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ゼロから学ぶ

Text:Mizuki Sikano Photo:Chika Suzuki

TikTokで、2021年「ヨワネハキfeat.和ぬか,asmi」 (MAISONdes)や2022年「PAKU」がバズり、注目を集めている大阪出身のシンガー・ソングライターasmi。中毒性のあるラブリーなポップス、高音の伸びやかな歌唱力、彼女の書く等身大のラブ・ソングなどが人気の理由だ。今回はSNSで共感を集めるラブ・ソングの作り方を垣間見るべく、作詞/作曲をテーマに話を聞く。

シンガー・ソングライターasmiインタビュー

私の恋愛観が作詞/作曲のコンセプト

―asmiさんの楽曲は、女の子の可愛い部分と病んでる部分がギュッと凝縮されていますよね。

asmi 基本的に、私自身の経験や思ったことを歌詞に反映させているんですよね。特に、私の恋愛観が作詞/作曲をする上でのコンセプトになっています。

―以前、ほかのメディアのインタビューで“作曲を始めたキッカケは失恋だった”とasmiさんが答えられているのを拝見しました。

asmi アーティスト活動を一人で始める意志が固まったのが高校卒業後で、それと同時期に、初めての失恋をしちゃったんですよね。それで作曲を開始して「osanpo」という楽曲を作って以来、これまでずっとラブ・ソングを書き続けることになったんですけど。

―書き続けていく中で、ラブ・ソングがasmiさんの音楽活動のコンセプトになっていったのでしょうか?

asmi そうですね。でも、本当は恋愛だけじゃなくて、誰かに生きる勇気を与えられるような楽曲も書きたいって気持ちが、すっごくあるんですよ! 私はサンボマスターの「できっこないを やらなくちゃ」がとても好きで、聴くとよく元気をもらっているんです。 ただ、私はポジティブでもないし、人間力も、知識や経験もないから“今は書けないな”って思う。でも恋愛だったら、私でも書けるんじゃないかって思えたんです。

―asmiさんにとって、恋愛が一番身近に感じられる表現テーマだったのですね。

asmi そうですね。私は自分のことをかなり恋愛体質だと思っていて、常に相手にとても熱中してきたから、単純に言いたいことがたくさんあるんですよ(笑)。あとラブ・ソングも大好きやし。

―実体験に基づいて作詞をするから、結果的に等身大のラブ・ソングを生み出せているのかもしれませんね。

asmi あ、なるほど! 確かにどの場面でも、背伸びをしないように意識したりはします。

―基本的に作詞のときは、自分の内面に問いかけるのですね。

asmi それが圧倒的に多いです! でも、小説が好きなので本を読んだり、映画を観たりして、外からの影響を受けたこともあります。「例えば」って曲は、私が唯一そういった外部的なものに影響を受けて書いた曲です。2年前に映画の『天使の恋』(2009)を観たら、自分と重なる部分もあってめちゃくちゃ泣いたことがあって。それで“天使の恋に影響を受けた曲を書こう!”と決めました。ただ書いていくうちに、他の曲みたいに自分の恋愛のことを書くようにはなっていったんですけど。

ドラマで良いなと思ったシーン/台詞などは作詞のためにメモ

―そういった作品や日常的な恋のことに至るまで、すべての影響を音楽に生かすために、何か日記を書いたりなどはしていますか?

asmi 日記とかは書かないですね。でも、テレビ・ドラマで良いなと思ったシーンや衝撃を受けた台詞などはノートにメモをするようにしています。あとTwitterを見るのが好きで、誰かのキュンとした話や面白い話とかもメモしますね。このメモをすることが、自分が抱いたことのない感情に目を向ける良い機会になっていると思います。

―それは作曲をし始めたころからの習慣ですか?

asmi いや、ここ最近になって少し心に余裕が出てきてからですね。作曲し始めたころは、とにかく作るのに必死だったと思います。一人で音楽活動始めてから2年半以上経って、やっと自分以外の感情を表現の中に入れてみたいと思えるようになったんです。

asmiさんの1stアルバム『bond』では、ジャジーでゆったりと穏やかなムードの楽曲が多かったですが、2021年の「ヨワネハキfeat.和ぬか,asmi」(MAISONdes)や2022年の「PAKU」のようなポップスを歌うことで何か気付きはありましたか?

asmi まず『bond』を制作していた2020年のころは、自分に「ヨワネハキfeat.和ぬか,asmi」(MAISONdes)や「PAKU」のような、テンポが速いポップスを歌えるなんて思ってなかったんですよね。キーもとても高いので、自分にギリギリ出せる高音という感じでしたし。それが世の中の皆さんだけでなく、私の周りの人たちにも好評だったのは意外で、新しい発見でした。

「wish」はクリスマスが終わっても楽しんでもらいたい曲

ー2022年11月23日にリリースされた「wish」は穏やかさと可愛らしいポップな印象どちらも感じられる楽曲ですね。リリースしたときはどのような心境でしたか?

asmi そうですね。振り返ると2022年はたくさん曲を作っていたのですが、私が作詞/作曲してリリースできたのは「Gerbera」と「wish」だけでした。「wish」を出した当初は皆さんからどのような反応をされるのかと、とても不安でしたが、リリース後には意外と“asmiっぽい”と言ってもらえて安心しましたね。

―制作を開始したのはいつぐらいでしたか?

asmi 9月ぐらいでしたかね。当然クリスマスは先のことだなと思いましたけど、クリスマスは個人的にも好きなので、楽しいことを思い出しながら書けたと思っています。

ークリスマス・ソングは季節モノですが、asmiさんは季節関係なく年中聴ける楽曲が多い印象です。今回クリスマス・ソングを書こうと思ったのは?

asmi 確かに、私の曲は季節モノが少なかったですね。その理由として、歌詞に季節感を入れたら情景がより浮かびやすくなるじゃないですか。でもその反面、冬の曲は夏に聴いてもらいづらいとも思っているんです。だから、故意に季節感のある曲作りをするのをしばらく避けていたと思います。

ー「wish」では避けないで向き合ってみようと?

asmi そう思いましたし、作るならばクリスマスが終わっても楽しんでもらえるような冬の曲にしたくて、自分なりに工夫をしました。

ギター・コードを勉強しながら作曲

―そもそもasmiさんはどのように曲作りをしていますか?

asmi 自分で作詞/作曲するときは、ギターでコードを鳴らして浮かんだメロディを歌いながら、歌詞も同時に考えます。作詞のみをするときも歌いながら考えるので、私の感覚的にはどちらも同じ感覚で書いている気がします。

―アルバム『bond』はローファイ・ヒップホップやアコギのポップスが組み合わさった音楽性が印象的です。学生時代にはヒップホップなどを聴いたりしていたりしましたか?

asmi ヒップホップを聴き始めたのは高校3年生のときでした。『bond』にローファイ・ヒップホップ調の曲が多いのは……単純にハマってたから(笑)。それまでは、SHISHAMOやチャットモンチーをよく聴いてました。

―高校生のときに、軽音部には入っていましたか?

asmi 入ってました! 私はずっとボーカルを担当していて、SHISHAMOやチャットモンチーもコピーしましたね。高校卒業後は、専門学校で作曲や映像制作、ギター練習の授業を取って勉強したりもしました。

―ギター練習は楽しかったですか?

asmi いや、正直なところ楽しくはなかったですね……(笑)。姉に譲ってもらったアコギで練習しましたけど、ある一定以上のことは“難しくて無理”って気付いてしまって。

―でもasmiさん、格好良いエレキギターお持ちですよね。

asmi GRETSCHのエレキギターを持っているんですけど、あれは専門学校の先生が楽器屋さんで一緒に選んでくれたものなんですよ。そのときに普通のアコギで弾き語りするのはつまらないかもしれないと思って、どうせならあまり見かけないエレキギターで弾き語りしたら格好良いんじゃないか!って。

BLUE MICROPHONESのマイクとLogic Proで宅録も

―曲もGRETSCHのエレキギターで弾き語りをして作っている?

asmi そうしています。デモは弾き語りをボイスメモで録音しちゃいますが、仮歌が必要なときなどは宅録で、BLUE MICROPHONESのマイクでDAWソフト内に録音したファイルを作曲家の方に送ったりします。宅録は専門学校で学んだ際に、DAWソフトのAPPLE Logic Proを使用していたので、そのまま今も使っています。

―ギターのコード進行は幾つかパターンを覚えていて、それで曲作りをしているのですか?

asmi 本当にコード進行とか今だに意味が分からないので、U-FLETでさまざまな曲を探して、コードの勉強をしながら作曲してるんです。身になっている自信はそこまでないんですけど……さすがになってるか(笑)。

ー最後に、asmiさんのようなアーティストになりたい方へ何かアドバイスをいただけますか?

asmi 私の音楽人生はまだ短いですけど、その中でも明確な転機はあったなと思っています。私はクボタ(カイ)君とRin音君が好きで今所属しているROOFTOPに入りたかったんです。それで大阪のサーキット・イベントに行ってクボタ君と直接話せる機会がありそうだったので、直接CDを渡して、そうしたらライブを見にきてくれて、事務所への所属につながったんですよ。今の私にとっては、そのときの自分を褒めたいなと思えるエピソードです。

―今は動画配信プラットフォームのアカウントからネット上に曲をアップするのが活動方法の主流だと感じていましたが、それだけじゃなく自分の足で営業しに行くって行動力がありますね。

asmi ネット上にあげるだけだとどんどん自分の音楽が流れて埋もれていってしまうので、誰かに明確なインパクトを残す上では、結構重要な行動なんじゃないかと思います。皆さんも、ぜひ、行動しましょう!(笑)。

最新リリース:MAISONdes「アイワナムチュー feat. asmi, すりぃ」

asmi 恋をするとあふれてくる、隠しきれない自分本位な気持ちを全開にして歌いました。何度も聴いて、虜になってください!

■テレビ・アニメ「うる星やつら」第2クール・オープニング・テーマ
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