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Text:Mizuki Sikano

煮ル果実や真壁寂室のMVを作るときの手順

依頼主(ボカロP)とのコミュニケーション方法

―煮ル果実さんや真壁寂室さんなどとどのようにMVを作っていますか?

BAKUI 私の場合は、大体お任せで作らせていただいてます。先方から“ここはこういう感じでイメージして作りました”とか、“どういうイメージでこういう歌詞を書いています”とか先に教えてくださる方に関しては制作前にお聞きして。その後も、ご相談しながら作っていきます。

―煮ル果実さんとの作り方を例に、依頼主であるアーティストの方とのやり取りの方法を教えていただけますか?

BAKUI 最初は煮ル果実さんご自身の解釈のようなものを教えていただきます。テーマとか、歌詞とか、音についての思いやイメージをお伺いするんです。でも煮ル果実さんは“必ずそれに沿わなくてもいい”と、“私の感じ取った表現でやってほしい”と仰ってくれます。

そして、私の場合1週間に1回、進捗報告をしています。この時点で危ないところがないか、映像を書き出してお渡しして確認いただくんです。1週間目、2週間目、3週間目、4週間目、5週間目の映像みたいな感じで、見てもらってましたね。

―BAKUIさんは煮ル果実さんの「命辛辛」最初聴いたとき、どのような印象を抱きましたか?

BAKUI “苦しんでるな”と思いました。そして、“それをどうにかして抜け出したい”っていうのと、“自分のやりたいことをやろう”みたいな感じかなと思いました。

―音楽のテーマが複雑なものだったとき、MVに落とし込むコツはありますか?

BAKUI いつも意識してることとしては、“とりあえず観てる人を楽しくさせよう”、“楽しませよう”と思いながら作ることです。具体的にやっていることは……やっぱり良い動きを入れること。例えば、間奏の1:53付近でキョンシーたちがかなり軽快なダンスをするんです。現実では人間ができないような動きですけど、こういう楽しい動きを入れるようにしています。

―こういうキャラクターの少し変わった動きについて、どのように発想して形にしていますか?

BAKUI 元々曲を聴くと脳の中で映像が流れるので、それを上手く再現できるように頑張る作業になるんです。音を聴いたときのイメージを大事にしつつ、歌詞とか、ストーリーに沿って、人が分かりやすいように大体2~3カ月かけてちょっと改変していく感じです。

―曲からイメージを膨らませた後は、どのような手順で制作していきますか?

BAKUI 本当に簡易的なVコンテを描いて、考えて、進めていくっていう感じです。イラストを描いた後はADOBE After EffectsとBlenderっていう3Dソフトを使っていきます。そして、カットずつPremiereに置いていく感じです。

「斑紋胡蝶譚」の絵コンテ

―背景に部屋みたいな空間が出てきて、その中で視点が動くシーンとかはAfter Effectsで?

BAKUI  After Effectsの3Dレイヤー機能を使って描いていきます。1枚の絵を、X軸、Y軸、Z軸っていうのがあって、画像を配置していって、その空間にカメラ・レイヤーっていうのを置いて、カメラを動かしていく感じです。

―After Effectsの中で部屋を作って映像にしていたんですね。楽しそう!

BAKUI 楽しいけれど、めちゃくちゃメモリを食うんですよ。レイヤーもすごく多かったし、パソコンが全然書き出してくれなくて、“動け!動け!”ってめちゃくちゃ戦ってました(笑)。

BAKUI描き下ろしオリジナルイラストTシャツ「おといろびとのしらべ」

―今回描き下ろしていただいたイラストは「音楽家」をテーマにしていただきました。まずBAKUIさんは音楽家にどのような感情を抱きますか?

BAKUI 技術的な面でも、芸術的な面でも尊敬の気持ちがすごく大きいです。目をつぶったら存在しない情景を浮かばせてくれたりとか、昔の記憶を蘇らせてくれたりとか、感情が込み上げてきたりとか、ちょっと“魔法使いっぽいな”って思うところはあります。

―オレンジと青と、明るい元気のある色ですよね。

BAKUI  “音楽に対する思いが一番デカくなると、こうなるのかな”と思います。音楽が蘇らせてくれる、怒り、悲しみ、楽しみ、喜び、色で表したくてこうなりました。このキャラクターの衣装に付いているお札が、感情を表しています。

―オレンジがメインカラーになっているのはどうしてでしたか?

BAKUI オレンジには楽しみや喜びのイメージがあって、音楽家に喜びが宿っているって思うのでこういう形にしました。

―BAKUIさんは頭巾を被ったキャラクターをよく描いていますね。このキャラクターのスタイルはいつから始めましたか?

BAKUI 中学生のころから描いています。きっかけが『星のカービィ』のマルクっていうキャラクターが好きだったんですけど、二次創作で帽子が外されてしまっている絵があって、それを見たときショックで変な感覚に陥ったんですよね。“帽子をかぶってるキャラクターは、帽子を外すんだな”と思うと、かなり悲しくて。

―あるべきものを取られてしまってショックな感覚があったのかもしれないですね。

BAKUI なんかもう、ずっと悲しいって考えていたんですよ。その中であるとき、じゃあ帽子が頭から生えてるってことにしてキャラクターを考えちゃえばいいんだって思って。それで、被り物をしている人を描くようになりました。そういう生き物として生きてほしいなと。

―BAKUIさんの描くウィンプルをかぶった人のキャラがそういったショック体験から発想されたとは……ちなみに今後、興味があって描いてみたいことは何ですか?

BAKUI インスト曲のMVのために描いてみたいなっていうのは思います。インストでストーリー重視のMVを作ってみたいんです。歌詞がないところに私が感じた物語であったりとか、依頼してくださった方のストーリーでもいいですし。そういう“物語を描いてみたいな”って思いますね。

あとは、もっと大作を作ってみたり、あんまり自分で表現したことがない分野で3Dを使ったりとか。技術的な面でも色んな挑戦をしたいです。まだ、ちゃんと形にはなってないんですけど……。

―セリフがあるアニメとかも作りたい?

BAKUI 自分のキャラでも、やりたいですね。曲とセリフを合わせて、漫画調みたいなアニメーションをやりたいなと思ってます。頑張ってやってみますね。

BAKUI「おといろびとのしらべ」販売情報

■『#音の絵師』オリジナルTシャツ販売サイト:https://t-od.jp/collections/otonoeshi

■BAKUI「おといろびとのしらべ」Tシャツ販売サイトhttps://t-od.jp/products/bakui-ts-001

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