Text:Mizuki Sikano
目次
Chinozoと一緒にMVを作るときの手順
ボカロ曲 MVキャラクターの考案方法
―さまざまなボカロPと一緒に活動をなさっていますが、#eneeemyにも参加しているボカロPの一人、Chinozoさんが「グッバイ宣言 feat.FloweR」でヒットしたことは、一緒に活動しているアルセチカさんにとって、どんな意味のあることでしたか?
アルセチカ たくさんイラストを見てもらえるきっかけにもなりましたし、そもそも使用されているpiaproイラストの「すわりよければおべてよし」は、“このポーズが流行ってトレスイラストなど二次創作でたくさん広まったら嬉しい”という鮮明な野望があったので、それが現実になって逆に現実味がなかったです(笑)。
そしてこのイラストぴったりなChinozoさんのキャッチーな楽曲が投稿されたときは“まさにこんな音楽に使ってもらいたかった!”と思っていたので、こちらもとても嬉しかったです。Chinozoさんと出会うきっかけにもなりましたし、本当に多くのものをここから受け取りました。
―Chinozoさんとはいつもどのように制作を進めていますか?
アルセチカ 最初に普通のボールペンでA4の紙にMVの絵コンテを描きます。事前に何回か聴き込み、停止しながらですが、1回再生し終えるまでに描き終わらせます。第一印象で抱いたイメージをそのままビジュアル化する感じです。絵コンテから動画編集まで、所要時間としては大体3日間くらいで仕上げています。
その後、絵コンテを参考にしてペンタブで必要な素材を全部描いて、動画編集ソフトに入れてから、また追加で必要な素材を描いて、完成に持っていっています。
―とてもスピードが速いし、工程に無駄がないですね。
アルセチカ いやいや。例えば「ミィハー feat.Tet0」についての話をすると、5月の頭に曲ができていて送ってもらっていて、5月末くらいには1番サビ前の<まともにできない、まともにできない>までのMVを私の方で作っていたんです。でもほかのことで忙しくてその後制作ができてなくて、何とかすればMVは作れたのですが……私はChinozoさんが作る動画が大好きなので久しぶりに見たくて。だから私の制作は一旦諦めたんですよね。
でもフルの動画が投稿されたら“やっぱり良い曲だ!”と思って、勢いでMVを最後まで作っちゃいました。Chinozoさんからは「作ってたの!? 遅い!」って言われたのですが、MVをすごく気に入ってくれて、このMVを出すために「歌うか……」ということで、Chinozoさんはセルフカバーを出してくれたんです。
―Chinozoさんのセルフカバーが出た経緯はそこだったんですね。イラストも大事ですがMVは音楽に合わせる映像なので、リズム感が大事ですよね。<あなたを想う劇 はい、閉会>の後とか、歌詞と歌詞の間も絵が動いたり、細かい動きの変化を入れていくのがコツになる?
アルセチカ そういうところまで見てくれて嬉しい! <はい、閉会>の後はラスターという、画像を揺らすエフェクトを使っています。鳴っている音に呼応して、シーンというかストーリーを前に進めていかないといけないんですよね。そういうときにエフェクトを使っています。
―このMVのキャラクターはどのように考案しましたか?
アルセチカ Chinozoさんと相談をして決めました。重音テトを使って曲を作るときは、基本的にこの子が登場すると思います。「プルーヴェ feat.FloweR」から特定のボーカルに合わせてキャラクターを固定させていくのも面白そうという話になったんです。その方がキャラクターに愛着を抱いてもらえるかな?ということで。
―確かに、曲の世界観によってキャラクターが少しずつ変化するのを見るのは楽しそうです! この「ミィハー feat.Tet0」の重音テトの服装はどのように考えましたか?
アルセチカ 歌詞に<12時>というワードが出てくるんですけど、シンデレラみたいなイメージがしたので着ているローブを水色にしました。あと、私が描いた最初の絵だと襟元までシャツのボタンが締まっていて、ローブもボロボロじゃなかったんです。
でもChinozoさんに送ったら「首元のリボン取っちゃって、服もボロボロにしていいよ」って言われたので、ツギハギみたいなデザインになっています。あとはっきりは言えないけれど、理由があってズボンを履いている。
ボカロPに幅広い表現を与えてもらった
―予想以上にChinozoさんと相談しながら制作するのですね。アルセチカさんから見て、ボカロPのすごいところはどんなところですか?
アルセチカ 自分にできないことをやっているすごい人という感じです。私は目を使って仕事しているけれど、音楽家は耳を使っているので。曲って形がないし最終的に耳で整えるものだから、私の感覚だとすごく無理なことをやってのけているように見えます。
―ご自身と使っている感覚が違うと、よりすごいと感じるのでしょうね。
アルセチカ そう。私も「イラスト見て元気もらいました」って言ってもらえるけど、アニメとかドラマとか音楽とかって、より人の感情に深く影響できるなと私は感じているんです。その中でも特にボカロ音楽は、私の人生を本当に彩ってきてくれた。頭が上がらないです。
―音楽家に与えてもらってきたなと思うのは、どんなものですか?
アルセチカ やっぱり表現の幅ですかね。いろいろなボカロPさんの楽曲に携わることで、さまざまな表情が描けるようになりました。そういうのが無ければ、自分の好きなものばっかり作ってしまうと思うから。
アルセチカ書き下ろしオリジナルイラストTシャツ「makeee」
これからも大好きなボカロPの皆と音楽を作っていきたい
―今回は「音楽家」をイメージにオリジナルイラストを書き下ろしていただきました。うさぎと彩り豊かなスイーツが並ぶ、元気でラブリーな絵ですね。
アルセチカ ありがとうございます! 真ん中のキャラクターがボカロPさんをイメージして描いていて、この子の周りにいるうさぎは右から歌担当だからボカロ、ミックス担当、オーディオ素材、楽器担当で、上に飛んでいるのがイラスト担当です。
キャラクターをうさぎにしたのは耳が大きくてかわいいからです。あと、キャラクターと一緒に動物を描くのが個人的に好きで、優しそうな雰囲気になるなと思っています。
ーボカロPを取り巻くさまざまなクリエイターの皆さんもこのイラストの中に収められているのですね。
アルセチカ すべての要素を取りまとめて一つの素敵な作品を作るボカロPさんは、私から見たら魔法使いのような存在だなと思いました。みんなの要素を指揮棒に見立てたフォーク一振りで集めて、魔法を使って作品を使っているようなイメージのイラストです。
―このメインキャラクターの服装もゴージャスでデザインが凝っていて、とても可愛いですよね。
アルセチカ ズボンの裾に波形があって、あとマントの下が五線譜、ネクタイがピアノになっているのと、袖のところがMIDIデータになっている。
ー今回このイラストをプリントしたオリジナルTシャツとロンTを販売しますけど、今から着るのが楽しみです!
アルセチカ 普段ならばあまり描かないような細かく鮮やかなイラストになっていますので、普段着はもちろん、部屋に飾ってじっくり見たりしてもらえたらうれしいです!
―イラストレーターでありボカロ曲のMVクリエイターという、ご自身のやりたいことは100%やれてしまっているアルセチカさんにあえて聞きます。今後の展望は?
アルセチカ 私の夢は小説の表紙を担当すること、ボカロ曲に携わること、「アルセチカと言えばこの人だよね」って人とタッグを組むことだったので、確かに全部叶っちゃってる。だから今後の展望は、今いる私の大好きな曲を作る人たちと、これからもずっと一緒に作品を作っていくことです。これからも平和に暮らしていきたいなと思います。
アルセチカ「makeee」販売情報
■『#音の絵師』オリジナルTシャツ販売サイト:https://t-od.jp/collections/otonoeshi
■アルセチカ「makeee」Tシャツ販売サイト:https://t-od.jp/products/arusechika-ts-001
■アルセチカ「makeee」ロンT販売サイト:https://t-od.jp/products/arusechika-lt-001
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