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ゼロから学ぶ

Text:Mizuki Sikano

中学からパソコンとDAWを使った音楽制作を開始し、現在高校生ながらテレビ番組やアニメ作品のテーマ曲なども手掛けるなどプロのボカロPとして活動している晴いちばん(16歳)とSAKURAmoti(17歳)。 今回は“今の高校生ボカロPの音楽遍歴”を覗き見るべく、J-POP、ゲーム音楽、ボカロ編に分けて対談してもらう!

10代ボカロPが聴いてきたボカロ曲は?

今回の対談:晴いちばん×SAKURAmoti

<晴いちばん> DAWを変幻自在に使いこなす16歳のマルチなクリエイター。さまざまなアーティストから楽曲制作依頼を受ける、長崎在住のボカロP。
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<SAKURAmoti> 2005年生まれ17歳のボカロP。現在放送中のアニメ『うる星やつら』のオープニング曲「アイウエ」を美波と共同作詞/作編曲している。
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ボカロにハマったきっかけは『太鼓の達人』

―まずはボカロにハマったきっかけから教えてください!

SAKURAmoti 小学生のころにまらしぃさんの真似をして黒うさP「千本桜」をピアノで弾いたりしていましたが、本当にボカロ曲を好きになったきっかけは『太鼓の達人』です! kemuさんの「六兆年と一夜物語」をプレイして、楽曲に魅せられたのがきっかけでした。“知らない世界にこんなに良い曲があったんだ”って感動したのを覚えています。

晴いちばん 僕も『太鼓の達人』ですね。フォルダを選択してプレイする楽曲を選ぶんですけど、確か何気なく覗いた“ボーカロイド曲”ってフォルダの中にボカロ曲がいっぱいあったんです。そこにバルーンさんの「シャルル」があって、良い曲だと思ったのがきっかけでした。

―好きになったきっかけの曲までしっかり覚えているんですね。

SAKURAmoti 「六兆年と一夜物語」は、今でも僕の中に出来上がっているボカロ観そのものなんです。サウンドは激しいけれど、メロディが切なくて、サビはキャッチーで……僕のボカロ初投稿曲「音楽好きの一少年」は、自分で言いますが思いっきりkemuさんに影響を受けていると思います。

―自分でボカロ曲を作ろうと思った理由は?

晴いちばん それまでボカロって初音ミクしかいないと思っていたんです。それが『太鼓の達人』をプレイする中で“flowerっていうのが居る”とか、知識の上書きがあって。それでYouTubeやニコニコ動画でボカロ曲を探すうちに、“多くのアマチュアの人たちが作曲している”世界に驚愕しました。面白い文化だと思って、自分もボカロPになるのを決めました。

SAKURAmoti 僕も『太鼓の達人』でボカロ曲を聴く習慣が出来上がっている中で、何かで”YAMAHA Mobile VOCALOID Editor を使えばAPPLE iPadでボカロ曲が作れる”って情報を仕入れたんです。当時何か音楽を作りたいと思っていて、“そういえば最近ボカロ曲を聴いているしボカロPになれば良いかも”って漠然と思って、そのテンションのままボカロ曲を作り始めました。

ボカロ調声を知らないまま初投稿

―初投稿曲を晴いちばんさんは初音ミクで、SAKURAmotiさんはGUMI(INTERNET Megpoid)で制作してますね。

晴いちばん とりあえず”ボカロPになるなら初音ミクだ!”みたいな感じでCRYPTON 初音ミク V4Xを購入したんですが、使い方がよく分からず半年ぐらい放置しました(笑)。その間に『Undertale』の音楽の耳コピとかしていたんです。それで12月くらいにクリスマスをコンセプトにした曲が完成したときに、初音ミクに歌ってもらってボカロ曲にすることにしました。

SAKURAmoti 僕はMobile VOCALOID Editor内で課金して、初音ミクを購入していたんですけど、調声という概念を知らないのでどうしても良い感じに歌ってくれなかったんです。そこでGUMIを使ってみたら良い感じだったので、GUMIで初投稿しました。

SAKURAmotiの初投稿「音楽好きの一少年」サビのGUMI打ち込み
SAKURAmotiは2作目の「海月のシアワセ論」で子音と母音の分割、しゃくり、ビブラートの編集を覚えた

晴いちばん 僕も最初は調声何もできてないんだよね。ボカロP、初投稿あるあるな気がする。調声を知ったのはcilliaさんというボカロ調声が上手なカリフォルニアのPの動画でした。それで“声を調整できるんだ”って思って、2作目の「リメンバーボイス feat.初音ミク」からしゃくりを入れ始めました。

―初投稿をしたときに“ちょっと良い感じに歌ってくれない”けど、とりあえず投稿に踏み切った理由は?

晴いちばん “ボカロ曲を作ったらネットに投稿しないといけない”みたいな風潮が界隈にあるのを知ってたんで、何か“投稿して誰かに聴いてもらわないと”と思った記憶があります。イラストを描いてくれる人も居ないから、自分でクリスマス・ツリーの映像を撮影してMVを作っているんですよね。

SAKURAmoti 僕もMVは自分で撮影して編集してるから、今見るとちょっと恥ずかしくて消したいよね。初投稿だから消せないけど(笑)。

―初投稿した後の感想は?

SAKURAmoti 当時はボカロのシーンについて全く知らないまま投稿したので、軽くYouTubeで1,000回再生は行くと思っていたら、全く行かないのが意外でした。あとニコニコ動画で“中学生ボカロP”というタグが付いている投稿たちを見ていたら、皆クオリティが高くて。それで“普段僕が作っている曲をそのまま出したってダメだ”って思って、もっとボカロ曲好きに気に入ってもらえるように曲の作り方をガラッと変えました。

晴いちばん 僕も初投稿ではボカロ曲をあまり意識して作ってなかったですね。だから、別に最初は伸びなくてもいいかなと思ってました。でも投稿したことによって、小宮かふぃーというボカロPが僕の曲を気に入ってくれて“イラストを描きたい”と言ってくれたり、出会いがあったのが良かったなと思いました。

活動しながら他のボカロPの使用機材など情報収集

―活動していく中でほかのPのボカロ曲を意識し始めたのはいつですか?

晴いちばん 僕は4作目の「風鈴星feat.初音ミク」を作った時期に、はるまきごはんさんにハマってたんです。初めて買ったボカロPのCDがはるまきごはんさんの『ふたりの』でした。その影響は強く出ていると思います。今でも好き過ぎて、もっと早く出会っていたかったと思うボカロPの一人です。

―はるまきごはんさんの好きなところは?

晴いちばん 音楽からアニメーションまですべて自分で作ってしまう方なので、全部が魅力的なんですよね。『ふたりの』に付いていたブックレットに、使っているソフト音源とかが書いてあったんですよ。僕はそれを見る前からSPECTRASONICS Omnisphereを使っていたのですが、はるまきごはんさんもOmnisphere の“Japanese Children’s Choir”ってプリセットを使ったと記述されていて “一緒だ!”って思い嬉しくなったりしてました。

晴いちばんの愛用シンセ、SPECTRASONICS Omnisphere

―はるまきごはんさんから学んだことは?

晴いちばん 「約束」「再会」を聴いたことで、今まで言葉を音にはめるってだけの作詞をしていたけれど、もっと練ろうと思うようになりました。

―SAKURAmotiさんがほかのPのボカロ曲を意識し始めたのはいつですか?

SAKURAmoti 僕は『太鼓の達人』の後にまふまふさんの歌ってみた動画にハマるんです。2作目の「海月のシアワセ論」を作っていたときにまふまふさんの「それを愛と呼ぶだけ」という曲にハマって、バラードの作り方を踏襲して作りました。

SAKURAmotiは「まふまふさんが使用していたので使ってみたところ使いやすくて最近すごくハマっている」というドラム音源のIK MULTIMEDIAModo Drum
同じく「まふまふさんが使っているのを見てNATIVE INSTRUMENTS Kompleteを導入」したとのこと

―どんなことを踏襲しましたか?

SAKURAmoti 曲調は明るいけど暗い言葉が入っていたりして、少し影があるのが、まふまふさんの音楽の特徴なんです。僕の「アーティフィシャルスマイル/可不」でも、明るい曲調×影のある言葉のコンビネーションを意識して作りました。完全に影響です。

SAKURAmotiは中学校2年生のころから、作詞中に思いつかなそうな言葉をメモしているという(画像は一部)。そのため「今見ると始めたばかりのころのメモには厨二感があるワードが多い」とのこと

―明るい曲調×影のある言葉のコンビに惹かれる理由は?

SAKURAmoti ボカロ曲以外にも言えますが、耳に残る歌詞であることとメッセージ性がより強く感じられる曲が人気を集めますよね。明るい曲調×影のある言葉のように、印象を分けるとメッセージ性がより強まると思っているんです。ボカロだったら暗い言葉を明るく歌うことができるじゃないですか。歌い手の方々に歌唱をお願いすることもできるけれど、ボカロでしかできない表現ってそこにあるのかなって思います。

晴いちばん そうだね。例えば、カンザキイオリ「命に嫌われている。」とかもメッセージ性が強いけれど、初音ミクが歌うことでとても無機質に感じるじゃないですか。これカンザキさんのセルフ・カバーやまふまふさんの歌唱しているバージョンも魅力的だけれど、原曲がボカロ歌唱であることに意味があるんだと思うんです。だからこそ歌い手の方々が、それぞれの思うことを反映できるんじゃないかなと。

続きは、次のページ

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