文:Mizuki Sikano
バンドOrganic Callが2nd EP『セピアに褪せる』をリリースし、2022年5月14日(土)に渋谷 CLUB QUATTROで、全国ツアー“Evergreen Tour 2022” の初日・東京公演を行った。ここではそのライブ・レポと、ギタボの平田真也とギターのカワカミの使用機材を紹介。終演後にはカワカミにギターの音作りに関してショート・インタビューも敢行した。ぜひ最後までチェックしてほしい。
目次
ライブ・レポート
この日は、Organic Call(読み:オーガニック・コール)による全国ツアー公演の初日だった。ゲスト・バンドのラインナップは、ペルシカリア、the quiet room、anewhiteの3バンド。19時45分、anewhiteの演奏で十分に温まったフロアでは、Organic Callの登場を待つさまざまな人々が、会話を楽しんでいる。
20時になると、ステージからギターのアルペジオとアンニュイなコーラスを組み合わせたSEが流れた。登場した平田真也(vo、g)が、大声でツアー名“Evergreen Tour 2022”と叫ぶ。Organic Callの公演のスタートである。
クリーンと柔らかさのコントラストが美しいロック
ステージが青と白に照らされる中、クリーンなギターがかき鳴らされ、その下にはベースがグルービーなうねりを見せつけてくる。それらにリバーブの深くかけられたコーラスがバックで柔らかく響く部分があったのだが、そこでのシーンの変化が美しく、“音が奇麗……”という、ライブ・ハウスでロックのライブを観ながらいつも感じるわけではない一言が頭に浮かんだ。
メッセージ性の高い平田のエモーショナルなボーカルは、あらゆる楽器に埋もれることなく真っ直ぐ耳に届いてくる印象。カワカミトモキ(g)のギター・ソロはソリッドな響きを持っているが、出るところと出ないところのメリハリがあって聴き心地がいい。総じて、ライブのための音作りをメンバーがきちんと用意していること、もしくはその前段階でライブを意識した楽曲アレンジやサウンド・プロセッシングが行われていることが思い浮かぶ作りになっていた。
十分な音圧と各楽器の分離感が心地良い
フロアに十分な音圧が押し寄せたときに観客の“テンションが上がる”だけではなくて“気持ち良いなぁ”と思えるかどうかは、各楽器の分離感の有無によっても左右する。Organic Callはメンバー全員が、バンドの渾然一体感を出すプレイも、その時々で一番重要なパート(それは歌であったり楽器のリフだったりする)を自然と聴き分けられるバランス感でプレイすることも、どちらにおいても優れた手腕を発揮していた印象。そういった、アンサンブルのテクニックが彼ら自身の音楽の魅力を、自ら高めているのではないかと感じられた。
サポート・ドラムの高橋リョウ(ds)が細かめに刻んでいるハイハットのアタックや艶感も聴き心地が良く、Organic Callの楽曲の爽やかさや疾走感を盛り上げている。その下で鳴るカワカミと平田のギターの音もコンビネーションが抜群で、平田のギターがカワカミのセミアコの豊かな響きを邪魔しないのが印象的だった。
観客がこぶしを突き上げながら身を揺らした「茜色、空に灯す」や「Hello My Friend」から「眠れない夜には」などに続いていき、歌詞に込められた切ない感情と爽やかなロックの音の波にひたひたと浸かったころ、ゲスト・コーラスとしてフジタ カコが登場した。
“自分自身で未来を切り開く、というメッセージを込めた”とMCで語られた「未来は君の手の中」を演奏。平田の太めな声にフジタの高めな声が合わさり、2人が息を合わせて穏やかなメロディを歌う。1人じゃなくて2人で歌うからこそ、優しく励ますような言葉が悲しくも寂しくもなくて、人間の強さがにじんだ希望的なものに感じられるのではないかと思えた。「夢想家のワルツ」では、平田がエレキギターからアコギに持ち替えて、繊細にアルペジオを演奏。それにより全体の音のムードが少し変わり、ベースのフレージングが前に出て聴こえるのも良い。
MCでは平田が心の内を“今日が待ち遠しかった。決意があって立っているけど、不安になっちゃう。それでもいろいろな人に助けられて立っているなと思う。音楽の力を、自分の力を、信じている”と話し、「朝焼けに染まった街へ」の冒頭を一人語りで歌い始めた。楽曲のエモーションとともにMCの熱量も変化していき、「Good-bye」と「愛おしき日々たちへ」など、熱狂のままライブが終わった。
終演後のカワカミトモキ(g)ヘショート・インタビュー
ー全体の音作りの方向性はクリーン派なのかなと感じつつ、その中で表情が多彩だなと。
カワカミ ありがとうございます。確かに全体の割合的には、クリーン寄りかもですね。やっぱりバンドでギターを弾く上では、一番にボーカルを生かしたいので。
ーその意図とも関係あると思うのですが、エフェクトのかかる量などが部分ごとに細かく調整されていて、表情が細かく変わっていくギターという印象です。
カワカミ 確かにコンパクト・エフェクターはいろいろと使っていますね。リバーブのSTRYMON BigSkyやデジタル・ディレイのBOSS DD-500などは平田が使っている音を聴いていて“いいな”と思って。だからそれを真似して同じものを使ったりしてるんすよね。でも調整って部分だと、エフェクトもほどほどに切り替えるんですけど、ピックアップを変えるのが一番影響大きくて。リアでガツっと抜けの良い感じにして、センターでそれよりもまろやかな丸いサウンドにすることで、全体のアンサンブルとのバランスを取っています。
ー確かに、平田さんとカワカミさんのギターのコンビネーションがすごく良いですよね。
カワカミ そこはこだわっている部分ですね、やっぱり帯域かぶりは良くないので。音源を作るときに結構強く意識しているんですけど、それと同じ感覚でライブも音作りしているんだと思います。あとは、最近になってPAの木附健太さんと組んでライブを行うようになったので、全体の音のまとまりの良さはその影響も大きいです。
ー楽曲制作の段階で全体のバランスを意識して若干引いたりすることができているからこそ、ライブでもそれをある程度そのまま生かせるのでしょうか。
カワカミ そうですね。日本のロックを聴いていると、意外とキャッチーで目立って聴こえるようなギター・ソロとかもバックでボリュームが小さい状態で演奏されているんだなと気付いて。この音量調整が、歌を聴かせたり、全体をプロっぽく聴かせるバランスの肝なんじゃないかなと思うようになりました。歪み量とかももちろんいじるけど、プロのアーティストはミュートしたときに“ピー”ってハウらないレベルに調整しているんだと教えてもらって。僕は本来なら結構歪ませたい人間なんだけど、それを抑えて最適なところに居るように心がけています。
Organic Callライブの機材セット
平田真也(vo、g)使用機材
■ギター
・YAMAHA(アコギ)
・ FULLERTONE Guitars Tellings 60(メイン)
・TOKAI TL(サブ)
■アンプ
・FENDER Super-Sonic 60 head(ヘッド・アンプ)
・ORANGE PPC212OB Black(キャビネット)
■エフェクター
・FREE THE TONE PT-1D(電源)
・FREE THE TONE ARC-3(スイッチャー)
・FREE THE TONE JB-21 Signal Junction Box(ジャンクション・ボックス)
・TC ELECTRONIC PolyTune 2(チューナー)
・FULLTONE Obsessive Compulsive Drive(オーバー・ドライブ)
・PAUL COCHRANE Timmy OverdriveJHS Charlie Brown(オーバー・ドライブ)
・BOSS DD-500(ディレイ)
・DIGITECH DigiDelay(ディレイ)
・STRYMON BigSky(リバーブ)
カワカミトモキ(g)使用機材
■ギター
・GIBSON ES-355(サブ)
・YAMAHA SA-1000(メイン)
■アンプ
・CUSTOM AUDIO AMPLIFIER OD-100 Classic Plus (ヘッド・アンプ)
・ORANGE PPC-412(キャビネット)
■エフェクター
・FREE THE TONE ARC-4 (スイッチャー)
・FREE THE TONE PT-1D (電源)
・STUDIODAYDREAM JCTBx4/MD V6 (ジャンクション・ボックス)
・1995FXのオーバー・ドライブ
・OVALTONE 34-Xtreme (ディストーション)
・IBANEZ TS9(オーバー・ドライブ)
・Z.VEX Fuzz Factory (ファズ)
・JIM DUNLOP DVP4 Volume X Mini Pedal(エクスプレッション・ペダル)
・BOSS DD-500(ディレイ)
・STRYMON BigSky(リバーブ)
・LINE 6 HX Stomp(マルチエフェクター)
・BOSS SY-1(ギター・シンセ)
Organic Callライブのセット・リスト
1ブルーアワー
2茜色、空に灯す
3Hello My Friend
4眠れない夜には
5未来は君の手の中
6夢想家のワルツ
7朝焼けに染まった街へ
8Good-bye
9愛おしき日々たちへ
Organic Call(読み:オーガニック・コール)
2017 年に活動を開始した東京都発ロック・バンド Organic Call(通称:オガコ )。年間 100 本近くのライブをこなすライブ・バンド。各地の大型サーキット・イベントにて入場規制を続出させ、昨年2021年11月には東京O-WEST、今年2022年5月には東京WWWをソールド・アウトさせるなどライブ規模も急拡大中。
さらには2022年5月4日発売の2nd EP『セピアに褪せる』収録の楽曲「ブルーアワー」が、“めざまし8” 4月度エンディング・ソングと、フジテレビ系音楽番組“Love music” 6月度オープニング・テーマに決定し、ダブル・タイアップを獲得。2022年8月14日には東京WWWにてキャリア初のワンマン・ライブも控えている。
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