon

9Love-Letter

10Unlocked

11アンノウン・マザーグース(wowaka)

12ヴィータ

13あぶらかだぶらぶらぶらぶサマー

14しゃよう

15うどん

16金曜日のおはよう

17小悪魔だってかまわない!(めいちゃんカバー)

18The Bandits

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