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ゼロから学ぶ

Text:Mizuki Sikano

幕張メッセで4月29日(土)30日(日)で開催された『ニコニコ超会議2023』。同イベント内に用意された『超歌ってみた』ステージは、抽選に当たれば誰でもステージ上で歌ってみることができるというもの。

 

 

そこにスペシャルゲストとして元Juice=Juice(ハロー!プロジェクト)のメンバーで現在歌手として活動している宮本佳林が登場し、バルーン「シャルル」と40mP「恋愛裁判」の歌唱を披露した。本番前の彼女をキャッチできたので、実は“大のボカロ好き”だという所以を中心に話を聞いていく。

宮本佳林インタビュー in ニコニコ超会議2023

ボカロ文化に何か貢献できたらいいな!

―本番用の衣装とヘアメイクとっても可愛いですね! あと1時間半後にはステージ出演ですが、もう良い感じに準備が整っている?

宮本 ありがとうございます! えー!準備……でも私ハロー!プロジェクト以外の楽曲をカバーする機会って全然ないので本当にドキドキしてたんですけど……いっぱい練習してきたんで大丈夫かな〜って思います!

―今回宮本さんの大好きなボカロ曲のカバーですもんね! 意気込みはいかがですか?

宮本 私を知らない方にも“この子良い歌を歌うな!”って言ってほしいって思うし、ボーカロイド文化に何か貢献できたらいいな〜!とか思います。もちろん、私自身の活動にも生かしていけたらいいな〜!って思います!

―今日は、歌ってみた動画の愛好者でボカロ好きな方だけでなく、佳林党(編註:宮本佳林ファンの呼び名)の皆さんにも届く演奏をしないとならないと考えられているのですね。

宮本 そうですね、私のことを大好きって言ってくださっている佳林党の皆さんは、私がボカロ好きであることをよく知ってると思うんです。でもボカロ曲より私の曲になじみがある。だから、そんなボカロ曲を知らない皆にも、ボカロの魅力が伝えられるように歌いたいなと思っています!

長年のひとりカラオケで悔いのない選曲ができた

―今回歌唱するのはバルーン「シャルル」と40mP「恋愛裁判」ですね。選曲理由は何でしょうか?

宮本 「シャルル」も「恋愛裁判」も、高校卒業したくらいでひとりカラオケをするようになったときによく歌っていたんです! でも『ニコニコ超会議』のいろいろなステージの配信を見ていると、ハイテンションな曲の方が盛り上がっているのでちょっと不安に(笑)。

でもこの2曲は自分の歌のクオリティに悔いがないので頑張りたいと思います。

―では、ひとりカラオケの訓練が何年か越しで生かされるときがやってきたと(笑)。

宮本 ちょっと時間が経っちゃいましたけどね(笑)。当時「シャルル」がカラオケの人気ランキングでずっと一位だったので、採点で99点を出したくてめちゃくちゃ練習していました。結局96点くらいしか出なかったんですけど(笑)。有名な曲でもあるので、皆さんの耳に留まってくれたらうれしいとも思います。

「恋愛裁判」については、数々のボカロ曲って人間離れした曲が多い中、40mPさんの曲って人間も歌える曲が多いなって思うんですよ。私のファンの皆さんも、きっと聴きやすいと思ってくれるはず!

―宮本さんはいつからボカロ曲にはまっていったのですか?

宮本 中学生くらいのときからボカロを聴き始めました! でも当時はとても歌えるような曲はない感じで(笑)。でも次第に、島爺さんとか、ぐるたみんさんなどを筆頭に、歌ってみた動画がアップされるようになったじゃないですか。それでだんだん投稿者も増えていくのを見ながら、これ私も歌えた方がいいかも!って思うようになっていきました。

「シャルル」はそんな中で出てきた楽曲だと思っていて、人間離れしたサビだけど、歌えなくはないボカロ曲の代表的な存在だったなって思います。

ボカロ曲が正確なピッチ修正に役立つ

―高校生になってからのひとりカラオケでの練習は、Juice=Juiceでのボーカルに何か良い影響はありましたか?

宮本 ボカロ曲は、高い声だったり、ミックスボイス(編註:地声と裏声の中間的な声)だったり、地声と裏声の切り替えをしないと歌えない部分があるような楽曲も多いので、とても良い歌の練習になりました。

あとは人間の声とは違って、ボーカロイドは100%作り手が意図するピッチで発音するじゃないですか。それがすごく良いんですよ。

―人間が歌うJポップのピッチとはかなり違いがありますよね。

宮本 やっぱり電子音なので、歌い方の影響を受けづらいですよね。自分だけの歌い方を模索することができます! そして、正確なピッチ感覚への修正までしてくれるので、歌手にとても良い影響を与えてくれる存在なんです。

歌手には何かしら傾向のようなものがあって、例えばピッチが下がりやすいとかもそうなんですけど、そういう歌を聴いていると、そのうちにその人の癖が自分にもうつっちゃうこともあるんですよ。
ピッチ以外でも、私は先輩の曲をカバーするときとかに自然と少し真似しちゃっていて、それで自分の色を出せなくなってしまうときがあるので。

―宮本さんはライブで踊りながらでも正確なピッチをキープしている印象で、どんな歌の練習をしたら、こんなに上手になれるのか教えてほしいです!

宮本 基本的には、ステージごとにその都度演奏する楽曲と向き合って練習していく感じなんですけど、スマートフォンに入れているチューナーを使って、自分のピッチ感覚の修正を割と高頻度で行うようにしています。これをやるだけで、ピッチをつかみやすくなるんです!

―ボイストレーニングなどにも通っているのですよね?

宮本 そうですね!juice=Juiceのころから現在まで、ボイストレーナーとしてとても有名な菅井秀憲先生に習っています。菅井先生に手を引っ張ってもらったりすると、出なかった音が急に出るようになったりするんです。どこの筋肉を引っ張れば声が出るようになるか把握されているみたいで、身体の構造から変えてくれるというか。

宮本佳林の声の特徴はチェストボイス

―宮本さんの声は元気でパワフルな印象があります!

宮本 いや、私は全然パワフルじゃないんです! 私の声は胸に響かせるチェストボイスで、パワーは無いけど、マイクに乗りやすい声なんですよね。中には、声量があっても身体の中でうまく響かなくてマイクに乗らないって悩む子も居たり……これはもちろん、マイクの角度やマイクの性質によっても変わってくるんですけど。

―宮本さんはとても研究熱心ですよね。

宮本 勉強とかってよりかは、自然と身に付けただけですよ! このマイクはこう持つ方が拾ってくれるな!とか、使いながら、ベストの収音ポジションを探って、そこにきちんと声が乗るように考えて歌います。

―PAとのコミュニケーション内容も確実に自分のものにして、活動に生かせているからこそのコメントですよね。とても驚かされました。

宮本 あとは自分の声に合うマイクと、合わないマイクがありますよね。相性が良いのは、ソロライブでも使ったSENNHEISERのマイクです。でも出張先によって現場で渡されたマイクで歌わないといけないことも多いです。なので、苦手だと感じているマイクを渡されたときの対処法も考えてるんですけどね。

―マジですごいですね!

宮本 いやいや、感覚的にもう……“何か分かんないけどこれ嫌なの〜”みたいな、ただのわがままって感じなんですけどね(笑)。

宮本佳林が愛するボカロP=DECO*27

―ボーカルについてのこだわりもお聞きできたので、もうインタビューの最後に、宮本さんが愛するボカロPについて教えてください!

宮本 DECO*27さんなんですけど……今挙げるとにわか感が出るのがすごい嫌! 

―DECO*27さんってもう、トップオブトップって感じですもんね。

宮本 そうなんです! でもDECO*27さん今は初音ミクとの曲ばかりですけど、私「弱虫モンブラン feat.GUMI」 とか、GUMIちゃんの声を調教しているときから大好きですから!

―DECO*27さんへの思い入れが強いのですね! 今回も候補曲とかにしてたりしましたか?

宮本 最近のDECO*27さんのボカロ曲好きなんですけど、あまりに人間離れすぎていて……まだ歌いやすい曲だとかなり昔のものになっちゃうので、ここで歌うのは違うのかなぁ?と思って選びませんでした。

―DECO*27さんの曲の好きなところは?

宮本 一見キャッチーでなじみやすい感じじゃないですか。でも尖っているのがDECO*27さんの魅力ですよね。

あとは単純ですが、主人公の女の子が毎回魅力的でかわいい(笑)。爽やかなのにドロッとしてるイメージです。「サイコグラム feat.初音ミク」は情緒不安定な子だなって分かるんですけど、「人質交換 feat.初音ミク」とか、ふわっと聴いた感触は良いのによく聴いたらやばいみたいな(笑)。そういう明るいのに、鬱曲って感じがすごい好きなんです。

―DECO*27さんはサウンドなども変化させながら、ずっと最前線で人気な方というイメージがありますよね。

宮本 そうなんですよね。ボカロシーンが人気を集めて、現在また人気になるまでに、一度低迷した時期もあったじゃないですか? その時期にもDECO*27さんやkemuさんとかがずっと良い曲を出し続けてくれてたなと思うんです。だからこその今のフェーズがある。

―それで言うと、「シャルル」がリリースされた2017年も、またボカロ曲に目が向けられ始めた時期だったような気がします。

宮本 そうでしたよね。だからその時期に「シャルル」が好きとか言うと、ちょっとにわかって指摘されたりしてました(笑)。

ボカロのおかげで声が出ない中でも曲作りに挑戦できた

―お話をお聞きしていて、宮本さんの音楽人生の中で、ボカロがかなり重要な存在であることがビシビシと伝わってきました。

宮本 そうですね、私は一度発声障害で声が出なくなったことがあって、その時期に、音楽を作れるようになりたいと思い、Apple Logic Proを購入してボカロ曲のコピーみたいな感じで打ち込みをやってみたりもしたんですよ。それでボカロ曲を作ることの難しさも知ることができて。

―ボカロが好き過ぎて打ち込みまで始めてみたってすごいですね。きっと、さらにボカロ曲を深く知るきっかけになったのでは?

宮本 そうなんですよね。もう声も出なくなって、音楽も嫌になっていたんですけど、そんなときに聴いた猫虫さんの「繰り返し一粒」とか、流星Pさんの「magnet」に助けられて、DAWをダウンロードしてみたり……。

ボカロ曲があったから、今も音楽を続けることができているなと思います。

―これからも宮本さんのカバーするボカロ曲をたくさん聴きたいなと思いました!

宮本 そうですね! やっぱり自分を助けてくれたり、人生の節目で聴いていた音楽がボカロ曲だったとあらためて思ったので、今後もライブとか機会を設けて披露していきたいなと思っています!

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