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Text:Mizuki Sikano、Photo:編集部(即売会会場写真を除く)

ボカロックにどっぷりハマれるイベント『VOCALOCK MANIA ~ver.0~』(ボカロックマニア)が1月22日(日)に開催された。“ボカロPの即売会”、“ボカロPによる楽曲解説”、“ボカロ曲DJタイム”の3本軸でボカロックを楽しめるイベントということで、編集部も期待を胸に参加してきたのでレポートしていく!

VOCALOCK MANIAで遊んで来た!

そもそもボカロックの意味って何?

ボカロックとは、ボーカロイドや歌声ライブラリーを使用して制作されたロック調の音楽の呼称。楽曲の疾走感を盛り上げるギター・プレイ、中にはバンドマンとしても活動するボカロPこだわりのサウンドが楽しめるなど、奥深い旨味を持つ音楽ジャンルである。

ボカロPをフィーチャーしたイベント=『VOCALOCK MANIA』

そんなボカロPをフィーチャーし、今回はボカロックをテーマにした『VOCALOCK MANIA』に編集部員が行こうと思ったきっかけは、メイン・イベントの一つとして“ボカロPによる楽曲解説”タイムが設けられていることだった。人気ボカロPが自身の音楽を解説してくれるって、なかなか無い貴重な機会。その楽曲解説イベントに参加する人気ボカロPは、みきとP、一二三、稲葉曇、和田たけあき、Chinozoの5人。そして彼らの対談相手は、Puzzle Projectに所属する若手ボカロPの晴いちばん、ど~ぱみん、Sohbana、ニト。、SEEが務めた。

上段が楽曲解説、下段がDJのタイム・テーブル
出演者のグッズは即売会で購入可能で、フォロワーたちによって行列を成すシーンもあった

即売会の行われた会場横ホールでは、一人真剣な面持ちで開演を待つような人々も多かった。普段ネット上を主戦場として楽曲/MVリリース活動を行うボカロPたちとリアルで交流できるだけでなく、自身の楽曲について解説してもらえる貴重な機会ということで、中には作曲の教えを乞うボカロPたちも居るのかもしれない

14時になると、ステージにテンションMAXなMC星野卓也が登場。同時にニト。が手掛けたオープニングSEが爆音で流れてきた。大手町のホールでこんな低音のビッグ・ウェーブを聴けるなんて、ちょっと驚き。

ボカロPによる楽曲解説タイムがスタート!

MC後に最初にステージへ登場したのは、みきとPと晴いちばんだった。

みきとP「ロキ」楽曲解説

みきとP(左)と晴いちばん(右)

2人は初交流とのことで登場時には少しぎこちなさも見せていたが、晴いちばんは“僕は今日みきとPファン代表”として「気になることは何でも質問します!」と意気込みを見せた。そんな晴いちばんからの質問は以下である。

初っ端からみきとPの回答が面白かった。楽曲テーマに関する質問で「“ロキロキのぉ〜”という歌詞はこの曲の発想源になった“ロキノン系バンド”の“ロキノン”という言葉から来ています」と回答する。このようなエピソードは歌詞にリアルな感情を付与してくれるので、作品に深みが増して良いなと思う。

3つ目の質問の回答時には、みきとPがロキのプロジェクト画面を表示しギターのパラデータを聴かせてくれた。前奏では左でカッティング・ギター、右でメイン・リフを鳴らすなどいわゆるツイン・ギターを音場でやっていることを示してくれたり、サビでは右と左で異なるハーモニーを奏でて調和させていることなどを解説。当然ながら、実際にプロジェクトを見ながら話を聞くと理解しやすい。

実際に「ロキ」のDAWプロジェクトを出しながらギター・トラックを再生。(貴重な資料なのでモザイクで失礼します)

最後に「ボカロックに民族楽器を入れる発想が面白い」と言う晴いちばんからパーカッションについての質問が出ると、「ウドゥの音をローカットしたサウンドを入れている」とみきとP。実際に使用しているプラグインなども立ち上げながら話を進めながら具体的な音楽表現の話を続けた。

ここでMC星野卓也から時間終了のお知らせ、25分はあっという間に過ぎていく。

一二三「しゃしゃてん」楽曲解説

次に登場したのは、一ニ三、ど〜ぱみん。

一ニ三(左)、ど〜ぱみん(右)

「大先輩の後なので緊張する」と話す一ニ三。ど〜ぱみんも「まさか僕がボカロPとして人前で話す日が来るなんて」と緊張感を見せつつも「実は今日楽屋でスタッフだと思って一二三さんに “一ニ三さんどこですか?”と聞いてしまいました(笑)。」なんてエピソード・トークを披露。

そんなど〜ぱみんから一二三に出た質問は4つ。

最初の質問に対しては、「自分の好きなものを掛け合わせた結果」と回答するとともに「和楽器はどれも弾けないので、YouTubeの奏法動画を参考に打ち込みをしている」と話した。民族楽器の音色を入れたボカロ曲を作るために試行錯誤している人は、参考にさせてもらってはどうだろうか。

また「しゃしゃてん」を歌唱する、音街ウナの調声方法については、「がなりを入れるのがポイント」と話し、実際にプロジェクトを立ち上げて調声パラメーターなどを見ていくと、ビブラートやピッチ、タイミングなども含め丁寧にパラメーターが書かれている。

音街ウナのプロジェクト。こちらもモザイク失礼するが、ペンツールでオートメーションを書いており丁寧な仕事が伝わってくる

それを見たど〜ぱみんは「打ち込みを丁寧にこだわる方の画面だ」と一言。そこから画面はDAWのプロジェクトに移行して、アーティキュレーションの打ち込みの仕方にまで発展。まさしく、ボカロックのマニア向けの回になっていた。

稲葉曇「フロートプレイ」楽曲解説

次に登場したのは、稲葉曇、Sohbanaだ。

稲葉曇(左)、Sohbana(右)

Sohbanaは「音の話よりも表現スタンスについて話を聞きたい」とした上で、歌詞のテーマについての質問からスタート。稲葉曇は「曲のモチーフは小学生のころの体験で、この曲は子供のころに可哀想だなと思ったものをテーマに書いた」と話す。また、具体的な話は少し渋りながらも、「歌詞にある“あたし”は人間ではないですよ」といった楽曲理解のためのヒントも示した。

また、Sohbanaは稲葉曇がよく使う歌愛ユキについても触れて、「ユキのあどけない歌声が小学生のようだから稲葉曇さんが表現したいイメージとも合う」などと言及し、稲葉曇もそれにうなずくシーンもあった。

また着想についての質問では「1番サビの後のギター・フレーズが最初に浮かんだ」と話し、打ち込みしたと思わしきデモ・バージョンのギター・リフを聴かせてくれた。

またSohbanaは「最近ディープな表現にシフトした?」という鋭い質問も投げた。それに対して稲葉は「2019年後半辺りからどういうフレーズを弾けば自分の好きな雰囲気になるか分かるようになった」と自身のスタイルが確立された瞬間について言及。その雰囲気を作曲の軸にすることで、逆にさまざまな表現がしやすくなったという。

それに対してSohbanaが「一つ良いもの作るとすがりたくなるものだけど、挑戦し続けるのは大事ですよね」というコメントをした際に、会場では首を動かし頷く者がちらほら居たので、きっとこの会場には生みの苦しみを味わうボカロPも何人か居たと推測できる。

和田たけあき「てらてら」楽曲解説

次に登場したのは、和田たけあきとニト。だ。

和田たけあき(左)とニト。(右)

2つ目の質問に対して和田たけあきは「ボカロPのいよわさんにインスピレーションを受けて制作を始めた」と告白。まさかの回答に観衆が“え?”となったところで「一昨年の大晦日にコミケで会ったいよわさんが“ボカコレみたいなレースのために音楽を作ってたら制作が楽しくなくなってしまった時期があった”と吐露するのを聞いて、“作曲過程で楽しむためにはリズムが楽しくないといけない”と考えてリズムを工夫し作った楽曲」と解説した。

また、自身のルーツについては「ロキノン系と言われるナンバガ(NUMBER GIRL)、くるり、SUPERCARやGRAPEVINE」と話し、「最近のバンドだと、ニガミ17才を聴く」と付け加えた。

後半で曲作りに関する手順について言及した際には「コードから作ると針に糸を通すように、悪い意味でよくあるメロディになってしまうので、歌とドラムから作曲し始める」と話す。和田にとっては、リズムがとても大事なパートのようだ。

Chinozo「エリート」楽曲解説

Chinozo(左)とSEE(右)

この楽曲解説タームの最後に登場したのは、ChinozoとSEE。「数人のボカロPが集まってカラオケに行くイベントで一緒になったことがある」とのことで、2人は初対面ではないようである。初っ端からハイテンションのChinozoが会話を回していく様は見事だった。

Chinozoは自身のルーツについて「BUMP OF CHICKENが好きで軽音部に入るのを決めて、ギターを弾き始めたことが音楽を始めるきっかけになった」とコメント。それまで邦ロックしか聴いてこなかったが、「グッバイ宣言」から電子音楽も聴くようになったことも話すと、SEEはすかさず「グッバイ宣言」でしか得られない栄養素があると力説。「引き算がされていて、音数が少ないけどノれる曲を作れるのがすごい」と賞賛した。

そんなChinozoの最新曲である「エリート」は「昨今SNSなどでの同調圧力がひどくて生きづらい時代になっていることをテーマにした」と説明。そしてプロジェクト画面を開こうとしたところ、トラブルが発生したが機転を効かせたSEEが“お客さんからの質問を集めましょう!”と提案。すると会場から何人も手が挙がり、3名の質問に対して回答した。

最後の最後にプロジェクト再生が叶い、ギター・トラックなどを再生

最後にプロジェクトの再生環境が整ったので、実際にパラデータを聴きながらギターのリズム感やベースとドラム・パートはかなりシンプルであることなどに言及し、締めくくった。

続きは、次のページ

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