写真/文:plug+編集部
2023年4月8日、リットーミュージックにて『plug+ ボカロPから学ぶ「ボカロ曲の作り方」ワークショップ』が開催された。当日は、ボカロPのモナカファクトリーさんを講師に迎え、手を動かして音楽ソフト(DAW)+ボカロ(初音ミク)音源で曲作りを行うハンズオン形式で実施された。本レポートでは、その様子をレポートしていく。
【2023/4/8開催】plug+ ボカロPから学ぶ「ボカロ曲の作り方」ワークショップ
ボカロ曲をつくりたい!作り始めたけど、分からないことが多い…そんなボカロ曲の制作初心者に向け、「初音ミク V4X」の操作を例に、ハンズオンで学ぶことができるワークショップです(詳しくはプログラムの項目参照)。導入、声調、楽曲アレンジまで、それぞれのステップにそったプログラムを用意。3つのステップを通し、ボカロ曲作りの基礎を学んでいきます。
ボーカロイドの曲を作るために知っておきたいこと
午前10時、会場に参加者が集まり、ワークがスタートした。午前と午後の二部に分かれ、計4時間のプログラムが組まれている。
壇上に登場したモナカファクトリーさん(以下、モナカさん)からワークショップのテーマが発表された。
ボカロオリジナル曲をつくる!!!
全体像のコツをつかもう!
音楽は短い単位の繰り返しでできています。
だから最初は短いフレーズでOK!
4小節できれば8小節、8小節できれば16小節へと
だんだん長くしていくことができます。
内容は「初心者〜中級者」にレベル設定されていた。実際の参加者は、「初めてDAWで作曲する人」から、「ボカロ曲を作っているがステップアップのため参加した人」など、スキルには幅がある状況だった。しかし、自身のレベルによって楽しむ余白が組み込まれたプログラムであるため、「まずはここをクリア」「やれる人はここまで!」とワークは柔軟なものになっていた。
午前のトピックは以下のような流れ。講義と実習を繰り返します。
<前半のプログラム>
・1-1 人間とボカロの違い
>>楽譜は人間の歌声を簡略化している / 課題曲で実践
・1-2 ボカロの調声法を学ぶ(DAW画面)
>>歌詞を入力する / 音符を分割してピッチ調節
・1-3 ボカロエディタ vs エフェクター(DAW画面)
>>ボカロのパラメーターとリバーブ
・1-4 ボカロっぽく聞かせるテクニック(DAW画面)
>>AutoTune
印象に残ったのが、「人間の歌」と「楽譜で表現されている音」の違いについての講義。ボカロ曲を作る時に、この違いを理解することが重要だと、モナカさんは強調します。ワークでは、実際に課題曲を譜面通りに打ち込んでみて、それをボカロで歌わせてみる課題に取り組みます。
次に、歌として自然(または狙い通り)に聴かせるための調声のやり方を学びました。音の先頭を分割して少し音を下げるやり方、ボカロエディターにある声を強調する、質感を変えるなど、パラメーターを自由に設定して、たった2小節の短いフレーズですが調声作業にトライしていきます。
さらに、エフェクターでリバーブをかけて仕上がりを変えたり、参加者の中にははじめてボカロを歌わせた方もいたようで、まずは自身が打ち込んだフレーズを歌っていることが驚きの様子でした。
こうして、ボカロに着目した前半が終了しました。
テーマと歌詞決め。メロディとコード作りのルールに従い曲作り
午後は、「曲づくり=作曲」の楽しさを味わうセッションでした。トピックは以下。
<後半のプログラム>
・2-1 曲テーマと作詞の手法
・2-2 メロディーの作り方
・2-3 コード進行とアレンジ
・2-4 音色選びとアレンジ
曲のテーマは、モナカさんのオススメでは「ある程度どんな狙いにしたいのか?を想定してみる」とのこと。そこで、本ワークでは、下の図のようにあらかじめいろいろな聞き手の気持ちを一覧したシートを眺めながら、「自分だったらどんな曲を作ろうか?」と考えるやり方を採用しました。
続いて、テーマに関連して作詞づくりにチャレンジ。こちらに関しては、サンプル素材のフレーズ26音(7音+6音 を2回くりかえし )をどのような単語で埋めるか?を考えていきます。自由に発想するのが苦手な場合、「フレーズカード」(下図)のあらかじめ決まった文字数と単語をヒントに単語探しをしていきます。
実際に作詞に挑戦するとリラックスして言葉遊びのような感覚で行うことができ、作詞作業は面白いものでした。その後、参加者はいろいろ悩みつつテーマを決め、歌詞を完成させました。
さて、いよいよ、曲づくりに入っていきます。
普段、多くの人に作曲を教えているモナカさんが、もっとも簡単なルールで作曲をするための手法を教示します。今回のワークでは、ボカロの旋律となる<メロディ>を以下のルールで自由に制作します。
<メロディ作りのルール>
・初心者は、「ド・レ・ミ・ソ」の4音だけ使えばOK!
・高い「ド」も含めると5音。高い音ほど盛り上がる場面で使う。
続いて、このメロディを元に<コード>を付けていきますが、こちらもシンプルなルールを採用します。
<サビで使いやすい代表的なコード進行>
①王道進行 4-5-3-6 サビ感
②丸サ進行 4-3-6-1 おしゃれ感
③小室進行 6-4-5-1 クール感
フレーズのボイシング(鳴らし方)を自由にするなどの加工も自由に行います。シンプルで制限があるように思えるものですが、モナカさんいわく、「シンプルな条件でもほぼ無限大に組わせがある。人とかぶることはありません。立派なオリジナル曲」です。とのこと。
ということで、ここからは作詞と作曲を行いオリジナル曲づくりに挑戦! 早速、各々がDAWとにらめっこしながら打ち込みを行います。
なお、モナカさんから、アレンジについても少し言及がありました。音色とリズムの変更についてです。
自分のテーマや好みでソフトシンセの音を変えてみたり、サンプルで8ビートで入っていたリズムを、自分の打ち込みフレーズと好きなドラム音にて鳴らしてアレンジを行います。ここでぐっと雰囲気が変わったり、自分好みのサウンドに仕上げることができます。
1時間ほど、手を動かしたところでワークは終了。最後に完成した曲をみんなで試聴する時間へ。
参加者の曲が完成!みんなで試聴
参加者は歌詞とメロディ、アレンジを施した16小節の曲を披露します。初音ミクの声を変化させたり、かなり個性的な歌詞を書いたり、シンセ・ポップ調に音色をアレンジしたり、コードに一工夫して雰囲気を落ち着かせたり。スタートとなるサンプル曲が、参加者ごとに独自の世界観に広がっていました。
ワークショップの醍醐味は同じ作業をしているようで、参加者ごとに、まったく違うアウトプットが出てくるところ。クリエイティブな部分と言うべき、工夫や積極的な表現を味わえるのは楽しいものでした。
ワーク終了後は、会場に残ったモナカさんを囲んでの雑談なども続き、非常に濃いイベントは終了しました。
WEBメディアであるplug+ですが、リアルな場で読者と話せたり、感想を聞くことができる貴重な機会になりました。
参加者の真剣な姿をみて「集まるきっかけを提供できれば」と、より一層、感じることができました。初心者向けのスタート企画、クリエイターを交えてのトークセッションなど、今後の企画に乞うご期待ください!
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