plug+ by Rittor Music

自分らしく音楽を始める。

スタイル検索

上達のヒント

文:鹿野水月(plug+編集部)

去年全国Zeppツアーを経て、今年226日(水)に開催されたGero初の日本武道館公演『さようなら、武道館』。驚くべきことに来場者は一万三千人、数字だけ見てもGeroのこれまでのライブとは完全にスケールが異なっていることが明らかだが、Geroの新しい一面を引き出す演出含めて印象的な瞬間たちがたくさんあったので、ここにレポートしていく。

Gero『さようなら、武道館』ライブレポート(写真有り)

 ライブ開始を待つ客入れBGMは、実はライブの楽しみの一つだったりする。後にGeroによるMCでも語られるのだが今回は“さよなら”をテーマに、バンド・メンバー全員で選曲していたとのこと。開演時間になると突如オフコース「さよなら」がフルで流れてきて、あまりのシュールさに観客一同噴き出してしまった。恒例のナレーションから客席が暗転すると、観客が持つ緑色のペンライトが会場を華やかに彩り、武道館中央にセットされた正方形のステージ上部ディスプレイに、Geroのライブ映像が映る。

 アリーナのドアからバンド・メンバーに続きGero(vo)が登場すると、ファンから大きな歓声が湧き起こる。「武道館〜!」という呼びかけから最初に演奏されたのは「BELOVED×SURVIVAL」。2008年にニコニコ動画で歌い手としてデビューし2013年にメジャー・デビューした際の1stシングル曲だ。メロコアの心地良い波から、そのままのテンションで早速カバー曲の「ドーナツホール」(ハチ)では力強い歌声を披露。

 「名古屋のデブ」では16発の炎が噴出しステージを包むと、キャーと熱量あふれる黄色い歓声。「始まったぞ武道館、すげぇー!」と感慨深そうに喋り、会場を360度見渡しながら「武道館のデブ」とコール・アンド・レスポンスをしたり、観客に蛇足のモノマネをさせるGeroのマイペースさは武道館でも健全。MCでは今日の来場者が一万三千人であることを報告。「その数を上回り武道館一万五千人を埋めた」という福山雅治のモノマネを披露するも、蛇足のモノマネとの差が埋まらずツッコミが入る。

 そんなMCをさておくように始まった「アンチェインゲイザー」では、疾走感のあるバンド・サウンドに思わず自然と身体が跳ねた。「シャンティ」では赤色のレーザーとGeroの真っ直ぐな視線が観客の瞳を突き刺し、ビートに合わせクールに低音を歌い上げる。「アンノウン・マザーグース」では言葉の一つ一つを丁寧に紡ぐように歌った。そんなシーンを経て、GeroはMCで「今一番気持ち良い。もう寂しい」と吐露

 めいちゃんが書き下ろした新曲として紹介された「100万回生まれ変わっても」は、海賊王(gt)によるカッティング・ギターとパスタ(Key)によるエレクトリック・ピアノによる7thのジャジーなムードに、Hiroki169(Ba)が演奏する5弦ベースのスラップを織り交ぜたグルーヴが重なり洒脱な雰囲気。都会的なサウンドに観客は手拍子でノる中、ウォーキング・ベースがリードする「シザーハンズ」、ファンキーなシンセ・リードが印象的な「ベイビーミュージックライダー」へと展開し、Geroは色気あふれる歌声を届けた。

 Geroの音圧を感じる中低域が豊かな歌により、一気に重厚感が高まった「ジャンキーナイトタウンオーケストラ」から、トーンを落として「HALO」、「モノクローム」では、しっとりと、それでいて力強く伸びやかに歌い上げる緩急で魅せる。

 ソリッドなギターと華やかなシンセサイザーの音が会場に放たれる「サヨナラカゲロウ」や、鍵盤楽器などのメロディがカラフルな「ヴィータ」など、オケの音数の多い中で柔らかく歌っても負けないところがGeroの歌の巧みで素晴らしいところだ。

 「二息歩行」では高音メロディを軽々と歌い、「しゃよう」ではGeroのハイトーン・ボイスと16発の炎がユニゾンするダイナミックな演出で、会場のボルテージが最高潮に到達。燃え過ぎて焦げる勢いと言っていい。鳴きのギターがモジュレーション・エフェクトにより怪しい雰囲気になるところから、SHiN(Ds)による迫力満点のドラム・ソロになるユニークな楽曲展開は何度聴いても素晴らしい。

 MCで「次の曲が最後」として、キラーチューン兼Geroがやりたい放題パフォーマンスをする「うどん」のイントロへ。

 1サビで右手をぐるぐる回しながら身体をくねらせる恒例の振付を会場に居る全員でやっていると、とてつもない一体感が生まれ、武道館であるにも関わらずステージとの距離感を忘れてしまうほどだった。曲終わりに観客からの「もう一回」コールが鳴ると、一瞬迷いながらも「許して武道館〜!」と即座におねだりに応えるGero。芸人、永野のモノマネ(「ラッセンが好き」)なども織り交ぜつつ再度「うどん」を披露した。

 Geroたちがステージから去った後もアンコールは鳴り止まない中、Geroがステージに現れると、パスタの可憐なピアノ・プレイをバックに「Just Be Friends」でしっとりとバラードを歌う。

 表情を変えて「金曜日のおはよう」をラブリーに歌い上げたかと思いきや、「吾輩はオス猫である」を尾崎豊なのか、美輪明宏なのか……正体不明のモノマネ(歌い方)でスタートし「King Gnuみたいに売れたかった」、「米津玄師みたいに檸檬歌いたい」などと謎の欲求を吐露。メンバー皆に「もう無理だよ」とツッコまれるシーンも面白かった。

 「次の俺の夢は、手堅く横浜アリーナ、大阪城ホール、皆んなついてきてくれるかー!」と抱負を話してから、本当に最後の曲として「The Bandits」を歌い上げ渾身のハイトーン・ボイスで幕を閉じた。

 アンコールよりも前のMCで、この二年間の出来事(尿管結石、ぎっくり腰、父親の他界)を振り返りながら、「音楽は寄り添ってくれるもの、自分も誰かの人生に自分の音楽を突き刺して終わりたい」と述べていたが、彼の音楽の魅力は武道館で全方位、後ろの席まで響き渡っていたように思う。

Gero『さようなら、武道館』セットリスト

1BELOVED×SURUVIVAL

2ドーナツホール(ハチカバー)

3名古屋のデブ

4アンチェインゲイザー

5シャンティ(wotakuカバー)

6アンノウン・マザーグース(wowakaカバー)

7100万回生まれ変わっても

8シザーハンズ

9ベイビーミュージックライダー

10ジャンキーナイトタウンオーケストラ(すりぃカバー)

11HALO

12モノクローム

13サヨナラカゲロウ

14ヴィータ

15二息歩行

16しゃよう

17うどん(2回披露)

18Just Be Friends

19金曜日のおはよう

20吾輩はオス猫である

21The Bandits

この記事をシェアする

  • LINE
  • twitter
  • facebook

ひさこフィーディー

注目記事

新着記事

注目記事