kz(livetune)インタビュー 『ニコニコ超会議2023』DJセット～百戦錬磨のDJプレイ、グルーブのこだわり、そして新曲宣言！

kz(livetune)インタビュー in ニコニコ超会議2023

今日はオリジナルの「Tell Your World」をかけたいと思っていた

ー出演、お疲れさまでした。まずはDJを終えた感想からお聞かせください。

kz(livetune)　フロアがうるさくて良かったです。お客さんが声出しできるかどうかでだいぶ違うので。こうした公式のちゃんとしたイベントって、お客さんも優秀でルールをしっかり守るから、声出しNGのときはすごく静かで、こちらとしては少し寂しい気持ちがあったんです。盛り上げても暖簾（のれん）に腕押し状態で。果たして自分が今やっているDJが正解なのかどうかが分かりづらかったりもするので、公式に声出しOKになったことで僕も楽になりました。

ーDJ百戦錬磨のkzさんだけに、曲のつなぎも非常に奇麗でスムーズでしたね。

kz(livetune)　それはPIONEER DJさんが新技術をどんどん開発してくれて、SYNCボタンというメチャクチャ良い機能のおかげです（笑）。

ー次の曲がドーンとカットインされてくるというよりは、次の曲が徐々に入ってくるロングミックスになっていて、まさにクラブ仕様！という印象でした。イントロがフェードインしてきて、“次の曲は何だ!?”というあのワクワク感がたまらなかったです。

kz(livetune)　クラブ・ミュージック畑なので自然とそういう感じになっちゃうんでしょうね。一方で、今回のステージはDJメインではない方々もいらっしゃって、いろんなスタイルのDJが楽しめるショウケース的な感じで良かったですよね。

ーDJミキサーのEQ使いも盛り上がりを演出していました。

kz(livetune)　フィルターは意識しなくても自然と指が動きますね。普段のクラブと違うのは、イェーガーのショットが出てこないこと（笑）。とても良いと思います。

普段、クラブでDJしている際はイェーガー（アルコール35度）が運ばれてくることが多い様子。左手にはショットグラスも……

ーこのステージでベロンベロンになったらマズいですもんね。今回の選曲は事前に決めていたのですか？

kz(livetune)　基本的には最初と最後だけどういう展開にしようか決めて、あとはその場で考えていくスタイルです。

ー終盤ではご自身の「Hand in Hand」と「Tell Your World」をかけ、フロアは大合唱でした。

kz(livetune)　声出しOKということで「Hand in Hand」は絶対にかけたいと思っていました。

ー「Tell Your World」は久しぶりにオリジナル・バージョンをプレイしたそうですね？

kz(livetune)　僕自身、最近のDJではUjico*君が作ってくれた「Tell Your World (Snail’s House Remix)」とか、ポーター・ロビンソンが「Sad Machine」とマッシュアップしてくれたバージョンをかけることが多かったので、オリジナルの原曲を久しぶりにかけました。今日は原曲にしたいなという思いがあって。

ー最後の曲は「Glimmer feat. 初音ミク」（八王子P × kz(livetune)）でした。しかも、八王子Pさんのアルバムに入っているバージョンではなく、kzさんバージョンという。

kz(livetune)　この曲は八王子と自分でどちらが作曲担当／どちらがアレンジ担当、というような明確な分け方をせずに、お互いのトラックを合わせた共作だったんです。なので、八王子のアルバムに入っているのは彼のトラックがベースになっているんですが、せっかくなので自分のトラックをベースにしたバージョンも作ってみたいと以前から思っていたんです。それを披露できるチャンスがちょうど今回だなと思って。

ー本邦初公開だったわけですよね？

kz(livetune)　そうです、最近作りました。

ー1日目のトリだった八王子Pさんの最後の曲も「Glimmer feat. 初音ミク」でしたが、２人で決めていたのですか？

kz(livetune)　完全に偶然だったんですよ。特に２人で打ち合わせたとかは全然ないです。

リミックスの良さを、みんなにもっと知ってもらいたい

ー30分間、縦ノリの４つ打ちを中心に、フロアの熱気も尋常ではないDJでした。

kz(livetune)　ただ、30分のショウケースだったらフューチャーバウンス的な縦ノリがずっと続くのもアリなんですが、最近のクラブはハウスの影響が大きくてノリが横になってきていると感じていたりもするので、途中でPiccoの「Tokyo Future Girl (colate Remix)」をかけました。めちゃくちゃ良いグルーブの曲で、130BPMくらいにすると縦でも横でもノレるんですよ。何となく、この曲を途中で挟みたいなとは最初から思っていて。

ー今回かけたのはご自身関連の曲が中心で、他のプロデューサー曲はPiccoさんとふわりPさんでしたね。

kz(livetune)　そうでしたね。前回の2019年は悠然君とかナユタン星人のTEKINA/Remixとかをかけた記憶があります。自分の曲だけじゃなくて、良いトラックはこういう場で紹介したいと思うことがあって。特にリミックスって動画の再生数が伸びづらい面もあるので、もっとみんなに知ってもらいたいなと思って。

kzのワークスをまとめたSpotifyのプレイリスト（2020年）

ーDJは良い音楽をみんなに紹介するという側面もありますからね。

kz(livetune)　本当は僕がかけた曲をみんな自身で探してほしいんですけど、それもレガシーなカルチャーになっている気がするので、こういうステージでは“この曲はこれです！”って自分から言うようにしています。Shazamも便利なんですが、同人的な音楽だとヒットしないこともあるので。

いまだにSerumで十分に良いサウンドが作れる

ーkzさんはABLETON Liveユーザーでしたよね。今日かけたkzさんバージョンの「Glimmer feat. 初音ミク」もLiveで作ったのですか？

kz(livetune)　そうです。Liveをやめたらいよいよ“livetune”を名乗れなくなりますからね（笑）。

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ーABLETON LiveとANTARES Auto-Tuneがネーミングの由来ですもんね。Auto-Tuneもちゃんと使っていますか？

kz(livetune)　リアルなボーカリストのピッチ修正はCELEMONY Melodyneが最近のメインなんですよ。ただ、最新のバージョンはちょっと自分に合わなかったので、わざわざバージョン４に戻しました。一方で、ボーカロイドのピッチ修正については引き続きAuto-Tuneを使っていて、ケロリ方を含めてサウンドの相性が良いと思います。なので、ギリ一応“livetune”を名乗れる状態です（笑）。名前を借りといて使ってませんっていうのはさすがに申し訳ないですよね。

ーAuto-Tuneもバージョンによって音の変化具合が違うと語るクリエイターも多いですね。

kz(livetune)　僕はAuto-Tune 5（編注：2007年リリース）がかなり好きでしたが、今使っているAuto-Tune Proも良いと思います。

ーソフト・シンセで最近のお気に入りはありますか？

kz(livetune)　使っているのは相変わらずXFER RECORDS Serumだったりします。いまだにSerumで十分良い音が作れる。SerumはKYMOGRAPH界隈など、周りの知り合いが作っているプリセットが充実しているし、REVEAL SOUND SpireもNhato君のプリセットが出ているので、そういった近い人たちの死ぬほど良いプリセットを使っています。

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ー最近、気になっているクリエイターはいますか？　ボカロP以外でも結構です。

kz(livetune)　めちゃくちゃトラックが好きなのはDotnoi。それからTREKKIE TRAXからリリースしていたFellsiusは、ライブを見たらめちゃくちゃ音が格好良かったです。colateもそうですけど、若いクリエイターが格好良いトラックをいっぱい作っているので、DJするときに助けられています。

ポーターのボカロが良さそうなので1曲作ろうかな……

―DJ活動と並行して、そろそろkzさん自身名義の新曲も期待したくなるのがファン心理です。

kz(livetune)　ちょうどポーター・ロビンソンのボカロが出たじゃないですか。あれを使ってみたいなと思っていますね。僕は英詞が得意ではないのでそこだけ苦戦しそうですが、めちゃくちゃ良さそうなボカロなので、“使ったよ！”ってポーターに教えてあげたいです。

―最近、気になっている音楽手法やジャンルなども教えていただけますか？

kz(livetune)　さっき言った、横と縦のノリが両方あるトラックでしょうか。自分が派手好きなので、あまりテンポは落とせないんですが、ハウシーでちゃんと横のノリもあるっていう曲を探しているんです。ただ、そういう曲はなかなか無いので、自分で作るしかないかなとも思います。

―横と縦の両方行けるグルーブ作りというのはなかなか難しいそうですね。

kz(livetune)　僕も修行しないといけないかなと思います。ずっと縦ばかりというのもさすがに……僕も含めて年齢を重ねてくると縦ばかりじゃしんどい（笑）。クラブのお客さんの年齢層も循環してはいるんですけど、とはいえ、重なっている部分もあるので、ずっと跳ねているのも足腰がキツいじゃないですか。

―最後にkzさんの今後の予定を教えてください。

kz(livetune)　正直、ここ数年はあまり動けていなかったというか、割とくらってしまっていたんです。それこそお客さんの声出しが解禁されたことで、やっと気持ちが前向きになれたというか。それまではなんやかんや自分をごまかしながらやっていたような気がするんですが、やっと世界が前向きになってきたので、とりあえずポーターのボカロを使って1曲作りたいですね。

―今の作曲宣言、書いちゃいますよ！

kz(livetune)　言質取ってもらって大丈夫です（笑）。出さなかったら“kzさん、作るって言ってたじゃないですか！”ってリプライしてもらう感じで（笑）。

kzの『ボカニコ2023』DJセットリスト