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取材/編集:Mizuki Sikano

ネット上で歌い手として活動をしてきた二人、伊東歌詞太郎とNORISTRY。オリジナル曲も発信する彼らだが、現在でも歌ってみたの投稿を続けている。そんな歌い手活動を続ける彼らに、歌ってみたへの愛を語ってもらおう。

伊東歌詞太郎×NORISTRY対談インタビュー

2022年超パの出演から仲が深まった

―今回お2人の仲が良いということだけ事前にお伺いして、じゃあお呼びしちゃおう!という感じでお声がけしてしまったのですが、最近の2人はどういう感じで仲が良いのですか?

NORISTRY ちょいちょい会わせてもらってますよね。

伊東歌詞太郎 そうですね。だから「対談相手、NORISTRY」っていう1文が来た時に、“えっ!”って嬉しかったです(笑)。去年とか今年くらいから、もちろんお互い全然見知ってる関係ではあったんですけど、プライベート的なところでよく会うようになっていったのは今年のタイミングで。

NORIさんの主催ライブ『NORISTRY BIRTHDAY LIVE「大祭り – OHMATSURI – 」』(2024年1月14日)にも出演予定だし、僕のアルバム『魔法を聴く人』のリリース特番の司会もやっていただいたり。

NORISTRY そうなんですよね(笑)。

伊東歌詞太郎 今回の対談も含め、僕は“急に縁っていうのは深まっていくんだな”みたいな感覚で捉えてます。

NORISTRY 全く同じことを思っていて。不思議なタイミングと縁が重なって、今年、本当にお会いする機会が多かったので。“今回も歌詞さんで嬉しいな”って(笑)。

ーお互いへの想いを確認し合ったところで、お2人が仲良くなったきっかけは?

伊東歌詞太郎 一番初めは2022年の末にニコニコ超パーティー(以下、超パ)で初めてしっかり接したのがファースト・コンタクトで、その後、もるでお君と、タラチオ君も含む歌い手4人でお家で集まったんです。そこで、音楽の話とか、それじゃない話とかも、ウワーッていっぱいしたりとか。そこから始まってきましたね。

ーこの前、NORISTRYさんが「地団駄ビート」(タラチオ、もるでお、NORISTRY)を出したメンバーですね。そこでお互いの音楽の理解も深まったり?

伊東歌詞太郎 NORIさんの音楽については、もう仲良くなる前によく耳にする機会があったんですよね。僕がみきとPさんの「少女レイ」歌ってたみたを投稿したんですけど、そのときはNORIさんの動画を参考にしてました(笑)。もう当時、僕にとってNORIさんは「少女レイ」で一番良い歌を歌ってる人で。僕はもう丸パクリしてやろうくらいの感じで聴きまくって。だから去年の超パで、初めて会った感じがしなかったです(笑)。

ー伊東歌詞太郎さんから見てもNORISTRYさんの声が魅力的だったと。

伊東歌詞太郎 良いですよね。ほかのライブ・イベントでタラチオ君と一緒にBUMP OF CHICKENの「天体観測」を歌ってるときに、ハモリをNORIさんが担当してたんです。それでずっと上のラインを歌っていたんですが、男性が歌うにはもう本当にどうしようもないレベルでキーが高いんですよね。それをすごい安定感で歌われる。今度、2人でご飯とかに行ったら、その技術をどう身につけていったのかっていう話を、なんならちょっとしたいなと思ってます(笑)。

NORISTRY 今のお話で言うと、僕は歌詞さんのニコニコ動画(以下、ニコ動)の投稿通知をもうずっと取ってたんで、“伊東歌詞太郎、「少女レイ」歌ってみた”っていう通知が来たときに焦りましたね。

そのとき僕は「少女レイ」の歌ってみたがニコ動の中で一番聴いてもらってたんですよ。“これはすぐ抜かれる!”と思って(笑)。しかも、歌詞さんなんて、もちろん昔から聴いてましたし、絶対良いってもう聴く前からわかってたんで。

ーそれの元になったのが、まさか自分だとは(笑)。

NORISTRY 全く思ってなかったですね(笑)。

伊東歌詞太郎 ボーカロイドの曲が出た瞬間に歌う、といった場合は参考にする人はもちろんいないんですけど、そうでない場合、僕はもう必ずどなたか歌手の声で歌を覚えてます。

海外の歌ってみたの市場について

歌唱力のある歌い手は海外ライブに向いている

ー今年になり接点も増えたというお二人ですが、お互いの活動で印象的だったことはありますか?

NORISTRY 僕はもう歌詞さんに関しては、日本だけでとどまってないっていう印象がすごい強くて。弾き語りの路上ライブとかも、日本各地でやってたり、どれも僕が全く経験していないことをやってる。だから、“すごいな”の一言ですね。

伊東歌詞太郎 それでいうとNORIさん、今年世界的なテレビ・ショーへの出演があったじゃないですか。

NORISTRY 『アメリカズ・ゴット・タレント』っていう番組があるんですけど、海外でやってる審査員4人がよかったらボタンを押すみたいなやつ。あれの日本版が今年の初めに放送されて、それにも出させてもらったりとかしてて。

伊東歌詞太郎 NORIさんは海外ライブやったことなかったんでしたっけ?

NORISTRY 全くないですね。

伊東歌詞太郎 “自分の投稿曲がインターネットを通じてそんなに広まってるの?”って驚けるので絶対行った方が良いと思います!

ー歌ってみた市場が国内にとどまらないと、伊東歌詞太郎 さんは実感されてるのですね。ちなみに、NORISTRYさんが海外ライブに興味を持つ理由は?

NORISTRY そもそも僕、海外に住みたい気持ちがずっとあったり、“やってみてないことを経験したい”っていう気持ちが強いんです。歌詞さんや他にも海外でライブを経験した人って、「日本と全然違う」って、みんな口を揃えて言うんですよ。どんなことが違うのかっていうのを話だけで聞くんですけど、聞けば聞くほど、“自分でも体験してみたいな”っていう気持ちがすごい膨らんでて。

伊東歌詞太郎 なるほど。NORIさんはライブでちゃんと歌えるっていう力があるから、海外のライブもすごく向いてると思います。多くの国があるので僕もまだ数カ国くらいでしかやったことはないですけど、お客さんの反応が国ごとに違うんです。むしろ日本は特殊だと思います。

 日本のお客さんは、コール&レスポンスとか手拍子で、“ライブに参加する”タイプの楽しみ方をしてくれるじゃないですか。一方で、海外はもちろん手拍子やコール&レスポンスもしてくれるけど、とにかくアーティスト側の表現に対して素直に反応するし、パフォーマンスによってもう会場の熱がありえないぐらい上がるんですよね。NORIさんみたいに歌唱力がある人は、絶対海外に向いてます。

ーそんなNORISTRYさんの印象的だった活動、伊東さんから見ていかがでしたか?

伊東歌詞太郎 『アメリカズ・ゴット・タレント』っていう番組を見て、NORIさんは自分をさらけ出してアーティスト活動されてる方だと思いました。キャラクターというものを作り込んでやっていく活動の形もあるから。

伊東歌詞太郎とNORISTRYの歌い手としての活動方針

キャラを作らず自然体で歌うことが長期的な活動の秘訣

ー明確にキャラクター性を提示する歌い手の方もいらっしゃれば、そうでない方もいる。お2人はどちらかと言えば、自然体で声を届けるスタイルということですね。

伊東歌詞太郎 そうですね。そのままの自分を世間に出して、その上で歌を聴いてもらうスタイルが、NORIさんと僕は一致してます。というのは……勘違いじゃないよね(笑)?

NORISTRY 大丈夫ですよ(笑)。僕も、似たような感覚は感じてて、歌詞さんは裏表がないし、オフのときでもいっぱいお話してくれる。

伊東歌詞太郎 キャラクターを作るって、悪いことではないけれど少なからず嘘をつくことにもなると僕は思うんです。“そこに来てる人がそれを聴いて感動してくれれば何の問題もない”っていう考え方も、もちろんあるけど、僕は、“それをやってると、一生音楽をやっていくのが辛くなっていくんじゃないかな”って思っちゃうんですよ。ステージにいるときも、こうして取材を受けるときも、“裏表を作らない方が、僕は長い目で見て音楽を長く続けられるんじゃないか”って思ってるけど、どう思います?

NORISTRY 僕も、本当にその感じやと思いますね。多分歌い手を商業として考えたときには、今、歌詞さんが言ってたみたいにガチガチにキャラクター作りとかをした方が、お客さんがつく……って言い方が適切かわからないですけど、あると思うんです。でも僕はそれはしない。やっぱ僕は、この何十年と続けてきた音楽を嫌いになりたくないから。「好きなことを仕事にしない方がいい」って多分、そういうことなんかな”って思う。

エンタメの歌い手とアートの歌い手の違い

ー歌い手としてのキャラ作りの話からは外れますが、歌い手の方々はカバーをしていく中で元のオリジナルの曲の世界観に感情移入する工程があると思うんです。だからこそ歌ってみたには表現力のほかに、少なからず演技力も必要なんじゃないかと。そういう点ではどうなんでしょう?

NORISTRY でも僕の場合は、演技したことない気がしますね。

伊東歌詞太郎 それ、最高です。それが聞けただけで、僕はもういい(笑)。

NORISTRY カバーに関しては共感できるとか、自分が、“好きだな”って思うメロディ、演奏、オケの曲をピックアップしてるので、自然と感情移入できるんです。それで“この曲に僕が励まされてるから、みんなにもこの曲のよさを知ってほしい”みたいな感覚が割と強かったりする。

伊東歌詞太郎 そうなんだよ~! “歌は演技をしたら終わりだ”と僕は思っていて。俳優、女優の方も、何かの役になりきってるときって演技している感覚がないんじゃないかなって。

自分の体の中に音がして勝手に入ってきた状態で、何も考えないでただ声を紡いでいく。意識すらない状態で出てきた歌が、エンターテイメントじゃない、嘘偽りのないアートだと思うんですよね。

伊東歌詞太郎が語る「歌ってみたの無我の境地」?

ーお二人の話に戻しますが、多分先ほどの伊東さんが言っていたのは無我の境地みたいなことだと思うんですけど、歌ってみたで迎える無我の境地ってどんな感じなんでしょう?

伊東歌詞太郎 ライブもレコーディングも、今はもう本当に何も考えないで歌ってるっていうか、意識がないというか……。レコーディングでその状態になるのはちょっと難しかったんですけど、もうここ3年くらいは、クリックが鳴って、ここから歌い出しだっていう瞬間にもう意識が消えます。

ーすごいですね……どうしたらその悟りの状態に?

伊東歌詞太郎 そう、悟りみたいな感じですよね。ボイトレ的な発声をやっていても本当に自分が到達したい歌の境地には行けるはずがないと思っちゃったんです。基本的な発声、音程の正しさなんて、努力すれば誰だってできることだと思っているので。

そうではなくて、僕はもっと魔術的なというか……想像も付かない歌を歌いたいんです。だから、カラオケなど音的に劣悪な環境で歌を歌ってみたり、夜の海で大声でずっと歌ってみたり、あとは山の中に行って歌ってみました。

ーそれはもう、ガチの修行じゃないですか……。

伊東歌詞太郎 でもそれも“違うな”って。それで良いと思ったのが、暗い深夜の山に車で行って、恐怖の中歌うっていうこと。変な人が来ないか、幽霊がいないか、クマに襲われないかとか怖くて、下半身がガクガクしながら歌い始めるんですけど、30分くらいすると、やっぱり歌に没頭してる自分に気付いちゃうんですよ。

(編註:危険なので良い子は真似しないでください!)

NORISTRY それをやると、邪念がなくなるっていうことですか……。

伊東歌詞太郎 そう。さっきまで、怖いとか思ってるものが全部消えるんです。でも、それすら音響的には奇麗に響いちゃうから、違うなって思ったんですよね。それで、最終的には自宅に戻って。

 自宅で歌を歌うことほど、テンションが上がらないことってないんですよ。僕の場合、もう本当に音楽以外はクズみたいな人間なんで、全然家が片付いていないですし。だから、全然音も響かないし、そんな中でライブと同じテンションというか、同じだけの熱量でやっていくって、めちゃくちゃ大変なんです。その2点を僕はやっていった結果、今の自分が出来上がりました。

NORISTRY 歌詞さんって“純粋なストイックな方やな”って思ってましたが、さらにそれを感じたというか(笑)。雑念を取り払うためにそこまで行動する人ってあんまりいない。

伊東歌詞太郎 NORIさん、怖かったら一緒にやろうよ。

NORISTRY (笑)。

伊東歌詞太郎 まずは2人でやってみよう(笑)。

NORISTRY そうですね……ぜひ(笑)。でも、雑念をレコーディングで取っ払うことが、1つ目標になったかもしれないです。

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