取材:鹿野水月(plug+編集部)
文:濱田侑佳(plug+編集部)
目次
森鷗外『杯』×今井キラ イラスト/乙女の本棚シリーズ

文学の名作を色彩豊かなイラストとともに楽しめる=乙女の本棚シリーズ第45弾として、森鷗外『杯』が発売された。
今回は本書のイラストを手掛けた今井キラにメール・インタビューを敢行。本書を手に取った方にも、手に取る前の方にも、是非とも楽しんでほしい。

■今井キラ プロフィール
兵庫県生まれ。ファッション・ブランドAngelic Prettyや雑誌、小説の装丁画などに作品を提供。作品集として『待つ』、『女生徒』(どちらも太宰治+今井キラ)、『月行少女』、『少女の国』、『ひと匙姫』がある。他の追随を許さない独自の空気感で、世界中のロリータ少女たちから支持され続けている。
X:https://x.com/keeggy
イラストレーター今井キラ インタビュー

ー初めて『杯』を読んだときに、どのような感想を抱きましたか?

短いお話ではありますが、少女たちの情景が鮮やかに目に浮かび、“今すぐにでも絵を描きたい”という気持ちになったことを覚えています。いつも私の絵柄の持ち味を最大限に引き出してくれる作品を丁寧に選んでくださる立東舎の編集さんには、とても感謝しています。
―『杯』の挿絵を手掛けるに辺り、積極的にインプットしたり、調べて学んだりしたことなどはありましたか?

図書館で森鷗外に関する書籍を読んだり、衣装の参考にするために当時のことを題材にした映画を観たり、何カ所か小説の舞台によく似た温泉街に泊まりに行ったりもしました。宿泊した温泉の近くにある滝を観に行った際に、川辺に咲く美しい橙色の野百合を見つけて、作品に取り入れたりもして。
丁度この作品の制作中に、国立西洋美術館で開催されていた写本展にも行く機会がありました。そこで出会った美しい挿絵に“本文とはとくに関係ないが作者が勝手に花の絵を添えた”というような解説が付いているのを発見して、私は絵を描くときについ真面目に考え過ぎてしまう癖があるので、“ああ、こういった自由な発想も許されるんだ”と心が軽くなったこともありました。
―七人の娘が和の要素と第八の娘が洋の要素という描き分けと、水を飲む泉などの風景描写におけるさりげない和洋折衷の表現について共通点を感じます。何か意図して描きましたか?

乙女の本棚シリーズの挿絵を手掛けるときは常に和洋折衷を意識していますが、今回は『杯』の著者の森鷗外が特に異国文化に精通していたということにちなみ、和洋折衷の要素を強く反映させました。また七人の娘たちにとって第八の娘は異質な存在であるので、その異質さを表現するために、第八の娘が登場する場面では雰囲気が一変するように意識して描きました。
―七人の娘と第八の娘は、泉という同じ空間で交流しているはずですが、同一のページ内で一緒に描かなかったのには何か理由がありましたか?

ラフの段階では両者が同一ページに存在するシーンもありましたが、構図が平凡になってしまい面白味に欠けたため、最終的になくしました。意図的な判断というよりかは、文章や絵の流れを自然に追求した結果、そうなったという感じです。
―七人の娘たち、第八の娘のキャラクター・デザインをしていて、面白かったポイントはどのようなところですか?

七人の娘たちに関しては、幼い姿を描くことは難しかったですが、お揃いの衣装にそれぞれの個性を少しずつ加える作業がとても楽しかったです。
第八の娘に関しては、黄金色の髪に黒いリボン、サントオレアの花をあしらうといった詩的なイメージを絵に落とし込む作業が楽しく、今回の制作の中で特にやりがいを感じる部分でした。ただ動きや表情の乏しいキャラクターだったため、構図決めにとても苦労しました。
―作品を描いていて、和風の世界での少女性と洋風の世界での少女性について、どのような違いを感じましたか? また、共通する要素はどういったところだと思いますか?

和風の世界での少女性は、調和を重んじ、不変的な美しさを特徴とする。一方、洋風の世界での少女性は、孤高を恐れずに個性を際立たせる傾向があるのではないかと思いました。共通点は、どちらの少女も頭にリボンを結んでいるという描写が登場するところでしょうか。ただ、その姿はどこか大人びています。私には、少女が己の美しさを自覚しているようにも見えました。

―尊敬する画家やイラストレーター、デザイナーの方はいますか?

最初に好きになったイラストレーターは、水野純子先生と金子一馬先生です。この方々の作品は、いつまでも自分の深い部分に残り続けるのだと思います。その後はイラストや絵画といった分野から意識的に距離を置き、映画や音楽、ファッションなど、多岐にわたる分野から刺激を受けるように努めてきました。
―現在読者の方々の手に『杯』が渡っていますが、どのようなところを楽しんでもらえたら嬉しいですか?

短いお話ということもあり、絵が重くなりすぎないように仕上げたので、気軽に何度も読み返して楽しんでいただけたらうれしいです。そして、迷ったり立ち止まったりするときに背中をそっと押してくれるような、そんなお守りのような一冊になったら良いなと思っています。
読者プレゼント:今井キラサイン入り『杯』を抽選で3名様に!

乙女の本棚シリーズ『杯』のイラストを手掛けたイラストレーター 今井キラさんのサイン入りの本書を、抽選で3名様に無料プレゼント!
応募方法はplug+(ぷらぷら)のXの投稿をチェック。
■応募要件:plug+のXをチェック!
乙女の本棚シリーズ『杯』刊行記念で『今井キラ展』がジュンク堂書店池袋本店で開催中

乙女の本棚シリーズ『杯』刊行を記念して、作品に登場する女の子のグッズ購入やイラスト展示などが楽しめる『今井キラ展』が開催中。場所は、ジュンク堂書店池袋本店。
開催期間:2025年3月9日(日)まで
開催場所:ジュンク堂書店池袋本店 9Fギャラリー・スペース
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