聞き書き:Mizuki Sikano
ボカロP、歌い手、絵師などのクリエイター同士がつながり合い、コラボレーションをし て、一つの音楽作品を作ることができる場所=MECRE。クリエイターたちはどのようにつながり、作品を作り上げているのだろう? 今回はMECREから歌い手sekaiとのコラボで「bluh bluh」をリリースしたばかりのボカロP、FLG4に話を聞く。
目次
ボカロPのFLG4インタビュー × sekai「bluh bluh」
FLG4の名前の由来はFLギャング
ーFLG4さんのお名前ってDAWのFL Studio(以下、FL)から来てたりしないですよね?
FLG4 まさにそうです(笑)。元々音楽経験がないままトラックメイカーになったのですが、当初制作の参考にしたYouTuberがFLを使っているオタク集団で、“俺らみたいなFL使ってる奴はFL Gangと名乗ろう”みたいな。それが良いなと思ってFLGangって名乗ろうとしたんですが、日本でギャングは怖がられるかな?と思い、FLG4と名乗ることにしました。インターネット用語で、Aを4って書いたりするんです。呼び方は、FLさんでも何でも。
ーではFLさんと呼ばせていただきます! 普段の制作でもFLを使っている?
FLG4 そうです。「bluh bluh」もFLで作っています。ビートはサンプルを使うことが多くて、シンセはXFER RECORDS Serumですかね。でも最近ゴリゴリのサウンドより、アコースティック楽器とかの軽めな音がキテるから、ちょっとシンセ系から離れた方がいいんだろうなって考えたりしてます。
sekaiをエッセンスに物語を構築
ーまずはMECREでsekaiさんと目薬めだかさんとのコラボが成立してから、制作はどのように進みましたか?
FLG4 MECREの制作って、顔を知らない遠くの人とバンド組んで、文化祭やる感じなんですよね。
基本的にどういう曲にするかは、座長のsekaiさんの意見を聞くところから始まりましたが、ミーティングで話したときはそこまで明確なビジョンがあったわけじゃなかったんですよね。
なので、会議閉じて“個別で話しませんか?”とご提案し、2人で話してsekaiさんの人となりや、自分の歌の活動に思うことなどヒアリングして、そこからイメージを膨らませていきました。sekaiさんの性格とかも素敵で、わりと楽しくできた気がします。
ーsekaiさんの性格とか理解できたことで、制作にやっと着手できたような感じだったのでしょうか?
FLG4 うん。ここ1、2年で誰かと曲作りをするをする機会が増えたんですけど、僕の経験上やはり明確な依頼内容が無いままでとにかく曲を作る状況ってしんどいんですよね。何かテーマが決まっている方が、筆が乗るんですよ。
だからそのテーマを定めていくために、余分にお話しさせていただく感じなんですよね。
ーその作り方で完成した「bluh bluh」は、sekaiさんの普段思うこととかを、かなり反映させた歌という意味ですよね。
FLG4 そう言っちゃうとsekaiさんのパーソナリティを100%反映して制作したみたいですが(笑)。そうじゃなくて、sekaiさんをエッセンスにして、最終的には僕が物語を作りましたね。
歌う側が楽曲に共感できないと、僕は歌いづらいんじゃないかと思うんです。だから僕は少し歌い手の感情を、曲に織り交ぜると良いと思っています。
ーFLG4さんから見たsekaiさんの魅力はどういうところでしたか?
FLG4 普段のsekaiさんはミステリアスというか……寡黙でコンテンツで語る感じの歌い手と見られている方が多いと思うんです。
でも僕が話した感じでは、喋る内容はフラストレーションなどもありながら一生懸命頑張ってたり……そんなに明るいわけじゃないけど、快活に話す方だったんですよ。思っていることを、きちんと相手に伝えられる魅力をお持ちだった。その要素は「bluh bluh」を作る上でもインスピレーションになっていると思います。
YOASOBI「アイドル」を聴いて育つ子に適応した楽曲制作を
ー「bluh bluh」は生産性が求められる社会の中で行き詰まっていたり、元気でいることを強制されて疲弊している人を助けてくれるような曲になるんじゃないかと思いました。
FLG4 そうですね。僕自身もフラストレーションあるし、少なくとも何かしらの表現活動をしている人にとっては共通の悩みなんだと思うんですよね。僕も悩んでいるけれど、皆もそうだよね?という気持ちで作りました。
ートラップからポップスに変わる楽曲展開は感情の変化を感じさせますが、表現上どのような意味がありますか?
FLG4 う〜ん……表現というか、これは前提として、1曲の中にさまざまなジャンルを入れるのは今の主流になっていると思うんですよね。特に自分名義じゃない提供曲では多くの方の心を掴めるものを書きたいから、僕は主流の音楽にある要素を入れ込むようにしているんです。楽曲の展開でもそこを重点的に考えていたので、表現よりもリスナーの方々をイメージしながら作りました。
ーでは、ジャンルの掛け合わせが聴き手の心を掴む理由について、FLG4さんはどのように考えますか?
FLG4 難しいっすね……でも、飽きさせないためですよね。それに今の子たちは転調やジャンルレスの曲を聴き過ぎて、それが無い曲を物足りないと思うんじゃないかなって。特にYOASOBI「アイドル」のような曲を聴いて育つ子たちは、その耳を持って大人になるわけですよね? だからポップスを作る上では、その耳に適応した曲を作っていかないとまずいなと思っています。
ー「アイドル」以外でも、最近新鮮に感じたポップス曲はありますか?
FLG4 Mrs. GREEN APPLEが楽曲提供をしたAdo「私は最強」は、途中で4分の3拍子になって他の曲みたいになったかと思えば、急に戻ってくるみたいな展開をしていて。僕からすると急展開だと思うんですが、これがポップスの通常運転になっている感じがすごい時代だなと思いました。
ーところで、FLG4さんの持ち味は、トラップなどのビート愛を感じる曲作りではないかと思っているのですがいかがでしょうか?
FLG4 これよくクリエイター同士でも話すんですけど、今のポップスがAメロやBメロでトラップを使いがちなんですよ。でも作る側からすると、トラップで展開を作るのってめちゃくちゃ便利なんですよね(笑)。
ー流行だからやっている部分もあると思いますが、FLG4さんの曲は四つ打ちよりもビートメイクの方が作り込みが繊細な感じがします。
FLG4 それはめちゃくちゃ嬉しいですね。正直僕自身はヒップホップやR&Bが大好きな人間だから、トラップビートをポップスに入れ込むことが流行とは言え “使わせてもらってる”って感覚が強いんですよね。その後ろめたさがあるから(笑)、なるべく最大限のリスペクトを持って音作りをしているんですよね。
FLG4が影響を受けた音楽家=ドレイク
ーFLG4さんが影響を受けた音楽家はどのような?
FLG4 ドレイクとタイラー・ザ・クリエイターとかのメロウな感じに影響を受けています。特にドレイクのアルバム『Take Care』をよく聴きました。
ーそれは、特に歌メロとかで影響受けたり?
FLG4 多分あると思いますけど、ドレイクのことは本当に好き過ぎるので、自分の制作に出過ぎちゃうんじゃないかって思うから、気を付けてます。多分、日本の人にもウケないし(笑)。
ーいろいろとご回答いただく中でも歌い手の方に曲を書くコツがいろいろと伝わってくるインタビューでしたが、あらためてご自身で大事だと思っているのはどういったことですか?
FLG4 歌手の声質とかだけじゃなく、どんなファンの方々が多いのか考えて作ることが大事ですね。
以前何かで見たのですが、“音楽プロデューサーはパフォーマーが全力出せるように、エゴを出さず頑張らないといけない”って。心に響いたのでチームで音楽を作るときは、僕も考えるようにしています。
ー今回はチームでのクリエイティブでしたが、ソロなどで作品を出す予定は?
FLG4 作りたいと思ってますね。ソロではエゴを爆発させたい(笑)。リスナーのことを考えるのがリスナーのためにならないことがある、というのを最近思うんです。
ー独自性や実験性も大きな評価軸になるボカロ界隈だから?
FLG4 僕的にボカロ界隈で独自性を発揮して人気を集めるのはもう、羨望なんです。ゆこぴさんの「強風オールバック」とか、あれメジャーのポップスの現場からは絶対出てこない曲ですよね。
せっかく個人でインディーズの制作をするならば、ああいった自由さを発揮して、“好きに作るクリエイティブ”を思い出したいです。
ーFLG4さんの自由な実験に期待してます!完成したら聴かせてください。
FLG4 ぜひ! ありがとうございます。
FLG4プロフィール
■Twitter:https://twitter.com/FLG4_Music?s=20
■YouTube:https://www.youtube.com/@flg4611
2019年からボカロPとしての活動を開始。2020年10月に発表した「ノーペイン」で自身初の殿堂入りを達成した。2021年4月「ハツコイソウ」のMV視聴回数は現在660万回を超え、今だに多くの歌い手がカバーしている。
sekai「bluh bluh」作品クレジット
「bluh bluh」ダウンロード/ストリーミング:https://mecre.lnk.to/bluhbluh
歌唱:sekai
作詞/作曲/編曲:FLG4
イラスト/動画:目薬めだか
ミックス&マスタリング:佐藤宏明(molmol)
MECREとは?
「MECRE」は“昨日初めて作品を発表した人も、1,000万回再生動画の主も、フラットに出逢い新しい創作活動ができる場所”をテーマに、各クリエイター/アーティストは自身のポートフォリオページを制作した上で、自らの新しい創作にあたって必要なパートナーを自由に募集することができるサービス。
■MECREサイト:https://mecre.net
■MECRE Twitterアカウント:https://twitter.com/2021Mecre
■MECRE YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/channel/UCISAnAHCURVxlpFdR1jLF5Q
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