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企画:Mizuki Sikano(plug+編集部)、design:suco、Art by Rella © CFM

2023年8月31日に16歳を迎える初音ミク。発売してから16年の間に、初音ミクはどのようにクリエイターを刺激し、ボカロの文化を発展させてきたのだろう?

 

今回はボカロ黎明期や現代で活躍している、ボカロPと歌い手たちにとって大事な初音ミクの思い出曲とその魅力を聞く。

ナユタン星人の思い出に残る初音ミクが歌う曲は?

ナユタン星人

【Profile】ナユタン星人という名前で曲を作っています。イラストや動画制作もやります。代表曲は「エイリアンエイリアン」「太陽系デスコ」「ダンスロボットダンス」など。提供曲はEve「惑星ループ」、ナナヲアカリ「ダダダダ天使」、ミライアカリ「ミライトミライ」、ピンク・レディー「メテオ(映画妖怪ウォッチ主題歌)」など。

ナユタン星人の思い出に残る初音ミクが歌うボカロ曲

OSTER project「恋スルVOC@LOID」

cosMo@暴走P「初音ミクの暴走(ショートバージョン)」

アゴアニキ「方向音痴」

●最も印象深い曲:cosMo@暴走P「初音ミクの暴走(ショートバージョン)」へのコメント

ぼくはニコニコ動画というサイトが開設した次の日くらいからずっと入り浸っていたいわゆる「ニコ厨」で、ボカロもミクオリジナル曲が投稿されはじめた当初から追いかけていました。当時はオリジナル曲の投稿もまだ少なく、毎日追っていればほとんどのボカロ曲を把握できるくらいでした。無限にボカロ曲が増え続ける今では信じられませんよね。

そんなある日、あの可愛いミクさんのイラストサムネと共にニコニコ動画ランキングに現れたのが『初音ミクの暴走』でした。当時のボカロ動画のタイトルの定番として「ミクさんにオリジナル曲歌ってもらった(曲名)」という形式があったのですが、この曲のタイトルは「”喋って”もらった」でした。そのタイトル通り、歌も交えながらミクさんがめちゃくちゃ早口でラップに近いようなことをする曲で、それが当時は新鮮でとんでもない衝撃を受けたのをいまでも覚えています。最近のミクさんは当然のように早口だしラップも上手ですけどね。

それと、当時のミクオリ曲は「電子の歌姫」的なイメージと親和性があるためか、テクノポップっぽいジャンルが多い中、イントロでギターが使われているロック調の電波曲だったのも珍しくて新鮮でした。てか単純に好みでした。この曲のギターは打ち込みギター(実際に人が弾いていない、プログラムで鳴っているソフト上のギター)を使ってるんですが、「打ち込みギターでもこんないい感じになるのか!」とびっくりしたのも覚えています。ぼくは楽器が一切弾けず、今でもロック系の曲を作るのにギターはすべてマウスでポチポチと打ち込みしているのですが、思えばこの曲の打ち込みギターの音に希望をもらって、「自分も打ち込みギターでも良い感じに曲を作れるかも!」と意識しはじめたのかもしれません。あるいは単純にギター買うお金とコツコツ練習していく真面目な人間性がなかっただけかもしれません。

曲の内容に話を戻すと、歌詞もすごく良くて。早口部分ではその勢いにふさわしく、当時ニコニコで流行っていたネタや、ミクの暴走するキャラクター性などを歌いつつ、ところどころで「ボーカロイドは好きですか?」や「リアルの姿にゲタ10センチ本当のキミはどこへ?」などドキっとさせる歌詞も盛り込む「ネタとパンチライン」のバランスが秀逸なんです。そしてサビでは「ボクは歌う~あなたのために~♪」と、それまで音階のないラップ調から一転してしっかりメロディアスな歌になります。このメロもちゃんとキャッチーで良いんですよね。そして明るいサビのあとに「トキが過ぎても一緒にいてください~♪」で歌詞・メロディ共に少し切なくエモいパートが付随するのも好きすぎます。ぼくの曲はサビのあとにもう一つ味わいの違うサビを続けることが多いんですが、思えばこういうところでの「イイ!」って思った感覚が影響しているのかもしれません。

ほかにも楽曲の長さが1分30秒で、音ゲーマー同士だけが分かり合える親しみある尺だったことや、今ではたまにいる「自分でイラストも描く系のボカロP」にこの曲で当時はじめて出逢った衝撃や、このあとに『初音ミクの消失』につなげてシリーズで曲を発展させていく作曲形式の面白さを発見させてくれたこととか、書きたい好きポイントがまだやまほどあるんですが、すでに規定の文字数をかなりオーバーしているのでそろそろまとめないと。。。

とにかくこの曲によって、「人が歌う代わりに歌わせてる」しかなかったぼくのボカロ観に、「ボカロだからこそできる歌い方」という新しい魅力とその独自性を考えるきっかけを与えられました。それは後に続く『消失』でより多くのボカロリスナーが知ることになるのですが。。

ああ、本当は残りの2曲も語りたくて、自分が人生ではじめて聴いたボカロオリ曲である「恋スルVOC@LOID」と、はじめて当時は少なくて探し求めていた「ボカロック」に出会えて、ボカロMVの作品的な面白さに気づかせてくれた「方向音痴」も、この曲と同じくらい語りたいのですが……もう言われた文字数を尋常じゃないくらい超えすぎていて、怒られるんじゃないか、そもそもこの文字数で本当にOKされるのか、ボツになるんじゃないか。書きながらずっと不安になっているのでこのあたりで星に帰ります。

(編集部より)とんでもない熱量、ありがとうございます! ミクの魅力も十分伝わってきました。気を付けてお帰りください◎

ずばり、初音ミクの魅力は?

この質問は前の質問のさらに10倍くらいの文字数になってしまいそうなので別の機会に譲ります。



ニコニコ動画で「初音ミクの暴走(ショートバージョン)」を視聴する

「初音ミク Happy 16th Birthday –Dear Creators-」とは

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Art by Rella © CFM

「初音ミク Happy 16th Birthday –Dear Creators-」は、2007年8月31日に設定年齢16歳の歌声合成ソフトウェアとして誕生した『初音ミク』が、発売されてから16年を経たことを記念に始動したプロジェクト。

作品を創り/楽しみ/愛してくれるすべてのクリエイターと一緒に、創作文化の未来を育んでいけるような企画を実施するという。

■公式サイト:https://piapro.net/miku16thbd/

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