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取材・文:鹿野水月(plug+編集部)

江戸川乱歩『悪霊物語』×粟木こぼねイラスト/乙女の本棚シリーズ

 文学の名作を色彩豊かなイラストとともに楽しめる=乙女の本棚シリーズ第41弾として、江戸川乱歩『悪霊物語』が発売された。

 江戸川乱歩の作風を、リアルに、美しく、体感できる一冊になっている。今回は本書のイラストを手がけた粟木こぼねにメール・インタビューを敢行。本書を手に取った方にも、手に取る前の方にも、是非とも楽しんでほしい。

粟木こぼね プロフィール
 2017年からSNSでの公開を中心に、創作活動を始める。映画のワンシーンを切り取ったような、どこか物語性を感じられる絵が魅力のイラストレーター。著書に『Glamelia 粟木こぼね作品集』がある。
X:https://x.com/nodonisasaru

イラストレーター粟木こぼね インタビュー

ー『悪霊物語』は今回初めて読みましたか? 粟木さんが感じる江戸川乱歩作品の魅力について教えてください。

 お恥ずかしながら、乙女の本棚シリーズのご企画のお話をいただくまで江戸川乱歩作品は一作も読んだことがありませんでした。『悪霊物語』が、私が初めて読む江戸川乱歩作品となったのですが、言葉選びや文章のテンポから感じ取れる独特の空気感がとても印象的でした。

ー『悪霊物語』を読んで、どのような感想を抱きましたか?

 先の質問の回答にも被るのですが、始終不穏で怪しい空気感が漂っていて、物語の内容だけでなく言葉選びや文章のテンポも含め、まさにタイトル通りの“『悪霊物語』が表現されているなぁと感じました。じっとりとした掴みどころのない不穏な表現がとても巧みで引き込まれました。

ー『悪霊物語』の挿絵を手掛けるに辺り、積極的にインプットしたり、調べて学んだことはありましたか?

 『悪霊物語』の初出が1954(昭和29)年なので、1950年代の日本の日常風景や建物の写真などを調べるところから始めました。あとは、人物のイメージを掴みたかったので、当時の人々の服装などにも注目しながら資料を探していました。

ー好きな西洋美術の画家などが居らっしゃったら、その方のお名前、好きなタイトル、粟木さんが魅力的だと感じる理由を教えてください。

 西洋美術には世界的にも有名で魅力的な画家がたくさんいますが、個人的に進んで見るのは写真家の作品の方が多いです。現代の写真家で特に好きなのはグレゴリー・クリュードソンです。静けさの中に不穏な世界観を生み出すことが巧みで、作品を見ると創作意欲もかき立てられるので、制作の合間に作品集を眺めることもあります。

 お気に入りの作品集は『BENEATH THE ROSES』です。構図や光と影の扱い方がとても好きで、制作の上でも影響を受けているところがあるかもしれません。

ー伴天連爺さん、大江蘭堂、美女のキャラクター・デザインの際に、どのような要点に注意を払いながら考案していきましたか?

■伴天連爺さん
 掴みどころがない不気味な人物像を表現したかったので、笑った際の口元や目などの表現にこだわりました。そのため、老人の顔の皺の入り方などに注目して、人物写真の資料を探してはイメージを少しずつ固めていきました。

大江蘭堂
︎ 身なりがだらしの無い︎伴天連爺さんとは対照的に、服装や髪型などきっちりとした人物像をイメージして描きました。︎服の皺などにも気を付けつつ、スーツの描き方にもこだわって制作しました。

美女
 人形のような美しさを表現するために、肌の質感や髪の毛の流れ、そして、目の表現に力を入れて制作しました。『悪霊物語』の挿絵の中では、この美女を描くことに一番苦戦しました。普段あまり人物の顔に注目した絵を描くことがなかったので、大変勉強にもなりましたし、いつもと違う感覚で絵を描くことができたので新鮮な気持ちでとても楽しく制作することができました。

ーキャラクターの表情ももちろんですが、背中や身体のポージングなどで感情を表現する技術がとても巧みだと感じます。こういった手段を積極的に取ることの意図は?

 人物の表情、特に目から感じ取れる印象はとても強いので、あえてそこを描かず、作品を見る人の想像力に解釈をゆだねることがあります。作品の核となる人物の表情を想像してもらうことで“より没入感のある作品作りができれば……”、と考えております。その場合は、表情以外で作品の空気感を表現しなくてはいけないので、腕や指、首の角度などのポージングにこだわります。人物の動き自体に特徴がない場合は、画面の陰影や構図などで表現します。

ー現在読者の方々の手に『悪霊物語』が渡っていますが、どのようなところを楽しんでもらえたら嬉しいですか?

 先の質問でも答えた内容とかぶるのですが、没入感のある作品作りを目指して挿絵を制作したので、読者の皆様が、主人公・大江蘭堂になったような気持ちで物語の中に入り込み作品を読み進めてくれたならとても嬉しいです。

読者プレゼント:粟木こぼねサイン入り『悪霊物語』を抽選で3名様に!

 乙女の本棚シリーズ『悪霊物語』のイラストを手がけたイラストレーター粟木こぼねさんのサイン入りの本書を、抽選で3名様に無料プレゼント!

 応募方法はplug+(ぷらぷら)のXの投稿をチェック。
■応募要件:plug+のXをチェック!

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