plug+ by Rittor Music

自分らしく音楽を始める。

スタイル検索

上達のヒント

文:鹿野水月、濱田侑佳(plug+編集部)
写真:Hideyuki Uchino

ナイトハイク ライブレポ『NIGHT HIKE Late 2024』

 さまざまなネット・カルチャーを音楽ライブやセミナーを通して楽しめるイベント『NIGHT HIKE』(ナイトハイク)。同イベントはこれまで渋谷WOMBで開催されるほか、名古屋と大阪を巡るツアーや、Spotify O-EAST/HARLEM/club asia(東京)の3会場を貸し切ったサーキット・イベントも催され、規模を拡大させてきた。

 今回、2024年最後の開催になった『NIGHT HIKE Late 2024』にplug+(ぷらぷら)編集部が参加してきたので、当日の写真や動画とともにレポートしていく。今回はアーティストのDJのほか、ライブも楽しむことができる内容で、実際にステージ上にはDJテーブルのほか、ドラムとDJのセットが組まれていた。

なきそ×滝紘平 @2F

 13時の開演前には、すでにフロアが来場者でいっぱいになっていた。会場が暗転し静寂に包まれると、歓声と拍手が起こり、ボカロP なきそのDJがスタート。

 ネット・シーンのトレンドや来場者の好みを押さえるような選曲をしながら、なきそ自身が好きなのであろうダンス・チューンやゲーム音楽も織り交ぜられており、常に観客を飛び跳ねさせるような選曲が印象的だ。また観客に向かって手を挙げたり、観客の方を向きながらリズムに乗って身体を揺らすようなパフォーマンスから、1人残らず一緒に盛り上がろうというような意思を感じた。

 しぐれういの「粛清!!ロリ神レクイエム☆(6TAN BOOTLEG)」が流れると、会場では「ごめんなさいが、聞こえなーい」などの大きな掛け声が。<粛清!!ういビーム>でなきそがビーム発射のポーズを取ると、彼の後方にある左右の照明から光が放たれる。最後には新曲を流し、ファンからうれしい悲鳴が聞こえた。これからまだあと7時間あるけど大丈夫か?と思うほど観客を湧かせたオープニング・アクトであった。

椎乃味醂×clocknote. @2F

 彼はステージに上がると、「椎乃味醂です、よろしくお願いします。一個だけ言いたいことがあって、最近マジで時間がなくて、事前にセトリを組むとかができなかったので、今日は即興でやらせていただきます。失敗しても温かい目で見てください」と報告。観客からは「全然良いよー!」、「頑張れー!」というたくさんの声援が贈られた。続いて「あと、なきそくんの後ということで彼の曲で一曲、リミックスを作ってきました」と話し、「化けの花」リミックスから椎乃味醂のDJがスタート。

 J-POPからエレクトロ、ロック、ゲーム音楽など幅広い守備範囲から選曲した曲を、巧みにつないでいく。自分の紡ぐ音に乗って揺れる椎乃味醂を見ながら、観客も思い思いに身体を揺らしていた。即興で曲を次々つないでいくDJプレイには、椎乃味醂の頭の中をリアル・タイムで覗いてるかのような感覚を覚え、次は何が来るのかという期待に胸が膨らんだ。

 ボカロ曲や彼自身の楽曲「あなたにはなれない」が流れると、観客は“待ってました!”とばかりに歓声を上げる。終始彼は冒頭のMCの言葉とは裏腹に、堂々のパフォーマンスを見せていた。

国士無双×clocknote. @2F

 3組目は、国士無双。国士無双は、音楽家のGUCHON(ぐちょん)と藤子名人から成る音楽ユニットだ。彼らのステージは、最新ヒット曲のNewJeans「Ditto」で始まった。

 怒涛の勢いで会場全体のテンションを加速させていくような選曲とプレイ。観客は知ってる曲であろうと知らない曲であろうと、音の楽しさ、面白さに応えるように、曲によってノリ方を変える。国士無双のステージはまるで、音を容赦なく観客に浴びせ、人々を彼らの世界に誘い、気分を操っているかのような雰囲気があった。

 突然静寂に包まれたフロア。規則性のある小鼓のリズムが流れてくる。そのリズムに合わせて手を叩くように国士無双が観客へ促し、フロアの一体感がさらに増す。何が始まるんだ?と期待が膨れ上がったところで、爆速のBellini「Samba De Janeiro」リミックスが流れ、観客から驚きの声と歓声が上がる。アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』ネタを取り入れた最後の曲が終わると、ステージに夢中にさせてくれた彼らへ、大きな拍手が贈られた。

雄之助×滝紘平 @2F

 4組目はボカロP 雄之助。ライブ序盤には彼自身の楽曲や晴いちばんをはじめとしたボカロPの楽曲を次々と流し、ボカロ・ファンの心を掴んでいく。

 そういったボカロ曲と、雄之助の好みなのであろう Xilent「Next Time (Far Too Loud Remix)」といったEDMの雰囲気を上手くリミックスでまとめ上げており、身体を大きく揺らしリズムを取る様子は、海外のクラブDJを思わせた。

 中盤には「ここでサプライズゲストです、Wami!」という言葉とともに、彼と一緒に音楽ユニットAwairoを組むシンガー・ソングライターのWamiが登場。Awairo「Navy (feat. 雄之助 & はるまきごはん)」、「Spotlight」、「Loop」などを生歌唱した。VJには各楽曲のMVが流れ、前方のDJステージで身振り手振りをして盛り上がる雄之助とともに、Wamiの繊細かつしなやかな歌声を楽しむ。また4曲目には、今日のために仕上げてきたという新曲「ブルームーン」を披露。エレクトロな曲調の楽曲と会場の相性が良く、観客は思い思いに踊った。

ピノキオピー×clocknote. @2F

 大きな歓声と拍手とともに登場したのは、ボカロP ピノキオピー。今回はドラムとDJとともに、ピノキオピーが歌唱する、ライブ・ステージになっている。

 「はじめましてのひとは、はじめまして。ピノキオピーと申します」というMCとともに彼の楽曲「アップルドットコム」が始まると、観客はこの瞬間を楽しみにしていたと言わんばかりに大きな歓声を上げ、初っ端からテンションが最高潮に。それにピノキオピーは、全力の歌唱と掛け声で応えていく。

 「神っぽいな」、「アルティメットセンパイ」、「ユーチューバー」といった彼の代表曲が次々に演奏され、観客は終始大合唱。その熱量を凌駕するエネルギーを持ってピノキオピーが歌い上げるほか、タイトなドラム演奏によって楽曲のビート感が強調され、さらなるノリの良さが生まれることで会場のテンション感が上がっていく。

 盛り上がりのピークを更新し続けながら始まったのはピノキオピー「僕なんかいなくても」。今度は会場が情緒的な雰囲気に包まれ、先ほどまでとはまた違ったムードになっていた。

水槽×clocknote. @2F

  ライブ・ステージが終わり、続くDJアーティストは、歌い手/シンガー・ソングライターの水槽。彼女の楽曲「SINKER」、 水槽×Such「SWITCH」などでは楽曲を流しながら歌唱しており、ライブさながらのパフォーマンスと透き通るように美しい歌声に魅了される。

 はるまきごはん「エンパープル」や宇多田ヒカルの「DISTANCE (m-flo remix)」、 NewJeans「ETA」といった選曲は、彼女の音楽の好みを知れるようで、聴いていて面白い。

 中盤には、水槽の後ろに歌い手の相沢が登場。2人で楽曲を歌唱し、彼女らの歌声が織り成す奇麗なハーモニーで会場全体が包まれる。

  弌誠「モエチャッカファイア」のイントロが流れると、「今から歌ってみたをします」と発言し、同楽曲の歌ってみたを披露。圧倒的な歌唱力で、さまざま楽曲で自由に歌ったりハモったり歌ってみたをするDJスタイルは、シンガー、歌い手として活躍する彼女ならではのステージだったのではないだろうか。

大沢伸一×Naohiro Yako @2F  

 彼自身の楽曲「COPY ME」から始まったクラブ界のレジェンド、大沢伸一のステージ。 プレイが始まるとすぐさま、観客から「フー!」といった歓声が上がった。

 彼が巧みなフェーダー捌きを魅せる度に、観客が大きな声を上げるという、熱量のあるステージ。その歓声に応えるように、大沢伸一の身振り手振りがどんどん増えていく。迫力のあるDJプレイのほか、オンマイクで掛け声をしたり、ステージ上で踊ったりする姿が印象的だった。

  中盤には観客頭上の照明がフロアへ降りてきて、人々を強く照らすという演出もあり、視覚的にも楽しませてくれる。前回の『NIGHT HIKE Early 2024』のステージとはまた違った大沢伸一のDJを楽しめたのではないだろうか。

原口沙輔×clocknote. @2F

 映像トラブルに見舞われ、急遽VJ無しで始まった彼のステージ。会場いっぱいに詰めかけたファンからは、「大丈夫だよー!」というたくさんの熱い声援が贈られた。

 そんなトラブルも、すぐに観客の記憶から吹き飛ぶことになる。初っ端から、彼の楽曲「イガク」としぐれうい「しぐれういの粛聖!! ロリ神レクイエム☆」、Creepy Nuts「Bling‐Bang‐Bang‐Born」というネットでも話題になった人気楽曲3曲を掛け合わせたマッシュ・アップを披露。観客の“ネットらしさ満載のパフォーマンスを見たい”という欲求を満たす。音楽、ネット・ミーム、VTuber、アニメなどのさまざまなジャンルからサンプリングしたものを1秒1秒にすき間なく詰め込んだり、伏線を散りばめたりする彼のDJステージは、一つの大型作品を観ているよう。

 ただでさえ観客は終始盛り上がりを見せているが、一度彼が手招きをすれば、さらにボルテージを上げる。観客の元気さもそうだが、それを引き出す原口沙輔のパフォーマンスには驚きだ。

DÉ DÉ MOUSE×Naohiro Yako @2F

 原口沙輔のステージ終盤から、テーブル横で待機していたDÉ DÉ MOUSE。DJが終了すると「僕、原口沙輔さんとB2B(編注:Back to Backの略。複数人のDJが交互に演奏すること)やってみたかったんだよね! やりません?」と誘う。原口沙輔は喜びの声を上げる観客を制し、一旦考える素振りを見せた後、「やりましょう」と返事。急遽、DE DE MOUSE×原口沙輔のDJステージが始まった。

 突然DÉ DÉ MOUSEは原口沙輔に「僕、今日ボカロ曲をたくさん作ってきたんですよ! 原口さんに聴いてほしいんです」と話し、次々に新曲のボカロ曲を披露。彼のMCによると各楽曲には、水垢、お寿司、ゴミ屋敷……といったキー・フレーズが用意されているよう。「僕が“水垢”って言ったら、皆さんも言い返してね!」とDÉ DÉ MOUSEが誘導し、彼と観客が思い切り「水垢!」と声を出すような、カオスなコール・アンド・レスポンスが繰り広げられる。

 原口沙輔もDÉ DÉ MOUSEのテンション感に呼応するように、人々の感性を刺激するようなプレイを披露。途中で、重たく長い低音を“ビーーーッ”と数秒流し続けたのが、会場を掌握するようなアプローチで面白かった。

 ステージ中盤にはゲストとして再びWamiが登場。DÉ DÉ MOUSEとの新曲を生歌唱し、再び美しい歌声を聴かせる。

 終盤にはDÉ DÉ MOUSEが「僕、来年からボカロPになろうと思っていて、2週間に一回くらい曲を出そうと思ってます」とまさかの報告。「みんな、報連相って大事だよね。そんなDÉ DÉ MOUSEの新曲を聴いてください。報連相!」というMCの後に、再びキー・フレーズのある新曲を披露し、序盤のエネルギー満ちあふれるコール・アンド・レスポンスを続行。ちなみに「ゴミ屋敷」、「報連相」は来年2025年2月にリリース予定だそう。

 熱量とカオスさが入り混じったステージは、最後に原口沙輔がryo「メルト」を流し、エモーショナルな雰囲気に包まれながら、幕を閉じた。

ライブ・ドローイング&トーク・セッションも……

 渋谷WOMBのメイン・フロア、サブ・フロアでDJパフォーマンスが繰り広げられている中、1Fラウンジ・エリアでは今をときめくイラストレーター、ゲーム・クリエイター、メディア・アーティストなどさまざまなジャンルのクリエイターが登場するトーク・セッションが用意されていた。この中から三組のみを簡単に紹介していく。

GYARI @1F

 ボカロPでシンガー・ソングライターとしても活動するGYARI(ココアシガレットP)は14時からライブ・ドローイングを開始。今回のNIGHT HIKEのメイン・ビジュアル(イラスト:go-shu 8)に登場するキャラクターの完成までの工程を観察。

神椿市協奏中。&クライマキナ/CRYMACHINA(山下RIRI×林 風肖)

 KAMITSUBAKI STUDIOのバーチャル・アーティストたちが登場するリズム・ゲーム=『神椿市協奏中。』と人類滅亡後の未来を舞台とするアクションRPGゲーム=『クライマキナ/CRYMACHINA』をテーマに、アニメーション作家の山下RIRIとゲーム・プロデューサー林 風肖がトーク。

 『クライマキナ/CRYMACHINA』のオープニング映像を作る際に山下RIRIが提出した絵コンテをチェックしてから、完成動画を皆で鑑賞する一コマも。トーク終盤では、作曲家のsakuzyo削除が元気に登場し、『クライマキナ/CRYMACHINA』のサウンド・トラック制作時の状況などを振り返る場面もあった。

META TAXI(葛飾出身×m7kenji)

 YouTubeでクリエイター同士の対談ラジオ×3DCGアニメを届けているMETA TAXIの出張収録として、葛飾出身とm7kenjiが対談。META TAXI内に登場するキャラクター、TAXI MATEらの架空CMを制作した際の絵コンテなども公開。ADOBEの制作ソフトなどを開いて、プロジェクトなどソフトの環境を説明する場面もあった。

ネット・カルチャーを遊び尽くせる『NIGHT HIKE』

 ボカロPからクラブDJ、シンガー・ソングライターといった幅広いジャンルで活躍するアーティストのDJ、ライブ・パフォーマンスを堪能できる『NIGHT HIKE』。そのほかにもイラストレーターやゲーム・クリエイターの作品の制作過程や思考を覗けるライブ・ドローイング、セミナーまで企画され、さまざまなネット・カルチャーを知れる、遊べる、楽しめるイベントは、ほかにないと思う。

 同イベントのラストには、来年2025年4月12日(土)に『NIGHT HIKE Early 2025』が、8月23日(土)、24日(日)には二日間にわたってSpotify O EAST、Duo MUSIC EXCHANGE、WOMB、clubasia(東京都/渋谷)の4会場を貸し切ったサーキット形イベント『NIGHT HIKE Mid 2025』の開催が発表された。加えて12月13日(土)には『NIGHT HIKE Late 2025』が催されるそうだ。

 どんどん規模が大きくなり、ますます注目度を高める同イベントに、“次は何が起こる?”と期待が膨らむ。来年も『NIGHT HIKE』に行って、その現場を目撃しよう。

次回の『NIGHT HIKE』は?

 

この記事をシェアする

  • LINE
  • twitter
  • facebook

ひさこフィーディー

注目記事

新着記事

注目記事