Text:plug+(ぷらぷら)編集部
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現役ボカロP51人に、実際に音楽制作で使っているDAWをアンケート調査。
目次
ABLETON Liveを使っているボカロPは?
まるで音で遊ぶかのように、感覚的に音楽制作ができる機能を数多く搭載したDAW、ABLETON Live。
この記事では、実際にLiveを使って作曲をしているボカロPの
①使っているDAWと購入理由
②そのDAWの好きなところ
③お気に入りの機能/内蔵音源/エフェクト
についてアンケート調査し、その結果をPが撮影したスクリーン・ショット付きで紹介!
DAW選びと、自分に合ったLiveの使い方の参考にしよう。
かごめP
【Profile】2009年にボカロPとして活動を開始。音声合成ソフトのキャラクターをプロデュースする集団“VOCALOMAKETS”に所属しており、結月ゆかり/紲星あかりの開発に参加している。
●使っているDAWは?購入理由も教えてください!
ABLETON Live(作編曲&ミックス用、使用年数:5~6年、初購入20年前)
最初に買ったのは、GUI(グラフィカル・ユーザ・インターフェース)のデザインが良いからだった記憶があります。 最近再度使い始めたのは、シンプルに使いやすいから。“自分に最も合ったDAWを探したい”と2~3日かけて体験版のあるDAWほぼすべてを試し、辿り着いたのがLiveでした。 “過去に使ったことがある”という先入観が邪魔をして、一番最後に試したのがLive。本当に最後の最後に試したので、理想郷に辿り着いた気分でした。
MAGIX Samplitude(マスタリング用、使用年数:10年)
当時の売りであった“音が良い”というのを信じて買いました(笑)。 また、ほかの市販DAWに比べて、事務的なGUIが逆に“仕事人”のようで心が引かれました。 使用開始当時の、明るくてちょっとダサいスキンを今でも愛用しています。
●そのDAWの好きなところは?
Liveは構造がシンプルなので操作に迷わないし、グループ機能が“神”のように便利なので、制作で試行錯誤をする上で非常に楽です。また安定性が高く、特に外部ハードウェアとの連携が良いので、アナログ機材を活用したミックス作業に役立っています。
Samplitudeについては、ことオーディオ周りの操作の柔軟性がとても高く、ほかのDAWと一線を画しています。また、音楽だけでなく映像寄りの編集機能も充実しているので、仕事でポッドキャストやオーディオ・ブックなどの“喋り”の編集をする際は、Samplitude一択です。
●お気に入りの機能/内蔵音源/エフェクトを一つだけ教えてください!
Liveの複数のトラックをグループ化する機能です。この機能は、まとめた瞬間にいわゆる“バス”として機能します。そのバスにエフェクトを挿すと、選択してグループ化したすべてのトラックにまとめてかかります。 これだけでLiveをメインのDAWにするには、十分過ぎる理由です。
また、SamplitudeのObject Editorでは、プロジェクト内のオーディオ(オブジェクト)のあらゆる部分を調整できます。 一つ一つのオーディオへ個別にエフェクトを挿すことができ、パンもボリューム・フェードもいじれ、さらに個別に別トラックへセンドまで送れるDAWをほかに見たことがありません。
栗山夕璃/Van de Shop
【Profile】蜂屋ななしとしてボカロPの活動を開始。その後栗山夕璃に改名し、自身が率いるバンドVan de Shopでも活動中。ギター・ロックやエレクトロ・スウィングをベースに、毒を持った歌詞を含む美しいメロディでクセになる楽曲を制作する。
●使っているDAWは?購入理由も教えてください!
CAKEWALK Sonar(使用年数:10年)
高校3年生のときに音楽を作りたいと思い、秋葉原のヨドバシカメラの店員さんに教えてもらい購入しました。
AVID Pro Tools(使用年数:7~8年)
Sonarで作曲を始めて少し経ってからスタジオで生楽器の録音をすることが多くなり、必要に感じて買いました。
ABLETON Live(使用年数:4年)
DJやEDMのアレンジの幅を広げるために購入しました。
PRESONUS Studio One(使用年数:2年)
Studio Oneのサイトにてソフト自体の見た目などを拝見して、“自分が使ってきたDAWの良いところが内包されているな”と感じ、また“使ってみたら楽しそう”と思い導入しました。
●そのDAWの好きなところは?
Sonarは10年と長く使っているので、すぐにアイディアを形にすることができます。AVID Pro Toolsは、今や音楽の共通言語になっています。音楽制作の関係者との録音後やミックス・セッションのやり取りで、かなり助けてもらっています。Liveは、ループの扱いがしやすくリズム構築が早いので、使っていて楽しいです。 Studio Oneは、作曲と同時にミックスまで完結できるので、助かります。
●お気に入りの機能/内蔵音源/エフェクトを一つだけ教えてください!
ほかのDAWにもある機能ではありますが、今回はLiveのワープ機能にしました。ワープは、ビートやループだけではなく、2ミックスもある程度まで縮めたり伸ばしたりタイム・ストレッチができる機能です。リズム・トラックをパワーで作っていける機能でもあり、作業をガンガン速く進めることができます。
ササノマリイ
【Profile】ボカロP“ねこぼーろ”として活動をスタート。プロデューサー/シンガーとして『プロセカ』やyamaへの楽曲提供のほか、多くのアーティストの作品を手掛ける。近年はたなか(前職・ぼくのりりっくのぼうよみ)率いる3人組の音楽ユニットDiosの一員としても活動し話題を集める。
ササノマリイ/ねこぼーろ「カナデトモスソラ」MV(ボカロ):https://www.youtube.com/watch?feature=shared&v=NY_P9k48pnY
●使っているDAWは?購入理由も教えてください!
ABLETON Live(使用年数:14年)
以前にAPPLE MacBookを購入し、対応しているDAWを探していました。自分の作りたいジャンルの音楽を作っているアーティストの使用機材を調べているとABLETON Liveが出てきて、そこからデモ版を使用し“これなら作れる!”としっくりきて購入しました。
●そのDAWの好きなところは?
自分にとって、マニュアルを見なくても直感的にやりたいことを形にできるUIがとても良いです。画面上に使用方法が分からない機能やパラメーターが出てきた場合も、画面左下に表示できるインフォ・ビューにマウスのポインターをかざすと機能の説明が表示されるので、作曲のモチベーションが削がれにくい点がとても良いです。そして、Liveの内蔵音源やエフェクトがめっちゃ好き。
●お気に入りの機能/内蔵音源/エフェクトを一つだけ教えてください!
入力されたMIDI信号を遡って記録することができる、MIDIのキャプチャー機能です。この機能は、僕の人生をかなり救ってくれた機能だと思います。僕は鍵盤でリアル・タイムに打ち込んでいくという音楽の作り方をしているのですが、偶発的に出たアイディアを録音するときに、“何回弾き直しても録音してないあのときの感じの方が良かったな……”となることが多くあります。MIDIをキャプチャーする機能を使用することで、アイディアをそのまま作曲フローに直流しできるため、格段にストレスなく制作できるようになりました。
サツキ
【Profile】2019年よりボカロPとしての活動を開始。小学生のころからボーカロイド文化に触れ、その世界に憧れを抱く。ジャンルに囚われない自由な作風と、膨大な情報量を含むサウンドが特徴的。
「メズマライザー」 初音ミク/重音テトSV:https://youtu.be/19y8YTbvri8
●使っているDAWは?購入理由も教えてください!
PRESONUS Studio One Pro 5(使用年数:4年)
一括で大金を支払うことのできない金欠大学生のときに、数多くの音のサンプルをダウンロードすることができるSPLICE Splice SoundsにてStudio Oneのサブスクリプション・サービスがあったためそれに加入し、それから使い続けています。
ABLETON Live Suite 12(使用年数:1カ月)
元々「メズマライザー」までは、すべての楽曲をStudio One Pro 5で作成していました。ただLiveのことを調べていくうちに、“このDAWでは個性的な音作りや自由度の高いDTMができそうだ”と感じ、1~2カ月ほど前に購入。現在はお仕事で制作する楽曲にはStudio One、やりたい放題できる個人の楽曲にはLive、といった使い分けをしています。
●そのDAWの好きなところは?
Studio One Pro 5は、かなり直感的なインターフェースをしているので、初心者の方でも取っ付きやすい印象です。自分もすぐに慣れることができました。無償版のStudio One Primeもあり、機能は限定的ですが購入する前にお試しすることもできるので、初めて購入するDAWとしてはかなり優しいのではないかと思います。有志による使い方の情報が載せられたWebサイトが充実しているのも、魅力の一つです。
ABLETON Live Suite 12は、購入してからまだ日が浅いのですべての機能を触りきれていないのですが……自由度はかなり高いと感じています。ほかのDAWと操作感がかなり違うので最初は若干戸惑いましたが、内蔵エフェクトや音源は正統派なものから飛び道具的なものまで多種多様で、MIDIの生成/変形ツールといった機能も搭載されているため、“0→1”を生み出したいとき、少し変わった面白い音作りや展開をしたいときに向いているのかなと思います。
●お気に入りの機能/内蔵音源/エフェクトを一つだけ教えてください!
PRESONUS Studio Oneは、作曲用のソングとは別に、マスタリングに特化したプロジェクト・モードというものがあります。その中で、各プラットフォームのラウドネス・ノーマライゼーションに対応できるよう、調整してくれる点がお気に入りです。以前は“音圧なんて高ければ高いほど良いだろう”と思っていたのですが、ラウドネス・ノーマライゼーションというものがある以上適切なものにするに越したことはないですし、やり過ぎると音質も劣化してしまうので、ソフト側で調整できるのはありがたいです。Liveについてはまだまだ自分も模索途中ですがやはりGranulator IIIですね。グラニュラー・シンセのおかげで大分サウンド・メイクの幅が広がったし楽しくなりました。これが付属で同梱されているのはかなりありがたいですし、ほかにもこのレベルのものがたくさん付属音源として付いているのは強みだと思います。
ナナホシ管弦楽団/カロンズベカラズ
【Profile】ギター・ロックとアニメ・ソングのキャッチーさを主軸に据えた“ナードロック”を得意とする、滋賀県出身のボカロP。幅広いジャンルを手掛けながら、SymaGとのユニット“カロンズベカラズ”での活動やさまざまなアーティストへの楽曲提供などを精力的に行っている。
カロンズベカラズ「いたみわけ」:
https://www.youtube.com/watch?v=8HjZsLB6D5Y
●使っているDAWは?購入理由も教えてください!
ABLETON Live(使用年数:約12年)
直感的に弄れるので、“とりあえず触ってみる”感じでDTMの楽しみを知るのに、ぴったりだと思いました。ライブでの使用においてパフォーマンスを発揮するのは周知の事実ですが、アイディアにあふれていて、実は制作との相性がとても良いDAWだと感じています。
●そのDAWの好きなところは?
トラック欄の視認性が良く、思いついたらパッと並べて試せるため、ブロックを組み合わせるような作り方をする自分にはとても使いやすかったです。同梱されている音源も使用感が良く、エフェクトも創造性を刺激するユニークなものが多いと思います。物作りで最も大事な“遊び心”がしっかりと内包されている素晴らしいDAWであることが、Liveを使い続けている一番の理由です。
●お気に入りの機能/内蔵音源/エフェクトを一つだけ教えてください!
ABLETON Liveにデフォルトで入っているピアノ音源Grand Pianoが、ポップスになじみやすくとても好きです。ピアノ音源はほかにも多数所持しているのですが、音域の移動に伴うステレオ感や重量感が邪魔になることも多く、音色が多めなプロジェクトではほとんどこのピアノを使用しています。主張し過ぎず、でも確かに存在している、とても良い空気感と距離感を持った音源です。特にボカロ系の音楽やリリース・カットする用途にも相性が良いと感じます。
higma
【Profile】さまざまなジャンルを組み合わせ、叙情的な音楽を制作するボカロP/トラック・メイカー。MVを自身で制作することもある。カレーが好き。
HP:x.gd/j3vIP
2nd Album『Bouquet』
XFD:https://www.youtube.com/watch?v=Ws4xZyrvowM
●使っているDAWは? 購入理由も教えてください!
ABLETON Live(使用年数:4年)
曲を作り始めたばかりのころに、動画サイトで参考にしていた方や自分の好きなアーティストの方々が皆Liveを使用していたので購入しました。また、ハードウェアのドラム・サンプラーのようにサンプラー・パッドに音色を割り当てて演奏したかったことや、UIが格好良かったというのも購入の理由です。
●そのDAWの好きなところは?
自分はABLETON Pushというパッドを叩きながら、かなり感覚的に、遊びながらセッションをするように曲を作ることが多いのですが、Liveはそんな自分の制作スタイルにとても合っているなと感じています。 そういった面で好きなところを箇条書きにすると、
・MIDIキャプチャー機能があるため、演奏しながらの制作が快適なところ
・Drum Rack(ドラム・サンプラー系のインストゥルメント)が便利なこと
・内蔵エフェクト・インストゥルメントがシンプルながら質が良いこと
・エフェクトやインストゥルメントを自由に組み合わせ、自分だけのエフェクトや楽器を作ることができ、しかもサード・パーティー・プラグインも関係なく組み合わせられること(この機能すご過ぎる)
・オーディオのサンプルをMIDIチャンネルにドラッグしただけでSimplerというインストゥルメントが勝手に立ち上がり、オリジナルの楽器を作ることができること
・サンプルの波形編集が簡単&ほとんど劣化しないのでエディットがとても楽なこと
・Liveに対応したMIDI機材が多くて楽しいこと
・UIが格好良いこと
…… あと100個くらいあるのですが、書き切れないのでこれくらいにしておきます。
●お気に入りの機能/内蔵音源/エフェクトを一つだけ教えてください!
かなり迷ったのですが、やはりDrum Rackというドラム・サンプラー系のインストゥルメントが一番好きです。自分の持っているサンプルを、適当にざっと選択してDrum Rackに貼り付けると、自分だけのドラム・セットが一瞬で出来上がります。これだけでかなり遊べます。さらにすごいのが、このパッド一つ一つがインストゥルメント扱いになっていて、サンプル編集が自由に出来たり、サンプルにサード・パーティーのインストゥルメントを組み合わせたりできるので、これだけで無限に音作りができてしまいます。
また、サンプルを貼り付けた後にパッド上で色分けをすると、パッドをたたいて演奏するときに便利です。
picco/NEXTLIGHT
【Profile】“Hyper kawaii Music”をコンセプトに楽曲を制作するボカロP。ボカロ・エレクトロ・レーベル のNEXTLIGHT を運営。企業やVTuberへの楽曲提供も手掛け、DJとしても活動している。
●使っているDAWは?購入理由も教えてください!
ABLETON Live(使用年数:約3年)
自分のジャンルと近しいところで活躍しているクリエイターの中で、使いやすいと評判になっていたからです。友達が買い換えるタイミングで、自分も買い換えました。
●そのDAWの好きなところは?
Liveに付属しているEQやコンプレッサー、ディレイなどの基本的なプラグインが、十分なクオリティなので使いやすいです。ポップアップ画面がなく、そのまま操作できるので時短になります。ドラム・ラック、サンプルの素材編集、カット・アップなどの操作性も良いと思います。
●お気に入りの機能/内蔵音源/エフェクトを一つだけ教えてください!
複数のトラックをグループ化した状態で、プリセットとして保存できる“トラックプリセットを保存”の機能です。プラグインのパラメーターまで保存できるので、例えばボーカロイドの調声用のプリセット・グループのようなものも用意しています。細かい調声ではなく、オート・チューンのルーティングなど、毎回ほとんど変わらないようなもののみをプリセット化しています。
水野あつ
【Profile】2019年に活動を開始したボカロP/シンガー・ソングライター。“優しい音楽”をテーマにした楽曲を作っている。猫が好き。
●使っているDAWは? 購入理由も教えてください!
ABLETON Live 12 Suite(使用年数:2カ月)
元々10年以上ほかのDAWを愛用していたのですが、APPLE MacBookのOSを変更してから外部プラグインとの相性に不具合が出たため、泣く泣くセカンド・チョイスを探していました。ABLETON Liveはデザインがシンプルで素敵だったのと、僕の周りで使っているユーザーが多かったので、購入しました。
●そのDAWの好きなところは?
まず、外部プラグインの挙動が安定していてストレス・フリーに使うことができます。また、シンプルなUIが創作意欲を掻き立てます。僕はDAWを触る際に“どれだけテンションが上がるか”を大切にしているのですが、Liveは音の出るおもちゃを触っているような感覚で曲が作れるので、気に入ってます。
●お気に入りの機能/内蔵音源/エフェクトを一つだけ教えてください!
フレーズをランダムに変更できるGroovesという機能が特にお気に入りです。プリセットが豊富で、直感的かつ簡単にノリを生み出せます。これに出会ってから“もう人力で弾く必要は無いのでは……!”と思ったくらいです(笑)。またABLETON Liveに出会う以前は、フレーズをスウィングさせたりランダマイズする機能を使ってから“なんか違うな……”と思ってクオンタイズをして戻したり、途中でベタ打ちで追加したものにまたランダマイズをかけて……というような手順を踏んでいたのですが、LiveならばMIDIはそのまま、聴覚上のみ適用することもできるので非常に助かっています。
そのほかのABLETON Liveを使用するボカロP
kz / livetune
【Profile】トラック・メイカー/プロデューサー。2008年にメジャー・デビューし、ソロ・ユニットlivetuneのほか、モデルのやのあんなとのユニットlivetune+としても活動する。
plug+(ぷらぷら)による『ニコニコ超会議2023』でのインタビュー内で、Liveの使用を公言している。
原口沙輔
【Profile】トラック・メイカー/音楽プロデューサー/作編曲家。以前はSASUKE名義で活動していた。2月に開催された『ボカコレ2024冬』では、楽曲「イガク」がランキング一位を獲得。
音楽ラジオ番組『SCHOOL OF LOCK!』での「人マニア」解説にて、Live画面を映してその作曲方法を語っている。
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