取材・文:鹿野水月(plug+編集部)
ソニーの360立体音響技術により全方位から音に包まれる感覚を体験できる、360 Reality Audio(サンロクマル・リアリティオーディオ)。今回は「Loveit?」などの人気曲によりネット・シーンなどで人気を集めている音楽ユニットbiz×ZERAが、360 Reality Audioとコラボをして「愛猫の」英語バージョンである「Love Cat 」を発表。
この記事ではbiz×ZERAに、その制作の裏側について教えてもらう。
目次
biz×ZERA「Love Cat 」を聴く

「Love Cat」(360 Reality Audio ver.):https://music.amazon.co.jp/albums/B0DZ69VWRJ?ref=dm_sh_KuKwD4v1LTw02fP6p2Y4LDtwt
▲クリックしてAmazon Musicで聴いてみよう!
360 Reality Audioとは?
360 Reality Audio 公式Webサイト:https://www.sony.net/360RA
biz×ZERA「Love Cat 」インタビュー

「立体音響って初めての概念でした」(biz)
ー360 Reality Audioの音源を初めて聴いたときの感想を教えてください。
biz 初体験過ぎて最初は理解し切れなかったというか、立体音響って初めての概念でしたよね。でも、さまざまな方の立体音響のミックスを聴く中で、まだ業界内でも正解が定まってなくて、クリエイターやエンジニアがいろいろと表現を試している段階なのだなと思いました。
ZERA 普通のステレオ・ミックスよりも感情表現が豊かになるなと。明るくて音数の多い音楽ならば、純粋に聴ける音の情報量が増えている印象でした。チルでリラックスできる曲調だとあまりうまくまとまらないのではと思いきや、音に包まれる没入感がアップするんです。立体音響はどんな音楽の魅力も拡張できるんだと知りました。
ー360 Reality Audioとのコラボレーションのために「愛猫 feat LOLUET」の英語版を「Love Cat 」としてリリースした経緯を教えてください。
biz biz&ZERAの楽曲は元々、立体音響やASMRと親和性が高いと思っているんですよね。360 Reality Audioの立体的な音像で、英語の歌詞のボーカルを展開してみたら面白くなるんじゃないかと思ったのでこの機会に試してみました。
ZERA 360 Reality Audioで新しい音楽制作のスタイルを試せるせっかくの機会なので、英語圏で生活なさっているさまざまなファンの皆さんに、楽しんでもらえたら良いなと思い英語版を制作することになりました。
ー全体の制作はどのように進行していきましたか?
biz まずは普段通りの音楽を作ってみるところから始まりました。「愛猫 feat LOLUET」を「Love Cat 」として出すにあたって、新しいボーカルの録音とコーラス・アレンジを考える必要があったので、まずはそこから始まりました。普段よりもウィスパー・ボイスでコーラスも多くするアイディアを決めていきました。どうしたら、リスナーの皆さんに新しい視聴体験だと感じてもらえるだろうって。
ーボーカル・レコーディングの段階では、コーラス・アレンジなども方向性を決め切って望みましたか?
biz そうですね。元々ドロップのシンセの音像にはWAVES MondoModを使って、定位をコントロールしていたりした曲だったんですよ。前や後ろから音が聴こえてくるような立体音響っぽい音像にしていたので、そのイメージでコーラスなどにも動きが付いている音源が面白いのではないかという話になりました。
ーレコーディングでボーカル素材を揃えて、エンジニアにミックスのご依頼をなさったと思います。ミックス・チェックなどではどのようなコミュニケーションを?
biz ヘッドホンでリスニングするための立体音響のミックスと実際にスピーカーを配置してリスニングできる立体音響の二種類のミックスを用意する必要があったので、それら二つの響きのギャップを埋めるための調整をすることになりました。スピーカーではしっかり聴こえた音も、ヘッドホン・リスニングのための仮想立体音響ミックスの方では音像が崩れてしまったりしていたんですよね。
ー楽曲内では“人間の狂気”のようなものをとても大事になさって聴こするのにこだわった箇所は?
ZERA サビのウィスパー・ボイスのゾワゾワとした感触や、Bメロのドラムを筆頭とする楽器隊のステレオ感を細かく調整しました。
biz 人の感性に訴えかけるために、気持ち悪さや違和感を大事にしていて、感情の揺さぶりを音で表現するためにウィスパー・ボイスの響きにこだわったんです。<Slowly, slowly, falling for me, falling for me>というところは直訳で「だんだん好きになる」という意味で、催眠術をかけているような場面なんですね。ここの没入感を、響きで表現できるか試しました。
360ならば2ミックスの解像度の限界を超えられる(biz)
ー楽曲のストーリーの説得力を360 Reality Audioのミックスによってどれだけ上げられるのかを工夫したということですね。
biz そうですね。360 Reality Audioはステレオと比べて物理的にスピーカーの数も多いですし、音を配置できる面積が広いってことなので、細かいノイズや効果音が聴こえやすくなって、ステレオ・ミックスで表現できる解像度の限界を超えられる感覚はありました。これによりリスナーの皆さんにもっと世界に入り込んでいただくことはできたんじゃないかと思います。
ーステレオ・ミックスにはDAWプロジェクトで横に伸びたトラックが縦に並んでいるようなイメージを抱きますが、360 Reality Audioの音源はそれとは違って、音の鳴る空間そのものを作るようなイメージを抱きますよね。
biz 360 Reality Audioって音楽に捉われていないような気がするんですよね。より効果音などを使用して空間演出をしやすいのかなという発見が今回ありました。だから、よりカメラワークなど工夫をして、MVと音の関連性を上げるといったことも今後やってみたいです。
ZERA 曲に捉われないって感じはあるよね。以前『愛狂』ってアルバムを出したときに、僕がインストの曲を作ったんですよ。それが環境音をマシマシにして、効果音とかを存分に入れ込んだ曲になっていて、そういうのを360 Reality Audioで作ってみることもしたいです。
ー今回はボーカルをフィーチャーしたミックスでASMR感を存分に出した作風でした。もし次回360 Reality Audioとまたコラボするならばどのような曲を作りたいですか?
ZERA わざと声だけのシーンを作って、斜め前とか後ろから声が行き交うようなホラーっぽい演出をしてみたいですね。
biz 曲の世界に異世界転生して入り込んでいくような曲も作れそうだよね。
ー360 Reality Audioとコラボで、お二人が異世界転生曲を作るのを楽しみにしています! 最後にリスナーの皆さんへ「Love Cat 」の楽しみ方に関するコメントをください。
ZERA さまざまな方向から音が行き交うのを聴ける経験は360 Reality Audioでしか楽しめないもの。ぜひ、音の動きを感覚的に楽しんでください。
biz 音に包まれる不思議な感覚を、MVと一緒に、または目を瞑ってみたりもしながら、身体全体で感じ取ってみていただきたいです。

biz×ZERAプロフィール


注目記事
-
#基礎から練習
やまもとひかる 爆誕!! スラップ・ベースっ子講座
-
#ゼロから学ぶ
きつねASMRと学ぶASMRの始め方
-
#上達のヒント
超学生のネット発アーティスト・サウンド解剖。
-
#ゼロから学ぶ
マンガで楽理を学ぶ!「音楽の公式」
-
#基礎から練習
ボカロPに学ぶ。ボカロ曲の作り方
-
#上達のヒント
宮川麿のDTMお悩み相談室
-
#ゼロから学ぶ
初心者の頼れる味方! はじめての楽器屋さん