文:鹿野水月(plug+編集部)
ボカロPの大漠破新やめろくるのMVイラストなどを手掛ける、イラストレーターOda Kogane。今回はOda Koganeに、イラストレーターになった経緯、ボカロ曲MVの制作工程、音楽家に思っていることなどをインタビュー。
そして、今回Oda Koganeが「音楽家」をテーマに書き下ろしたオリジナル・イラストのTシャツ/ロンT「Sublimation」の発売も決定! イラストに込められた思いを読んで、みんなで着よう。
■Oda Kogane「Sublimation」Tシャツ販売サイト:https://t-od.jp/products/odakogane-ts-001
■Oda Kogane「Sublimation」ロンT販売サイト:https://t-od.jp/products/odakogane-lt-001
目次
イラストレーター:Oda Kogane インタビュー
■Oda Kogane
【Profile】イラストレーター兼ちょっとアニメーションができる人。大漠波新「のだ」、めろくる「On&On」、サツキ「極彩色」、真野真央『のだ』などを手掛ける。運動とご飯が好き。
HP:https://www.pixiv.net/users/12419303
X(Twitter):https://x.com/oda_koden
Instagram:https://www.instagram.com/oda.kogane
Oda Koganeがイラストレーターになった経緯
ーOda Koganeさんがイラストレーターになった経緯から聞いてみたいです。
Oda Kogane(以下、Oda) 好きな絵を描いていたらいつの間にかなっていました。大学の勉強のかたわらで、MVイラストの手伝いをしていて、ふと気が付いたときにはイラストが自分の職業になっていました。周りに恵まれていたのでしょうね。
ーいつから本格的にイラストレーターを仕事にする決意をしましたか?
Oda あまり覚えていないのですが、大漠破新さんの「わかれみち / ゲキヤクβ・カゼヒキβ・初音ミク・重音テト」のお手伝いをした後だったかもしれないです。こんなに楽しいことが続くなら本腰を入れて頑張ろうと思いました。
ー仕事というよりも、楽しさを重視して活動できていたということですね。
Oda そうですね。昔からイラストを描くことは好きでしたけれど本当にそれだけで。まだまだひよっこで知らないことがたくさんあるので、日々学んでいく過程が楽しいです。
ーイラストレーターになる将来を見据えてはいましたか?
Oda そもそも好きなコンテンツのファンアートを描くことはありましたが、イラストがお仕事になるとは思っていませんでした。でも、大学在学中に友達へイラストを描いたときに、どんな風に描くか話し合ったり調整したりする過程が楽しかったんです。しかもしっかりした人だったので報酬ももらえて。そのとき、“こんな風に人とイラストを作ったら楽しいのだろうな”とは思っていました。ちょうどそのくらいのときに、めろくるさんの新曲のツイートをTwitterのおすすめで見かけて、“この人とMVを作ってみたい!”とお声がけしました。これが最初のイラストのご依頼でしたね。
ー自分からご連絡したのですね! 当時Odaさんが手掛けた曲は?
Oda めろくるさんの「Magic / めろくる feat.初音ミク 巡音ルカ 鏡音リン」です。初音ミク、巡音ルカ、鏡音リンの3人を描いています。ボーカロイドたちはそれぞれ年齢などの設定が決まっているのですが、この曲はキラキラしつつも夜がテーマの大人っぽい雰囲気だったので3人ともやや大人っぽく描きました。
その後、幾つかMVのお手伝いをさせていただき、いろいろな経験ができて楽しかったですね。特に、めろくるさんの「光彩 / めろくる feat.初音ミク」は初めてのMVアニメーションの制作だったので思い出深いです。
ーOdaさんがボカロ曲のMVイラストを描きたいと思った理由は何でしたか?
Oda 楽しそうだったからです。昔からいろんなボカロ曲やMVの世界観に触れることが好きで、ずっとニコニコ動画を漁っていました。そのときはまさか作る側になるとは思っていなかったですが(笑)。
ーボカロ曲を頻繁に聴くようになったきっかけはありましたか?
Oda n-bunaさんととわさんの存在が大きいと思います。ボカロ曲に触れる前に聴いていた音楽はクラシックやポップス中心だったので、最初はボカロが持つ独特な雰囲気の音作りや調声になじめていなかったんです。でも、偶然n-buna「ウミユリ海底譚」やとわ「『13』」を聴いたときに、それぞれに違った方向のボカロ曲の良さを感じることができて。その2人を入口にさまざまなボカロ曲に触れていった気がします。
ーOdaさんが描く絵のスタイルで、儚げな表情や揺らぎのあるヘアスタイルなどは、繊細なタッチの少女漫画を思わせます。影響は?
Oda 父の本棚にあった、1970〜80年代辺りの少女漫画の影響かもしれません。特に、萩尾望都さんの『ポーの一族』や成田美名子さんの『エイリアン通り』、『あいつ』は何度も読んでいました。その年代の少女漫画のイラストは、モノクロでも光や色彩を感じるようなタッチや微細な表情の描き方が魅力的だと思います。
めろくる「マスカレード feat. MEIKO」/大漠破新「のだ / ずんだもん・初音ミク・重音テト」制作秘話
ーボカロPの方々からどのように依頼を受けるのですか?
Oda メールやDiscordでご依頼の連絡をいただいてます。事前に音源や曲の概要をメッセージで送ってもらった後、ミーティングをして細かい部分の打ち合わせをしています。イラストに関しては一緒にイメージを擦り合わせながら作っていくことがほとんどで、私発信でMV構成を考えることも少なくないです。
ーではMV構成を一から考えるところから、Odaさんの制作がスタートするのですね。
Oda そういったことが多いと思います。音源をお送りいただいた時点で、ミーティングまでにラフや絵コンテを描いておくこともあります。そうするとMVをイメージしやすい気がするので。実際そういった中でアイディアを出すのは楽しいですし、よりコミュニケーションが取りやすくなると感じています。
めろくるさんの「マスカレード feat. MEIKO」では、女優帽を被って白い衣装を着たMEIKOを描いて欲しいとお願いされました。若いころの少し苦い思い出といった雰囲気を出したかったので、白いドレスを赤いドレスに変化させて表情に憂いを持たせたり、過去を思い返すようなカットを入れたりしました。直接言葉にするとややセンシティブなので、それを上品かつ美しく表現したかったんです。
ー表現の仕方によっては聞き手が受け取りづらくなってしまうかもしれないですものね。
Oda そうですね。表現の仕方には特に気を遣っています。でも抽象的すぎて伝わらないことも避けたいというか。特に大漠波新さんに「のだ / ずんだもん・初音ミク・重音テト」のイラストを依頼していただいたときは、内容が内容なので一つ一つのシーンをどう表現するかすごく悩んでいましたね。初めてデモを聴いたとき、“どうしたらいいんだこれは……”と頭を抱えたことを今でも覚えています。MV内のイラストの表現のラインは悩みどころですね。
ー表現していいラインを見極めないといけない理由は?
Oda その曲の持つ良さをまっすぐ伝えたいからです。MVを見る方々に不必要に負の感情を抱かせたくないですし、できる限り楽しく見てほしいですし……と言いつつあえて周りを見ずに走り出すしかないこともあるので実際はケース・バイ・ケースなのかも。
ーOdaさんは大漠破新さんやめろくるさんと連続で作品を作ってきて、何か気づきなどがありましたか?
Oda さまざまな角度から見たその人の解像度が上がっていく気がします。“ここは譲れないポイントなんだな”や“これが好きなのかも”が少しでも理解できると制作しやすいです。また、ちょっとおこがましいのですが、その人の音が分かってくるような気がしていて。そのボカロPさんが持つ特徴的なリズムや音、歌詞を拾って、どのように画面に起こすかを考えながら描くこともあります。
ー「のだ / ずんだもん・初音ミク・重音テト」のように、転調するシーンでキャラクターの表情が正反対の感情に変化したりとはっきりとしたコントラストを感じる表現が印象的です。
Oda ありがとうございます。大漠さんの音がそう描かせてくれたのだと思います。この曲はとにかく“その合成音声が言う”ことが大事だったので、“この音が鳴ってこの歌詞を歌っているタイミングにどういう表情をするだろう?”ということを考えながら描きました。
余談ですが、最後の方の絵を描いているときはずっと歌詞の<ありのまま>について考えていたので、“結局何も分からないけど白なら何色にでもなれるでしょ!”とゲシュタルト崩壊しながら絞り出した記憶があります。特にラスサビの頭の歌詞で<これがありのままなのだ>というフレーズが出てくるので、その辺りに寄り添うイラストを描くことがと難しかったです。大漠さん本人はもっと暗いラストになると思っていたらしく、ラストのカット2枚を見せたときはかなり驚いていました。

ー音から感じたムードをどのように絵に落とし込んでいますか?
Oda 曲を聴き込むと、音が持つ動きや色のイメージが浮かんでくるので、それを元に絵に落とし込んでいます。また、ボカロPさんとMVで初めてご一緒するときは、それまでのMVをすべて見てから描くようにしています。その人が作ってきたところにお邪魔する立場なので、過去作のアートワークは必ず頭に入れておくようにしています。
ー「光彩 / めろくる feat.初音ミク」ではイラストだけでなくアニメーションを手掛けているとのことでしたが、その際にはどのようにアニメーションを構築しましたか?
Oda アニメーションの作り方を調べて、見よう見まねで描いていました。“この曲がループ・アニメーションMVになったら面白いだろうな”と思って頑張りました。要領の良い作り方が分からなかったので、部位分けをしないで頭からつま先まで一枚一枚描きましたね(笑)。APPLE iPadの中に入れているCLIP STUDIO PAINTでイラストを描いて、その絵を一枚ずつ配置してFilmoreというソフトで動画にしていきました。初めてだらけで大変な思いをしましたが、すごく良い思い出です。
ー部位分けというのは?
Oda 動かす部分と動かさない部分を分けて描いて、アニメーション制作をするときに部位分けをして描くんです。
例えば、今回の場合は主に動くのが髪と上着のパーカー、羽根なので、そこだけ分けてアニメーションを付けて、それ以外の動かない部分は一枚だけ描いて1番下のレイヤーに置いておけば奇麗に仕上がります。この方法だと効率良く作業を進められるのですが、初心者で諸々分からなかったので動かない部位も含めて、線画を描いて毎回全部塗っていました。多分手間は3倍くらいかかってしまった気がします。
ーボカロPと制作を共にするメンバーとして、プレッシャーを感じることは?
Oda “無い”とは言い切れないのですが、どちらかというと“良いものを作ろう!”という前向きな緊張感が近いと思います。実際その方の曲が好きで、制作をご一緒しているので。
ーボカロ曲制作における自分の役割について、ご自身ではどのように考えていますか?
Oda 拡声器みたいな役割だと思っています。もちろんイラスト自体を見ていただけることはあると思うんですけど、MV制作をするときには曲の良さを伝えることに徹しています。個人的には、ただ聴くだけではイメージしづらい部分の曲の良さを、いかに伝わるように描くかが大事だと思います。
Oda Kogane オリジナルTシャツ「Sublimation」
ー今回描き下ろしていただいたイラスト「Sublimation」は、小説『花吐き病』からインスパイアを受けているのですよね。
Oda 人が誰かに伝えたいことって、決して全部が奇麗なものとは限らないと思うんです。それらをそのまま言うだけだと、ただの文句や愚痴、奇麗ごとになってしまう気がして。でも音楽で表現すれば、どんなことも作品に昇華できるんじゃないでしょうか。それを表現するために口から花が出る姿を描きました。あと、音楽を作るのって何かと苦労する部分も多いと思うので、元ネタの花吐き病の苦しさとも少しつながるのかもなぁと。音楽家って音楽に片想いしているようなものかもしれないですし。
ー手で隠しているのはどうして?
Oda 本人が望んでいても望んでいなくても、表現することをやめられない様子を表したかったんです。歴史上の音楽家も現代の音楽家も、苦しみながらも止めることができない人がたくさんいる気がします。あと、口を隠すとその人の気分や状況によって見え方が違うので、見る側が入る余白を持たせたかったという目的もあります。
ーこの袖のイラストは何のモチーフでしょうか?
Oda これは額縁を斜めから見たところです。音楽家について、その人自身について音楽で見える部分はほんの一面であることを描きたくてこのモチーフにしました。実際何分かの間に、その人すべてを詰め込むことって難しいでしょうし……。
ーこのTシャツとロンTをどのように着てほしいですか?
Oda 好きなタイミングで着ていただけたらうれしいです。お出かけのときでも良いですし、着古したらお家時間のダル着でも良いですし。音楽があるところだと、なおさら良いかも。ぜひこのTシャツをさまざまな場所に連れて行ってくれるとありがたいです。
Oda Kogane「Sublimation」販売情報
■『#音の絵師』オリジナルTシャツ販売サイト:https://t-od.jp/collections/otonoeshi
■Oda Kogane Tシャツ販売サイト:
■Oda Kogane ロンT販売サイト:
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