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取材・文:鹿野水月(plug+編集部)

太宰治『きりぎりす』×しまざきジョゼ イラスト/乙女の本棚シリーズ

 文学の名作を色彩豊かなイラストとともに楽しめる=乙女の本棚シリーズ第46弾として、太宰治『きりぎりす』が発売された。

 今回は本書のイラストを手掛けたしまざきジョゼにメール・インタビューを敢行。本書を手に取った方にも、手に取る前の方にも、是非とも楽しんでほしい。

しまざきジョゼ プロフィール
 東京都在住のイラストレーター。京都芸術大学客員教授。グラフィックデザイナーとしてデザイン事務所に4年勤務ののち退社しフリーランスとして活動。著書に『描きたい絵が描けるようになる本』、『永い季節』がある。
X:https://x.com/joseeshimazaki

イラストレーターしまざきジョゼ インタビュー

ー『きりぎりす』は今回初めて読みましたか? 他の太宰治作品など含めお気に入りなどがあった場合、しまざきさんが感じるその魅力について教えてください。

 「きりぎりす」は今回初めて読みました。恥ずかしながらいわゆる“文豪の作品”というものにほとんど触れたことが無く、太宰治であれば国語の授業で触れた「走れメロス」と10代のころに読んでおくといいと言われ手に取った「人間失格」くらいです。「人間失格」は、主人公の独白の深刻さの割に、どこか滑稽さや自嘲的な雰囲気が漂っているのが独特で興味深かったことを覚えています。

ー『きりぎりす』を読んでみてどのような感想を抱きましたか?

 「きりぎりす」を読んだ感想としては、短くかつ平易な言葉の組み合わせでも、その向こうに登場人物の豊かな心情が垣間見える点が読者を引きつけて止まない理由なのかなと感じました。書き出しも非常にキャッチーでぐっと引き込まれる展開なので、他の作品も手に取ってみたいと考えています。

ー『きりぎりす』の挿絵を手掛けるに辺り、積極的にインプットしたり、調べて学んだりしたことなどはありましたか?

 普段和風のモチーフはなかなか取り扱わないので、着物についての資料集めや勉強にはかなり時間を割きました。それでもまだまだちょっとしたおしゃれな着こなしや少し王道からはずれる小物の扱いなどまでは手が伸ばせていないと感じるので奥深い世界だなと感じます。

 それと、今回特に日本家屋や和洋折衷の建築を描くにあたって現存している建築を実際に訪ねて写真を撮って回りました。私の作品はそこまでハイディティールではないのですが、やはり自分の目で一度見ることはとても大切だと感じます。

ー好きなイラストレーターや画家などが居らっしゃったら、その方のお名前と、しまざきさんが魅力的だと感じる理由を教えてください。

 あげだしたら本当にキリがありませんが……イラストレーターでは上杉忠弘さんが一番好きです。大胆な構図と書き込みの緩急、どの媒体ともなじむ親しみやすいスタイルなど、好きなポイントをあげると一冊本が書けるかもしれません。あとはスペインの画家でホアキン・ソローリャという人が居るのですが、この方の光の捉え方がすごく好きでよく参考にしています。印象派絵画全般も好きですね。

ーキャラクター・デザインの際に、どのような要点に注意を払いながら考案していきましたか?

 私はあまりキャラクターデザイン的なところで活動をしてこなかったのですが、今回は昭和の映画に登場する女優さんをイメージしていました。かといって普段描いているものと大きく変わることはないのですが、表紙絵のような人物のアップはこうした試みから生まれた構図なのかなと思います。

 キャラクターデザインはまだまだ魅力的な表現ができるように思うので今後の課題でもあります。

ー私とあなた以外のキャラクターも文中には出てきますが、それらを影などにして明確にキャラクターとして描かなかった理由は?

 基本的に「私」の独白、そして「あなた」とすれ違っていく様子が描かれているので基本はこの2人を追っていくのがノイズもなくて良いかなと考えています。「私」は終始「あなた」に対して言及しているので、あまりその周囲の人物には関心が無さそうというのも一つの理由です。

ー後半にかけてあなたが描かれなくなり、描かれても影になってしまいますね。この表現の意図はどういったところにありますか?

 後半にいくにつれて「私」が思い描いていた「あなた」と実際の「あなた」に齟齬が発生していきます。「あなた」に対する嫌悪感から心が離れていく様子を表現できればと考えました。

ー黒猫は本文には登場しませんが、私に寄り添う形でよく描かれていますね。ここにおける黒猫は私にとってどのような意味がある存在なのでしょうか?

  「あなた」が思っていたような人物像ではないことが分かっていく存在であるのに対して、猫は「思った通りのままそばにいる」存在として描きました。なので絵を描いている「あなた」の横にも寝そべっているわけですが、描きたかったから入れたという側面も無きにしも非ずです。猫は可愛いですから。

ー現在読者の方々の手に『きりぎりす』が渡っていますが、どのようなところを楽しんでもらえたら嬉しいですか?

 全体の流れなどももちろんそうなのですが、文字と絵をなるべく区切らずにシームレスにつなげることを意識した構成で、そこにかなり時間を割いたので気にかけて読んでいただけたら嬉しいです。

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