plug+ by Rittor Music

自分らしく音楽を始める。

スタイル検索

ゼロから学ぶ

Text:Mizuki Sikano Photo:Chika Suzuki

オリジナル曲へ取り組んだから気付けたこと

―オリジナル曲は、歌ってみたの選曲コンセプトと異なる表現をする実験場になっているような感じなのですね。

超学生 そうなんですよね。メジャーらしいポップスを歌ってみたり、技術面ではプロのレコーディング現場に行ったり、扱ったことのないトラック構成の楽曲とかに触れられたのは、メジャー・レーベルに所属したからこそ得られた恩恵だったなと思うんです。とにかく勉強になったので、ありがたかったなと。

―いろいろな曲調を歌唱する中で、さらに自分の声への理解が深まったりもしましたか?

超学生 「Untouchable」を作っていただいたJazzin’parkの栗原暁さんや久保田真悟さん、前田佑さんからは超学生の“太い芯のある声”に魅力を感じてくださったので、その部分を輝かせるためにサビで“もっとください”とかディレクションいただいたのは新しい発見でしたね。

―そういう経験のためにメジャー・デビューをしたかったのもありますか?

超学生 メジャー・デビューは、すごくシンプルに一つの到達点だと思っていたんですよね。少なくとも僕は音楽業界にパイプもなかったし、メジャー・デビューに至るまでかなり重大な何かがたくさんあったと思うんです。そう振り返るぐらい楽な道じゃなかったなと思います。

超学生の所有機材/マイク/アウトボード

―スタジオ録音も、普段の歌ってみたの制作工程にはないことですよね。

超学生 そうですね。でも今回は作家さんには、宅録前提でお願いしていたんですよね。というのも、最初に実験として「ルーム No.4」をスタジオ録音にしてみたら、家の方が良いパフォーマンスが出来るなと気付いて。あと宅録なら歌ってみたでやっているニュアンスをサウンド面でも出せると感じたんです。でも、作家さんがボーカル・ディレクションをしたいと言ってくださった曲もあって、それはスタジオで録音しました。ちなみに今回宅録したのは、「けものになりたい!」、「Innocent Tyrant」、「インゲル」、「Let’s go」、「Give it to me」、「ガトリングアジテイタア」です。

超学生の所有するマイク。左からNEUMANN TLM102、TLM103、ANTELOPE AUDIO Edge Solo、NEUMANN M149 Tube、MANLEY Reference Cardioid
超学生の所有するSSLのバズコンプThe Bus+
超学生の所有するアウトボード類。上から7バンドEQのHERITAGE AUDIO Motorcity Equalizer、マスター・レコーダーTASCAM DA-3000、アナログ・プロセッサーSSL Fusion、EQのMANLEY Massive Passive Stereo EQ Mastering

―宅録にはどのような機材を?

超学生 プライベート・スタジオはWindows環境で、DAWは中学生のころから使っているIMAGE-LINE FL Studio 21です。例えば「サイコ」ではマイクにMANLEY Reference Cardioid。歌ってみたでやっているセッティングと同じで、マイクプリのBAE 1073MP、コンプはSHINYA’S STUDIO 1U76で内部回路がUREI時代の1176を再現しているものを通しています。オーディオ・インターフェースは、ANTELOPE AUDIO Discrete 4を使って録音しました。

Dante対応オーディオ・インターフェースANTELOPE AUDIO Galaxy 32 Synergy Core
マイクプリBAE 1073MP、コンプSHINYA’S STUDIO 1U76

―「サイコ」で大事に生かしたかった成分は?

超学生 エッジ・ボイスですね。マイクはReference Cardioidで、上から下までしっかり録れるものを。そして1073MPではザラザラした成分が加わりますが、1U76でリビジョンのスイッチをRev Dにすれば暴れのないように奇麗にコンプレッションできました。あと1U76にはサイド・チェインのハイパス・フィルターが付いているので、それで僕の突発的な低域成分にコンプがかかってしまわないようにしたり。

―不自然なコンプレッションを防いで、奇麗なコンプレッションを目指していたのですね。

超学生 そうです。あと1U76はレシオを2:1にして、コンプレッションを緩くナチュラルになるようにしています。あとはマイクのセッティングで、口元ではなく鼻の辺りを狙うようにしました。

―マイクの高さによって収音できる周波数帯域が変わる=音の印象が変わりますが、超学生さんは低域ではなく高域の収音に力を入れるためですよね。

超学生 そうです。それで若干重心を上げていきました。

―これはプロのエンジニアの技ですけど、超学生さんはどこで学んだのですか?

超学生 実は韓国アイドルのファン・コンテンツを見まして。IVEの「LOVE DIVE」のレコーディング風景を見たら、ものすごい高い位置にマイクをセッティングしていて。

―確かに、そうですね(笑)。

超学生 そうすると口とマイクの間に距離が生まれるじゃないですか。IVEはプロのスタジオで、ノイズのないドライな空間で録音しているけれど、僕の場合は部屋だから目の前にパソコンもあるし、ノイズはあるんですよね。だから本当にセッティングに苦労することになりました。

―ミックスやマスタリングも経てプロのパッケージの音と感じますが、歌い直しているポイントが強弱表現とリンクしていたりと、スタジオでは行わなそうな宅録ならではの表現も見受けられて面白いなと。

超学生 なるほど。僕は録音前に歌詞と楽曲の背景を考えて、録音始まってからマイクにどんな風に音が乗るのかなどを探っていくんです。それをスタジオだと4時間で完成させなきゃいけないけど、家だと丸2日くらいかけてダラダラとやるんですよ。スタジオでは僕が納得していなくても、周囲で納得が進んでOKテイクが決まることもあるんですが、家だと判断も僕なのでちょっと気に入らないとすぐ録り直せる。そういう中で出来上がった要素が、その宅録要素なんだと思います。さらに「けものになりたい!」では1週間かけてちまちまとミックスをして、ピノキオピーさんにご意見もらって調整したりもしました。

―このアルバム制作で他の方から意見をもらいながらミックスのレベルを上げたりもできたのでしょうね。

超学生 はい、スタッフの方にも話を聞きましたしね。だからあらためて振り返ると、機材も増えましたし、オリジナル曲のミックスを自分でやるってことをしてみたいですね。

―やっぱり超学生さんの音楽的な興味や研究対象の中で、ミックスは大きい存在なんですね。

超学生 ありがたいことに結構僕のコアなリスナーの方は、超学生のミックスでまた聴きたいって言ってくれたりするんですよ。本当にニッチな要望ですけど。あとAWAラウンジのリスニング・パーティーのチャットで、“超学生ミックスの曲!”とか言ってもらえたりして、正直すごく嬉しい。

―ファンの方々は超学生さんのマルチなところを支持しているのでしょうね。ちなみにFL Studio 21で作曲をしたりもしていますか?

超学生 そこまでの技量はないんですけど、短い曲とかなら作ったりしますよ。ファンクラブで配信している『超ラジオ』のオープニングのジングルを作ったりとか。今後もできることはやってみたいと思っていますね。

超学生2023年の活動方針

―最後に2023年の活動方針は?

超学生 オリジナルを1曲ぐらい作りたいですね。

―作編曲ですか?

超学生 そうですね! 自分で作ってミックスもして、公開までやるんです。きっとこれを楽しみにしてくれている人も居るから、目標の一つとして楽しみにしています。僕は分離感の心地良いミックスを作ることが得意なので、このボーカル・ミックスのノウハウを生かして各楽器が喧嘩しないで整頓された曲が作れるんじゃないかなと。

―その切り口とても面白いですね。その研究成果も聞いていきたいです。

超学生 そうですね。今の音作りでは、一つ一つの音をいかに飛ばして届けていくかが大事だと思うので、この部分また連載などで話したいなと思います。

超学生アルバム『超』

■アーティスト名:超学生
■アルバム名:『超』
■発売日:2023年2⽉15⽇(⽔)
■『超』参加ミュージシャン:すりぃ、ピノキオピー、FAKE TYPE.、辻村有記、Jazzin’park、前⽥佑、品⽥遊、篠崎あやと、橘亮祐、Code.EK、Peter Nord、IE-MON、DX ISHII、ROBBIN、ZWOO、Mohanp、RYAN JHUN、cosMo@暴⾛P、松隈ケンタ、SCRAMBLES、

PRE

1 2

この記事をシェアする

  • LINE
  • twitter
  • facebook

一緒に読みたい記事

注目記事

新着記事

注目記事