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Text:鹿野水月(plug+ぷらぷら編集部)Photo:Hideyuki Uchino [PR]

この記事は、4月13日(土)に渋谷WOMBで開催された『NIGHT HIKE Early 2024』のライブ・レポート。

ライブレポ『NIGHT HIKE Early 2024』@渋谷WOMB

 さまざまなネットカルチャーを音楽イベントを通して体感できる『NIGHT HIKE Early 2024』が4月13日(土)渋谷WOMBで開催された。

 同イベントは通算三回開催されており、さまざまなボカロシーンのアーティストが出演してきた。

 そして今回は、クラブシーンのレジェンド大沢伸一の出演や、原口沙輔やツミキなどを筆頭に今のボカロシーンのエースたちもラインナップに入っていたことで開催前から注目度が高く、実際チケットも完売だったそうだ。

 plug+(ぷらぷら)編集部も現地に赴き参加してきたので、ここでは当日の様子を写真や動画とともにレポートしていく。

ZYARI BOYS

 13時に開演したときにはすでにフロアは後ろの方まで埋まっていた。オープニング・アクトとして登場したのは、A4。とキツネリによるユニットZYARI BOYS。

 バック・トゥ・バックだからこその幅広さを感じる選曲で、エレクトロニックからアニメ・ソング、Jポップまで多岐にわたっていたが、やはりボカロ曲が流れると皆が沸く。「深海少女」や「ジャンキーナイトタウンオーケストラ」、「バレリーコ」などが印象的だった。

原口沙輔

 次に登場したのは、原口沙輔。スクリーンに映し出された自己紹介で「私は人マニアですから 皆さんが満足する音が分かります」と宣言した通り、こちらの感情を音で操作するDJプレイを披露。

 「人マニア」や「イガク」の中のモチーフを小出しにして彼の曲が欲しくてたまらない客を翻弄してみたかと思えば、真島茂樹や名取さなの切り抜き、CMのカットアップなどを用いた音MADや□□□(クチロロ)の楽曲も挟み込んでくるなど、とにかくあっちこっちに飛び火させていくような表現をする。

 また、突然召喚された月ノ美兎とのスペシャル・コラボとして「人マニア」が演奏されるサプライズもあった。ネット・カルチャーの楽しみと奥行きをギュッと詰め込んだ、情報の多いメニューになっていたと思う。

r-906

 そんな原口沙輔のDJで踊り狂った客に「まだ踊れる?(笑)」と問いかけるところからスタートしたr-906。後日Xで「セトリも決めずアドリブで、めちゃくちゃストイックなDnBをやってしまいました」と綴っていたが、本当に渋谷WOMBに溶け込むDJを見せてくれたという点で普段の彼とは一味違ったプレイが新鮮だった。

 セットリストには、自身の曲「プシ」「三日月ステップ」「パノプティコン」「怪電話」「削いで」などが入っていたが、大半は海外製のドラムンベースやEDMにより構成されていた。かなりコアな選曲になっていたが、挟み込まれるr-906の楽曲が良い手綱として作用していたと思う。

 ちなみに、選曲の中には、彼が以前にplug+のインタビューでリスペクトを公言していた、UKドラムンベースのプロデューサーCulture Shockのヒット曲「Get To Me」などがあった。

きくお

 最初から盛り上がり方が異常だったのは、きくおによるDJ。パフォーマンスの前半で「塵塵呪詛」をバックにきくおが両手を天に掲げ揺らすと、フロアの客が全員目一杯両手を上げる様子が見られた。きくおによるDJパフォーマンスはいつも、“どこかの国の何かの儀式”のような心地良い不気味さが漂っている。こういう良い呪いに浸されたビートで、独特のムードを醸し出すライブができるボカロPは、そう多くないと思う。

 全体的には、さまざまなビートの合間できくおの楽曲が次々登場してくるエレクトリカル・パレード形式のミックスになっており、観客は自分の知っている曲が流れると歓声をあげるのだが、これが終始鳴りっぱなしの状態。きくおも積極的にマイク・パフォーマンスをするので、その度膨れ上がる手拍子で全員のトランスが加速していった。

 後半ではアコーディオンのコードが穏やかに流れるシーンがあり、それを聴いた皆がまた歓声をあげると“何で分かる人いるの?分かる人は歌ってみよっか”ときくおは言った。そうして流れた「愛して愛して愛して」に全員で合唱、きくおの指揮で歌える喜びを皆で分かち合えた尊い時間になった。

PAS TASTA & ABLETON Live

 ここまでメイン・フロアばかりに集中してレポートをお届けしていたが、渋谷WOMB入口から入ってすぐの1Fでは、13時半からライブ・ドローイングや音楽プロジェクトの解説プログラムなども同時進行で開催されていた。

 17時からはphritz、ウ山あまね、hirihiriの3名が登壇し、彼らのグループ=PAS TASTAがバーチャルYouTuberピーナッツくんをゲストに迎えて制作した楽曲「peanut phenomenon」の作曲工程を解説。DAWのABLETON Liveとのコラボで実施とのことで、実際に使用しているLiveのプロジェクトを開きながらプラグインを紹介したり、ピーナッツくんから送られてきたラップのファイルの編集内容など、話は具体的なテクニックの話にも及ぶ。

大沢伸一

 メインフロアに戻ると、普段はゴールデン・タイムで回しているクラブ界のレジェンド大沢伸一がDJしていた。MONDO GROSSO名義で話題の女優やシンガーとコラボで曲をリリースしているが、あくまで自分の領域に呼び込んで表現をしている印象が強く、今回のように“異なる界隈=『NIGHT HIKE』にやって来るときにはどのようなプレイをするのだろう?”と気になっていた。

 いざプレイが始まってみると、そこには硬質なビートのミニマルテクノやハウスが並び、そのシンプルな音の構成を生かす無駄のないフェーダー捌きが美しい。オーディエンスもいつもの大沢伸一らしい熟練されたDJプレイに違和感を感じることはなく、感じるままに踊っているようだった。『NIGHT HIKE』の観客は“クラブの踊り方を熟知している”ということを大沢伸一が証明してくれた瞬間だったように思う。後半では、大沢伸一も軽やかなステップで踊っていたのが印象的だった。最後は花譜とのコラボ曲「わたしの声」で締めた。

ツミキ

 現地に居た方々はきっと驚くだろうが、今回がDJデビュー戦だったのだというツミキがDJブースに立つと、彼が用意してきたのだろう撮影許可アナウンスが流れ、客はすでに大歓声を上げた。

 ツミキが花譜のために書き下ろした「トウキョウ・シャンディ・ランデヴ」や、星街すいせいに書き下ろした「ビビデバ」、みきまりあとのユニットNOMELON NOLEMONの「ハイド・アンド・シーク」など自身が手掛ける曲以外は、“きっとツミキさんが好きな曲なんじゃないかな”と思わせる良い意味で趣味全開な選曲だ。

 すりぃ、Ayase、syudou、稲葉曇からwowaka、GigaなどのボカロPの楽曲に、パソコン音楽クラブや宇多田ヒカルの「traveling」、New Jeans「ETA」なども流れてくる。自由でありながら意思の感じられるチョイスは、聴いていて飽きないので楽しい。最後の「フォニィ」では、また大合唱だった。

Moe Shop

 この日のトリとして登場したのは、フランス生まれの音楽プロデューサー、Moe Shop。アニメやボカロカルチャーなど日本の文化からの影響を公言するMoe Shopは、その名の通り“萌え”を感じさせるラブリーなアレンジから、時にクールできらびやかなEDMまで作っている。

 この日のDJは基本的に自身の曲を流すミックスで、彼の表現や手掛けるアーティストの幅広さを感じさせる内容。自身の名義でリリースしている人気曲「Notice (feat. TORIENA)」や「WWW (feat. Edoga-Sullivan)」をはじめ、チップチューン・サウンドが印象的で電音部へ提供された「good night baby」や、私立恵比寿中学「トーキョーズ・ウェイ!」、きゃりーぱみゅぱみゅ「CANDY CANDY」などMoe Shopがリミックスした音源もチョイス。

 ポップでキュートなポジティブ・サウンド全開でMoe ShopのDJ、『NIGHT HIKE Early 2024』は幕を閉じた。

次回の『NIGHT HIKE』は?

【第一弾NIGHT HIKEツアー】
日時/場所:2024年6月15日(土)、名古屋 CENTRAL
日時/場所:2024年6月16日(日)、京都 WORLD KYOTO

【3会場でのサーキット型フェス】
イベント名:『NIGHT HIKE Mid 2024 supported by ジンドゥー』
日時:2024年8月24日(土)12時開場、13時開演〜21時終演予定
会場:Spotify O-EAST、HARLEM、clubasia

 

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