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基礎から練習

執筆&サンプル制作:アンメルツP
イラスト:夕凪ショウ(メイン画像)/べこ(キャラクター)
動画制作&編集:plug+編集部

本企画はボカロ曲を作るために、知っておきたいことを中心にその魅力や制作の流れをいっきに解説。自身の楽曲制作に取り入れていくヒントを紹介します。解説は、ボカロP歴15年のベテラン、アンメルツP。なるべく多くの読者が実践できる内容を中心に制作方法をご紹介します。

 

ステップ3は、ボカロ曲を3分の楽曲として仕上げていく工程を解説します。また、出来上がった楽曲を発表したり、動画を付けたりするための知識なども紹介し、ボカロPの作業全体も紹介しています。ぜひ、参考に!

 

※本企画では、「ボカロ」という呼称を、音声合成ソフト/制作手法の総称として使用しております。詳しくはステップ1の最終セクションの解説をご覧ください。

「VOCALOID(ボーカロイド)」および「ボカロ」はヤマハ株式会社の登録商標です。

本記事連動 YouTube動画も公開中!
『ボカロ曲の作り方【STEP3:8小節から1曲に仕上げる】編曲/ミックス/マスタリング』

こんにちは、アンメルツPです。

前回のステップ2では、15秒ワンフレーズの曲でいいので、「とにかく1曲仕上げよう」という観点でレクチャーしてきました。試していただけましたでしょうか? この状態でも、TikTokやTwitterにアップするための曲としては成立していますが、ステップ3では次の目標として、「3分前後のフルサイズで曲を作ってみる」に挑戦します!

多くのボカロ曲やJ-POP、いわゆる「歌モノ」のフォーマットですので、ここまでできればボカロPとしての活動も大幅に広がることでしょう!

なお、3分の曲を単に完成させるだけではなく、ステップ3-3では、動画サイトへの公開、その先のボカロPとしての活動も見据えた話をしていきます。ぜひ、参考にしてみてください!

3-1 ボカロ曲作りに重要な「曲の構想」

ステップ1では、単に曲を作るだけではなく、それを発表・宣伝してフィードバックを得て次の活動に繋げること。そして、少しずつボカロPとして他の人に認知されていくことに触れました。ここでは、ボカロP活動のヒントや、その楽しさもお話できればと思います。

まず、ステップ1で紹介した「曲作りのプロセス(工程)」を振り返ってみましょう。

ボカロ曲作りのプロセス(工程)

曲の構想を練る

2作曲する

3作詞する

4編曲(ボカロ調声を含む)する

5ミックスする

6マスタリング(曲全体の音声調整)する

このうち、15秒の曲作りと3分の曲作りで一番異なるのは、「①曲の構造を練る」が非常に重要になることです。

3分の曲は、15秒だけの曲よりも圧倒的に多くの情報量が必要となります。

歌詞の文字数もぐっと増えて500文字ぐらいになり、また、サビだけではなくAメロやBメロといった歌モノとしての展開が必要になってきます。

3-1-1 「曲の構造」の作り方

それでは、曲の構造をどうやって練ればいいのでしょうか?
基本の考え方はこの2つとなります。

構造を考える際のポイント

短いキャッチフレーズで言えるくらいに曲のコンセプトを固める

2決めたコンセプトを「起承転結」へと展開させる

以下で、具体的に1つずつ見ていきましょう。

●ポイント1 短いキャッチフレーズで言えるくらいに曲のコンセプトを固める

コンセプトのイメージは、他の人から「どんな曲ですか?」と聞かれた時に、「〇〇が✕✕した、△△の曲です」と楽曲の売りを5〜10秒ぐらいで簡潔に説明できるのが理想です。そこで、曲のカタチを明確化させます。

例えば、以下のようなものです。

「コロナ禍で耐える私を、遅咲きの八重桜に例えた和風曲」
「ボカロ6人が人間の成長と挑戦を歌い上げる音ゲームのボス曲」 
「子供の頃に描いたスピード・メーターの絵をルーツに今も走り続ける温故知新な曲」

就職活動の自己分析のように、自分について深く掘り下げることが大事です。以下のような問いに自問してみるような行為です。

・自分が心から好きなものは何か?
・最近話題になった時事ネタやツイートに対してどう思ったか?
・他の創作物を、自分ならこうするのに

オススメは普段からメモすること。すると自然と表現したいことが決まってきます。メッセージを直接表現する曲はもちろん、物語の登場人物に語らせるスタイルの曲であっても、その中に自分の体験や考え方を混ぜれば混ぜるほど、ほかの誰でもないオリジナルな曲につながるのです。

最初は自分の得意領域が分からないことが多いので、実際に何曲か作る経験がとても大事です。その過程で他人の感想をもらい、知らなかった自分の良いところに気付くこともよくあります。

●ポイント2 決めたコンセプトを「起承転結」へと展開させる

このコンセプトができたら、起・承・転・結の4構成に広げていきます。

曲の構成を起承転結で分ける

起:登場人物の紹介や、状況を説明する。

承:登場人物がどのように動いて、どのように考えたかを書く。

転:物語を転換させる何かが起こる。

結:物語の結論や一番言いたいことを書く。

例えば今回は、ステップ2で作った曲作りについての曲をフルサイズにすることを考えます。すでに15秒の曲があり、コンセプトはそこから少し広げるだけなので考えやすいです。

コンセプト

「ボカロ曲作り初心者が作曲と出会い、その苦楽に触れる過程を描く楽曲」

それを起承転結に分解していくと、例えば、

起:僕は、初めての曲をこれから作る

承:ガイドブックを見ながら頑張ったが、いくつも壁があった

転:でもボカロは歌わせること自体が楽しいから乗り越えられた!

結:曲作りをみんなにもやってほしい

このような感じになります。

ここまで完成したのであれば、3分の曲に広げられる可能性が見えてきました。曲作りが成功したも同然です。

3-1-2 曲の構成を考える

コンセプトが決まり、その起承転結が描けたところで、いよいよ「曲の構成」について考えていきましょう。おそらく皆さんが多く思い付くのは、
「Aメロがあって、Bメロがあって、サビがある」
という一般的なJ-POPやボカロ曲のものではないでしょうか?

まさしく、この考え方が「起承転結」を表現するための最適なフォーマットなのです。

例えば、曲の一番に起承転結を詰め込むと、以下の構造に表現できます。初心者はまずこのパターンを使うのが安心と言えるでしょう。

【案A】Aメロ2回繰り返し(起承)→Bメロ(転)→サビ(結)
【案B】Aメロ(起)→Bメロ(承)→サビ2回繰り返し(転結)

あるいは、1番と2番で起承転結を全体として表現する方法もあります。

この場合は、2番で言葉を変えて同じように起承転結を表現します。

【案C】 一番Aメロ(起)→一番サビ(結)→2番Aメロ(承)→2番Bメロ(転)→2番サビ(結)

展開が高速化している最近の曲では、このパターンも多く見受けられます。YOASOBI『夜に駆ける』はこのパターンに近いものです(実際はもう少し展開が複雑ですが)。

この構造では、主人公の心理状態・行動を描く「結」が、「承」「転」のストーリーを通じて1番サビとラストのサビで変わっていく“ドラマ性”が魅力となっています。

コンセプトを事前に練り上げていると、歌詞はもちろん、作曲や編曲の方向性、イラストの制作依頼、宣伝の際の文面なども、確信して決められるようになります。

例えば、先ほどの「初心者の曲作り」の例では、
「Aメロは、簡単な伴奏=初心者を表現しよう!」
「Bメロは、ボカロは楽しい=コーラスを重ねてアカペラに!」
のように、音作りの着想にもつながっていきます。

「曲の構想を練るプロセス」に時間を使うと、後の作業が圧倒的に楽になるので、面倒でもきちんと考えることをオススメします。

続きは、次のページ

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