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Text:Mizuki Sikano Photo:Chika Suzuki

早熟なことに11歳から活動を開始し、現在歌ってみた歴10年の歌い手になった超学生。彼の1stメジャー・アルバム『超』には、すりぃやピノキオピー、cosMo@暴⾛PなどのボカロPを筆頭にFAKE TYPE. 、Jazzin’parkなど多数の作曲家が参加し、多様なジャンルの11曲を収録している。

 

連載『超学生のネット発アーティスト・サウンド解剖。』でもうかがい知れる、多才な超学生の飽くなき探究心について深掘りするべく、コンセプトから、ディレクション、ボーカル宅録のこだわりや使用機材まで話を聞いた。

超学生1stアルバム『超』インタビュー

1stアルバム『超』のコンセプト

―『超』は、2020年から現在までにリリースされたシングル9曲に2曲を加えた全11曲のアルバムということで、参加している作曲家の方も多く、多彩な音楽とともに超学生さんの表情の変幻が楽しい作品ですよね。一番最初のオリジナル曲「ルーム No.4」の制作時からこういうムードを想定していましたか?

超学生 そんなことは全くなくて、『超』は1曲1曲やりたい音楽をギュッと集めた結果という感じです。 “メジャーでアルバムを作らないか”とお話をいただいて、リリースしている曲をアルバムとしてまとめることが決まってから、共通するテーマを添えられるといいかなと思って考えたときにやっぱり“多様性”かなと。

―自分のやりたいことを具現化することで浮かび上がってきたテーマが“多様性”ということですね。

超学生 この多様性の意味についてなんですけど、 “お互いを認め合う”とか“個性を否定し合わない”というのが社会でよく使われるニュアンスだと思うんですね。僕の思う“多様性”のニュアンスは、“こんなことしても良いんだよ”みたいな意味が強いんです。

―どんなことをしても良いんでしょうか?

超学生 変な話、僕らの歌ってみた界隈には、ある程度活動のセオリーがあると思うんですよ。それは、“売れやすい”そして“見てもらいやすい”選曲や曲調です。僕も最初にすりぃさんに「ルーム No.4」、syudouさんに「バットオンリーユー」、柊キライさんに「ヒト」という流れでオリジナル曲を制作いただきリリースしてファンの皆さんにご好評いただいたので、このままボカロPの方々とコラボしていけばいいのかなと思ったんですよね。

―確かにボカロ曲を好むリスナーの観点で、今後も続けてほしいコラボではあります。

超学生 でも歌ってみたじゃなくて、オリジナル曲では別にそんなセオリーに倣う必要性はないなと思っていて。自分のやりたいことを集めたカラー・パレットになればいいと思って『超』を作りました。

超学生の発想源と作曲家へのリクエスト

―普段の選曲やボーカル・ミックスからうかがい知れる超学生さんの好きそうな曲調とか、世界観とか、音とか、そういう部分も感じさせつつ、守備範囲の広さが伝わってくるのですが、これは狙って作ったものですか?

超学生 音についてはまずエンジニアさんの協力あってのことだと思っています。普段の歌ってみたと相反して、今回「けものになりたい!」以外のボーカル・ミックスはすべてエンジニアさんにやっていただいています。

―曲調とか世界観の幅広さは、先ほど話に出ていたボカロP以外に『超』に参加している作曲家の方々によるところも大きいですよね。

超学生 例えば「Fake Parade」の作詞/作編曲をしている辻村有記さんや、「インゲル」の作編曲をしている篠崎あやとさん、橘亮祐さんはハードな音楽を作られる偉大な方です。特に「インゲル」については、まず品田遊さんに作詞を頼むことは決まっていて、音楽については“ポップな教育テレビで流れるような曲かと思ったら一変して怖くなる”というリクエストで作家の方々に制作いただいて、コンペで選ばせてもらったんですよ。

―超学生さんから作曲家の方々に、そういった楽曲の構成やサウンドにかかわるディレクションを行うところから、制作がスタートするということですね。

超学生 8割ぐらいは、そうでした。でも「Fake Parade」は“皆を引っ張るような、アニメの主人公っぽい曲を今回いただきたいです”という最低限のリクエストしかしていなかったりします。基本的には辻村有記さんの自由にやっていただきたいという気持ちがあったので、実際にそうお伝えしました。

―当然かもしれないですが、相手に合わせてディレクションの方法なども変えているのですよね。

超学生 例えば、「ルーム No.4」についてはすりぃさんと“物語を作らせてもらえないか”というところを起点に始まって、“インターネット活動者視点のまさに超学生を象徴する曲をいただきたい”というリクエストを出したりしています。楽曲それぞれが持つビッグ・テーマを提示した上で、そこからボカロPの方々が作りやすいように細かい要望を出して、収束に向かわせていきます。

―例えば超学生さんの持ち味でもあるガナリ声などは、怒りとかやさぐれとか明るくない感情のイメージと重なりやすい表現だと思うんです。だからもしそういった歌唱方法を組み込みたいときに、事前に歌の主人公が抱く感情の流れとかを説明して、楽曲のストーリーの全体を打ち合わせるということもあったりしたんじゃないかと思ったのですがどうですか?

超学生 そこまで細かいリアクションなどは伝えていないですね。それは僕が依頼する作曲家やボカロPの方のファンであることが理由だと思っています。あくまで、コラボレーションの感覚なんですよね。変な話、僕が何の要望も出さなくていいとすら思っています。でも、それだと歌ってみたと一緒になっちゃうから。だからオリジナル曲の制作は、“この曲で、ボカロPの方や作曲家の方とコラボする何か重大な意味を生ませるとしたら何だろう?”を追求することなんだと思います。

―その重大な意味を作り手と一緒に考えるってことならば、打ち合わせでは超学生さんがボカロP/作曲家の方々の“どこが好きなのか”や“何が好きなのか”を伝えたりするのでしょうか?

超学生 そうですね。「けものになりたい!」では“モフモフした動物が出てくるアニメが好きです”と伝えて、ピノキオピーさんに作っていただいたり。あと、これはボカロPさんから質問されることが多いんですけど、“過去曲でリファレンスありますか”とか“別に僕の曲じゃなくてもいいんでイメージに近い曲はあるか”みたいな。ボカロPさんにとっては、それが楽みたいなんですよね。だから、「ルーム No.4」を作るとき、すりぃさんには「ビーバーfeat.初音ミク」とか少し雰囲気違いますけど「ジャンキーナイトタウンオーケストラfeat.鏡音レン」のようなシンセ・ブラスの入ったオシャレな曲を提示したりしました。

―そういったエレクトロ・スウィングのような方向性とドープなトラップのサウンド感は勝手に超学生さんの好物なのではないかと思っていました。

超学生 もちろんそれもありますし、何より“その超学生オリジナルを聴いてみたい超学生オタクが居る”という感覚なんですよね。

―客観視して自分のことを見つめているような感覚でしょうか?

超学生 それに近いんですけど、それともちょっと違うんですよね。この感覚は複雑だなと自分でも思います。超学生は僕本人だし。

―『超』は後半にかけて新鮮さが増していく作りになっていると思います。それはファンやリスナーに近い超学生オタクの観点で、面白くなるように作った流れということでしょうか。

超学生 そうですね。「Let’s go」とか「Give it to me」とかですよね。これは超学生オタクが“洋楽とかK-POPを歌っている超学生を聴いてみたい”という興味を持っていたので、やってみることにしました。もちろんやってみたらとても大変だったんですけどね。

―plug+での連載『超学生のネット発アーティスト・サウンド解剖。』の打ち合わせでも“Billboardのチャートにあるサウンドを研究する”といったこと仰ってましたよね。

超学生 そうですね。ちなみに「Let’s go」が洋楽、「Give it to me」がK-POPのイメージなんですけど、「Give it to me」はそういうチャートに入るA面の曲というより、B面にあるようなイメージで曲を作りました。

続きは、次のページ

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