ゼロから学ぶ
基礎から練習
上達のヒント
文：Mizuki Sikano（plug+編集部）
2023年も残り1日！ 今年出会った最高のボカロ名曲に、あらためて想いを馳せる頃合いだろう。そうすると2023年“プロにめっちゃ刺さった”ボカロ曲はどんなものだったのだろう？と気になる人も居るのではないだろうか。
今回は、ボカロP、歌い手、クリエイターとして大活躍している21名に「個人的に魅力を感じたボカロ曲」をアンケート形式で教えてもらったので、ぜひチェックしてみてほしい。
【こちらもチェック！】
2023年 ボカロ人気曲 24選！
-今年聴かれたボカロ曲はなに？編-
2023年を通して聴かれた曲を動画再生数で選んでみました。
目次
2023年プロの心にめっちゃ刺さったボカロ曲は何だった!?
※掲載は五十音順になっています
亜沙
【Profile】ベーシストとして活躍。VOCALOIDやUTAUなどを使い楽曲制作を行うボカロPとしても活動し、ロック、歌謡曲をベースとした音楽性で支持を集めている。和楽器バンドのベース担当でもある。代表曲は「吉原ラメント」。
【亜沙】吉原ラメント-再来盤-【重音テト】 Synthesizer V TETO KASANE ASA YOSHIWARA LAMENT
●特に格好良いと思う曲へのコメント
正直どれも甲乙付けがたく、どれが一番というのは自分的にはないです。 どれも素晴らしい作品です。一応「ゼロトーキング feat.初音ミク」を選びますが、はるまき（ごはん）くんはたまにご飯に行くのでという、そういう理由でチョイスしました（笑）。彼は前から作品を絵、音楽ともに自分で作っていて、それがより洗練されている感じがしてすごいなと思ってます。
●最近のボカロから受けた影響／刺激
自分はちゃんとボカロPらしい活動をしていたのが2012年、2013年くらいなのですが、最近のボカロ曲を聴いてると“2011〜2014年くらいのボカロ曲から影響を受けてるのかな？” と感じる楽曲も多く、楽しく聴かせてもらってます。そういった新しいボカロ曲を聴いていると創作への熱量みたいな物を感じて刺激を受けています。
R Sound Design
【Profile】2015年より活動を開始したボカロPで、医師でもある。クリアなサウンドと都会的で洗練されたアレンジを持ち味に、さまざまなアーティストへ楽曲提供も行う。代表曲は「帝国少女 feat.初音ミク」。
●特に格好良いと思う曲へのコメント
「シティポップファンクラブ」は、僕が好きな2016年ごろからのボカロ・シーン、メジャー・シーンでともに流行ったエレクトロな4つ打ちや、特有のコード進行に加えて飽和感のあるミックスがカッコいいです。そして実はこの曲の作者TakoyakiKZYくんは大学時代の軽音部の後輩で、聴いてるとなんだか僕までうれしくなります。
●最近のボカロから受けた影響／刺激
年々ボカロ曲のクオリティが上がっていると感じていましたが、特に2023年で言えば流行を詰め込んだ曲よりも、音色やリズム、世界観が個性的な曲がジャンル問わず多く再生されるようになったと感じています。僕も楽曲を通して積極的に自分独自の感性を表出できればと思うようになりました。
＋α／あるふぁきゅん。
●特に格好良いと思う曲へのコメント
「voice 音街ウナ」の＜果ての無い道を一人で歩いた＞＜終わりの無い日々を一人で歩いた＞という歌詞が、どちらも正に自分のことだなと共感して胸に響いてます。これらの言葉はいろいろな楽曲で使用されている言葉だと思うのですが、じゃあ何故「voice」でここまでこの言葉が刺さってきたのか。それはサウンドにあると思います。言葉とは裏腹に爽快で元気になる音。そしてどこか切ない音。優しくてパワフルな空間でネガティブ言葉を言ってくれるから、すっと受け入れられるし、共感することで自分一人じゃないんだって気持ちにさせられます。こめだわらさんには感謝しかありません。
●最近のボカロから受けた影響／刺激
上記で挙げた楽曲ではなく、2023年の楽曲からはストレートな言葉遣いやどこか懐かしさを感じるサウンドが増えた気がします。ぴこぴこした楽曲も好きだけど、最近のエモいのも大好きです。エモの中にちゃんと流行も加える一手間や感性は本当に勉強になっていて、たくさんの音楽を聴いてちゃんと吸収しなきゃなーって。勉強熱心にさせられます。
ウ山あまね
【Profile】2019年より活動をスタートしたトラック・メイカー。2022年にリリースしたアルバム『ムームート』が後藤正文の設立した「APPLE VINEGAR -Music Award-2023」にて特別賞を受賞。
『ムームート』
配信リンク：https://809.lnk.to/au_mumuto
[2023年よく聴いた格好良いボカロ曲]
●特に格好良いと思う曲へのコメント
「ファクター」は、短調の格好良さをこれでもかと詰め込んだロックです。シンプルながらも狂乱に満ちたピアノのリフにまず心を奪われました。そこから突入していくAメロのベースとキックも、ちょっと格好良過ぎるんです。Mizoreさんの曲はどれも大好きなのですが、何を聴いても「すごいものを聴いた……」という余韻があります。
●最近のボカロから受けた影響／刺激
お恥ずかしながら2023年のボカロ曲についてしっかり探して聴き込んだのがこの企画の話をいただいてからだったのですが、すでに「2023年12月良い曲プレイリスト」の大半をボカロ曲が占めています。なぜ今までちゃんと掘っていなかったのかと……興奮と嫉妬をぶつける形でこの文章を書いています。影響はこれから受けに受けると思いますが、どう受けるかまだ決めていません。現在のボーカロイド音楽の熱狂に対してどういうアンサーを出せるかは自分にとって大きな課題になりそうです。
神山羊
【Profile】サウンド・クリエイター／シンガー・ソングライター。ボカロP名義である有機酸として活動を開始し、2018年から神山羊名義でも活動中。
●特に格好良いと思う曲へのコメント
「人マニア」のポップスとアートのバランス感覚が素晴らしいと思いました。音楽好きな人も、TikTokなどSNSのユーザーも反応しているのもすごいですね。
●最近のボカロから受けた影響／刺激
最近は歌モノのコード進行の決まりごとやいわゆるボカロらしい楽曲の編曲ルールから飛び出した作品が特に多くリリースされているように思います。そういうところに面白さを感じますし、 自分も音楽家としてより自由な表現をしていこうと思いました。
カンザキイオリ
【Profile】2014年に黒柿名義でボカロPとしてデビューし、2015年にカンザキイオリに改名。ヒット曲「命に嫌われている。」でもよく知られている。
●特に格好良いと思う曲へのコメント
「バラードじゃ物足りないわ」は、夏ごろ、暑さごときに負けたくなくて、これを聴きながら歩いていました。歩きやすい曲だと思います。歩けば分かります。
●最近のボカロから受けた影響／刺激
ロックとか、生音とかが絶対格好良い、の世の中じゃなくなってきたように思っていて、シンセやEDM系を頑張って作ってみたけれど、全然。難しかったです。でも、何か、上モノ系をガチャガチャ遊び始めたかも。もう生音だけが正義、じゃなくなったんですね。
きくお
【Profile】2003年に音楽制作を開始。ゲーム音楽や東方アレンジなどを手掛ける。2022年には、「愛して愛して愛して」がSpotifyにおいて、VOCALOID楽曲再生数世界１位を達成。
リリース情報
『きくおミク6』
[2023年よく聴いた格好良いボカロ曲]
●特に格好良いと思う曲へのコメント
「解読不能なダンスチューン」は明るい作風を諦めなかった世界線のきくお曲、といった感じで個人的に激刺さりし、大好きやら悔しいやら青春の甘みに酸っぱみがあふれてしまいました。フロクロさんと少しお話させていただき、やはりメロディなど古のきくお曲からの影響がある的なことをおっしゃっていただき、ニヤニヤしてしまいました。
●最近のボカロから受けた影響／刺激
完成度が高過ぎます。クオリティの真っ向勝負では天才たちに太刀打ちできないので、やはり個性一発勝負で行かなきゃダメだ、という思いがより一層強まりました。
ケンカイヨシ
【Profile】J-POPアーティストやYouTuber、VSingerなどに多数楽曲提供。花澤香菜、高橋優、リサイタルズ（東海オンエア）、やまもとひかるなどを手掛けている。三度の飯よりサンプリングとピッチシフトが好き。
●特に格好良いと思う曲へのコメント
「ウルトラトレーラー／重音テトSV」は、本気でヤバいです。プログレッシヴでドラマチックなコード進行、歌詞、映像、歌、楽曲のすべてが「意味なんて無くていい、君が自分と出会うためだけに命を疾走させれば、それだけで良いんだ」って言ってる。この曲が演劇のエンディング・テーマだったら絶対号泣。聴いた瞬間に岡本かの子『快走』という小説と、『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の大傑作「友情の翼」を思い出しました。俺もこういう表現ができる表現者になりたいです。
●最近のボカロから受けた影響／刺激
第一次ボカロ・ヒットから15余年。ヒップホップ、ロックにせよ、お茶の間に完全に吸収される期間はそのくらいで「小学生のときからカゲプロ歌ってた」という、ボカロ曲＝Jポップな世代のクリエイターが台頭したことで「一山当てる」みたいな下心とは無縁の、表現したい純度だけを追求した素晴らしい楽曲群が生まれてる。特にボカコレの投稿曲からは「こんなに自分らしくて良いんだ」というスピリッツを学びました。仕事に反映してます。
原口沙輔が解説する「人マニア」×ケンカイヨシ対談インタビュー連載「この楽曲分析、合ってますか？」
作曲家のケンカイヨシが、ネットカルチャーのシーンで活躍するボカロPなど作曲家の楽曲分析をして、さらに「合ってますか？」と本人に答え合わせをする新連載『この楽曲分析、合ってますか？』。
初回は、「人マニア」のヒットで注目を集める原口沙輔が登場。
SAKURAmoti
【Profile】2005年生まれのボカロP。アニメ『うる星やつら』のオープニング曲「アイウエ」を美波と共同作詞／作編曲。
●特に格好良いと思う曲へのコメント
最初に聴いたときの衝撃がとにかくすごかった……特徴的なスピード感あふれるサウンドにラップという新たな魅力が加わっていて、自分の音楽の形を丁寧に模索し続けている味醂さんでないと作れない楽曲だと思います。複雑で激しい音使いでありながらもなぜかすっと聴けちゃうトラック、丁寧に韻を踏んだ綺麗なリリックに違和感のないVOCALOID、SynthesizerVの調声……すべてが最強でカッコいい楽曲です！
●最近のボカロから受けた影響／刺激
最近は個性的な作品が増え、みんなが曲調を真似る「流行りのサウンド」というものが少しずつ無くなってきているような気がします。この一年、そこからとても刺激を受けていて、「これは流行らなそうだな」「こっちのほうがトレンディーだ」みたいな凝り固まった考えをすることなく、以前よりも楽しく曲作りができるようになりました。
sasakure.UK
【Profile】ささくれPとも呼ばれる、ボカロP。2007年ボカロ黎明期より活動を開始し、チップチューン・サウンドとSF的な世界観の曲が持ち味。「＊ハロー、プラネット。」などが代表曲。
●特に格好良いと思う曲へのコメント
ごめんなさい選べませんでした！！！！！！
じんさんいよわさんはこさん最高です！！！！！
●最近のボカロから受けた影響／刺激
無常（情）あふれる世界の中で、何を汲み取って何を生み出すのか。この界隈で作品を創られている方は、建前でなく本当に自分自身の紡ぐ音や言葉に正直で居てくれる方が多くて、僕はそんな歌に救われています。そして今年もたくさん音楽ゲームでみんなの曲プレイさせていただきました！！！！（※ここ一番重要）。忙しない日々の中で僕が癒されている唯一の時間です。みんな素敵な曲をありがとう……。
ササノマリイ
【Profile】ボカロPねこぼーろとして活動をスタート。プロデューサー／シンガーとしてプロセカへの楽曲提供からyama、私立恵比寿中学などへの楽曲提供などを行う。近年はたなか（前職・ぼくのりりっくのぼうよみ）率いる3人組の音楽ユニットDiosの一員としても活動し話題を集める。
[2023年よく聴いた格好良いボカロ曲]
●特に格好良いと思う曲へのコメント
僕は楽曲の中に空間／世界を感じるものが大好きなので、「からっぽへ／カゼヒキ」は一際自分に刺さりました。初めてボーカロイドに出会ったときの感動に似た感情を覚えました。ニューロ・ベースの禍々しさがこの曲の美しさを際立たせてると思います。歌詞も音の置き方も大好きです。
●最近のボカロから受けた影響／刺激
僕はアーティスト曲とボカロ曲を分けて考えることなく楽しませてもらってます。その上で、ボカロの“コミュニティ”で聴いて「これはとんでもなく良いぞ」と感じた作品でさえ「隠れた名曲」状態になっているものがあまりにも多いことが、とんでもなく大きいコミュニティになったんだなぁ……と感じます。“衝動”と音楽への愛情を強く感じる楽曲たちには、背中を叩かれる気持ちで、初心に帰って創作する力になっています。
Shu
【Profile】1996年生まれのボカロP。ボカロPの集まるサークル＝私立ボカロP学園初等部（通称：ボカ学）の代表を務めている。
●特に格好良いと思う曲へのコメント
Sohbanaさんは活動初期からお世話になっている友人です。彼の特徴は、まさに“定型からの逸脱”的編曲／調声の独自性、シュールレアリズム表現とポップスの融合にあると思います。「はなれあうゼロ / 初音ミク」は随所にキャッチーさがありながらも、展開に規則性がなく良い意味で期待を裏切られます。聴けばSohbanaさんとすぐに分かる調声で、「メガベクレル」といった独特の単語でシュールさを演出しているのが面白いです。
●最近のボカロから受けた影響／刺激
実は特定のボカロ曲を参考にして曲を作ることはしないのですが、最近の好きな曲から刺激を受けていることは“定型からの大きな逸脱”です。楽曲において「AメローBメローサビ」のような決まり、またコード進行やキー、ミックスなどに対する固定観念をすべてを排除して制作をすることを意識しています。例えば音割れなどを活用したノイズで表現をしたり、いきなりサビから楽曲を始めたり、特に最近は自由に曲を作るようにしています。
超学生
【Profile】2001年生まれ。ネット・シーンで人気を集めるボーカリスト。YouTubeでのカバー曲総再生数3億9000万回以上、ベネチアン・マスク越しに覗く端正な顔立ちと、それに相反するような“ガナリヴォイス”が持ち味。
[2023年よく聴いた格好良いボカロ曲]
●特に格好良いと思う曲へのコメント
「怪電話 (ft. ROSE & POPY)」は、音のきらびやかさと歌詞の力で一番心揺さぶられたという点で選出させていただきました。r-906さんに限ってはこの楽曲以外でも言えることですが、そもそも「曲の序盤たたみかけて、短い時間で終わり、聴き手を手放さないぞ」みたいな作りになっていないことが（この楽曲においては）すごく格好良いです。主人公の独白を6分弱かけて綴るという曲でありながら、風刺的要素も含まれている鋭さ。今年一番聴きました。
●最近のボカロから受けた影響／刺激
今日のボカロ楽曲においてはAIの登場やサンプル数の増加に伴い合成技術の発展が著しく、作者のイメージする歌い方が如実に表現しやすくなっているのではないかと感じています。従来の僕は、ボカロのある意味無機質で直線的な歌い方から情緒を読み取り消化し、それを自分の歌い方で表現する、ということをしていましたが、最近は本家音源がすでにエモーショナルな歌唱法をしていることが多いため、大変勉強になっています。
なきそ
【Profile】2001年生まれのボカロP。「ド屑」や「お呪い」など女の子のちょっぴり怖い心理とトラップを合わせた独自の音楽性でオリジナル曲から提供曲までさまざまに手掛けている。
●特に格好良いと思う曲へのコメント
「ももいろの鍵 feat.初音ミク」を初めて聴いたとき、とにかく良い曲過ぎて悔しかったです。メロディや歌詞、ピアノ、曲の展開、どこに注目しても理想的な音楽で、自分もこういう曲を作れるようになりたいなと思いました。悔しいです。僕も頑張ります。あと、MVのキャラクターがいよわくんの作品の中で一番好きです。
●最近のボカロから受けた影響／刺激
サウンドに関してはKポップやクラブ・ミュージックから学ぶことが多いですが、作品としては未だに最近のボカロから学ぶことが多いです。また「人マニア」のヒットでまだまだボカロ界隈もどうにかなりそうな希望が持てたので、聴き手の皆さんを信じて活動を続けられそうです。
煮ル果実
【Profile】2018年から活動開始したボカロP。ナナヲアカリやずっと真夜中でいいのに。などの楽曲も手掛け、NILFRUITS名義でライブも行う。9月にはメジャー1stアルバム『FRUITÁGE』をリリース。
●特に格好良いと思う曲へのコメント
全部格好良いのですが、泣く泣く選ぶなら思わずリミックスしてしまったほどに好きな「バカ通信」です。嫌悪を抱いても結局離れられないインターネットの愛憎部分を、難解さを与えず代弁してくれたような気がして、非常に格好良かったです。音もMVも総合的にネットに親和性があるアプローチで遊び心にあふれていて最高でした。のすけさんの作品は、お洒落なコードや高揚感あるメロディ、そこに直接的な罵声や自虐、理性的だったりIQが溶けた感じの歌詞が絶妙な塩梅で混ざっているのが、素晴らしいです。一抹の切なさと愛らしさを感じます。
●最近のボカロから受けた影響／刺激
是さんの「新興宗教」の音色選びのセンスは巧みで、特徴的な調声と絡み合うことでメルヘンと狂気を両立させた点に驚かされました。エイハブさんの「傑作選」ではミニマルなフレーズや痒い所に手が届くように小気味よく鳴るFXなどで、こちらを皮肉った歌詞や演出が匂うのが好きです。最近、よく鋭い比喩のリリックや引き算的な音像の格好良さに触れたことで、自身の元来好きなシンプル目なサウンドに立ち返るきっかけになった気がします。
原口沙輔
【Profile】ボカロP、トラックメイカー、音楽プロデューサー、作編曲家で、以前はSASUKE名義で活動していた。今年2023年重音テトを用いた「人マニア」で注目を集めている。
[2023年よく聴いた格好良いボカロ曲]
●特に格好良いと思う曲へのコメント
「百葉箱 / 初音ミク」は映像も音もクオリティが高くて、誰が見ても良いと思う作品です。手を抜かずに自分のやりたいことをアウトプットできていて、ほかの人が真似できないスタイルになっています。音楽は何か手段を用いて説得力を出すように仕向けることはできるけど、センスで説得させるのは難しい。「百葉箱 / 初音ミク」について言うなれば、センス一本勝負という感じです。
●最近のボカロ曲から受けた影響／刺激
特定の期間中でボーカロイド楽曲が一斉に投稿される”投稿祭”なるイベントも年々増えており、激しく個性を主張したり、盲点を突くアイディアの新譜が毎日のように何百何千曲も聴ける状態に、刺激というか、感化されて。 たくさん研究をするきっかけになっています。
晴いちばん
【Profile】2006年生まれ17歳の高校生ボカロＰ。ほぼすべての楽器を独学でマスターし、DAWも使いこなすマルチクリエイター。映画会社や企業、アーティストからも楽曲依頼を受ける今最も多忙なティーンボカロP。NHK「沼にハマってきいてみた」番組オープニング曲の制作を担当。その他、ゴスペラーズへの楽曲提供、さらにVTuberのアーリオ・オーリオ・ペペロンチーノのデビュー曲も、同じく高校生ボカロPのSAKURAmotiと共作で提供。そんなボカロシーンの未来を担う1人。
フォーリーバンジー / 晴いちばん feat.重音テトSV
●特に格好良いと思う曲へのコメント
「ワレリアナ feat. Mai, ナースロボ_タイプT」は、まず音作りが異次元です。音が気持ち良過ぎて、音楽なのにASMRを聴いているような感覚になります。そんなサウンドに透き通ったボカロたちの声もマッチしています。またコード進行や展開もとても驚くもので、全体を通して非常にクオリティが高いです。作者のていぬさんはXでシンセなどの音作りの動画もアップされているので、ぜひチェックしてみてください。(自分も教わりたい……)
●最近のボカロから受けた影響／刺激
2023年のボカロ曲は、前年に比べてハイパーポップやIDM的文脈のサウンドが格段と増えた上に、評価されていたと感じました。そういった前衛的とも言えるサウンドの曲を聴いて、自分もやってみたいと思うことが多かったように思います。ボカロシーンは日々、面白いサウンドを取り入れて進化しているのでリスナーとしてはもちろん、作り手にとっても非常に刺激になります。
フロクロ
【Profile】千葉県出身のボカロP。テクノ的な硬質なサウンドが持ち味で、オリジナルだけでなく提供曲も手がけている。ボカクラを筆頭に、DJとしても活動。
エモーショナルドットネット／分散型自律ゴーレム りむる(from 電音部)（Emotional Dot Net / Decentralized Autonomous Golem Reml）
●特に格好良いと思う曲へのコメント
マサラダ「ウルトラトレーラー／重音テトSV」は、とにかく熱量とエンタメ精神で4分半爆走する衝撃作で、音楽的な気持ちよさと視覚的な快楽を一挙に畳み掛けてきます。2分程度ですぐ聴ける音楽も多くなった現代で、その倍近い時間を全く飽きさせずに聴かせる構成もさることながら、自分の好きを詰め込んで圧縮したような質感もあり、そのポップさと個性のバランス感覚に痺れます。
●最近のボカロから受けた影響／刺激
私自身が音楽とイラスト、映像をひとりで手掛けるスタイルを取っているというのもあり、同様に視聴覚全体を作品として扱っている作品に強い刺激を受けることが多いです（取り上げた三作はいずれも一人の作者が音楽と映像を手掛ける傑作です）。また誰でも表現ができるようになった現代だからこそ、強い芯を持って自らの表現を信じ抜いて制作している人を見ると一層グッと来る、カッコいいと感じるようになりました。
ほしのディスコ
【Profile】1989年生まれの男性お笑い芸人／歌手。2014年からお笑いコンビ、パーパーとしても活動。2022年には、本名の“星野一成”で歌手デビューを果たす。動画紹介
命に嫌われている/カンザキイオリをほしのディスコ（パーパー）が歌ってみた #85
インタビュー記事（plug+）
ほしのディスコインタビュー
[2023年よく聴いた格好良いボカロ曲]
●特に格好良いと思う曲へのコメント
ボカロを普段あまり聴かない人でも「強風オールバック(feat.歌愛ユキ)」を知っているくらい今年とても話題になった曲だと思います。本当に一度聴いたらすぐ口ずさみたくなるフレーズやリズムで、夜外を歩いていたら酔ったおじさんが＜外出た瞬間終わったわ」＞とささやくように歌っていたのを聴き、この曲のすごさをとても感じました。こんな風に、どの層にも刺さる曲を作ってみたいです。
●最近のボカロから受けた影響／刺激
最近のボカロ曲は本当に人間が歌うには難しい曲が多いのですが、歌い手の方もものすごくレベルが高く、軽やかにボカロ曲を歌った動画をアップしていて、年齢を確認したらまだ中学生とか高校生だったり。それを見る度に打ちのめされて、もう一度中学時代に戻りたいと思いながら歌の練習に励んでいます。
みきとP
【Profile】2010年3月よりネット・ミュージック・シーンにて活動を開始。 スマッシュ・ヒット曲「ロキ」や「少女レイ」などのボカロ曲を生み出し、アニメの主題歌やミュージカル、アーティストへの楽曲提供も数多く手掛ける。動画紹介
みきとP『 E S P R 』MV
[2023年よく聴いた格好良いボカロ曲]
●特に格好良いと思う曲へのコメント
良い曲、格好良い楽曲を聴いたときにはクリエイター心が騒ぎ、創作意欲が湧くものです。「ちっちゃな私／重音テトSV」もまさしくそうでした。“あぁこういう曲作りたいな”とか、“自分ならこうアレンジしてみたい”とか思いました。芯となるキックとスネアを取り巻く騒がしいバック・トラックもカッコいいですし、いわゆる“サビ感”もしっかりあって導入部分からの期待を裏切りません。特に、Dパートの歌詞の掛け合いは秀逸ですね。愛すべき日本語の世界。
●最近のボカロから受けた影響／刺激
直接影響を受けるということはなかったですが、DTMのTips情報もあふれ返っている昨今、みんな音も格好良いし、何より芸が細かいですよね。自分ももう少しこねくり回してやろうかな、なんて思ったりはしました。ただ、ギミック的なお楽しみは、あくまで要素に過ぎず本質はまた別かなと思うところもあり、そういったことの再確認ができたような気がします。
宮本 佳林
【Profile】1998年生まれのシンガー。2008年からハロー!プロジェクトに加入し、その後Juice=Juiceのメンバーとして活動。中学時代よりボカロ曲を愛聴している。
[2023年よく聴いた格好良いボカロ曲]
●特に格好良いと思う曲へのコメント
「ラビットホール feat. 初音ミク」です！ DECO*27さんの曲は聴けば聴くほど好きになっていくのが本当にすごいです。「ラビットホール feat. 初音ミク」の歌詞では、女の子のめんどくさいところをめっちゃ格好良い韻を踏みながらポップに伝えてくるところが本当にすごすぎて。ダブル・ミーニングの歌詞も多いのがDECO*27さん楽曲の素敵なところで、この曲にもそれが詰まっています。格好良くて大好きです！
●最近のボカロから受けた影響／刺激
“格好良い”とはまた違う感じなのでベスト3に入れられなかったのですが「強風オールバック」（ゆこぴ）や「サカバンバンピス」（やかもち）など、ネタ系の曲もすごく充実していた2023年で、あらためて“音楽って楽しむものだよな”と思い出しました！ ボカロを聴いて初心に帰ってパフォーマンスすることができたし、ボカロのおかげでこれからもパフォーマンスを楽しめそうです！
【こちらもチェック！】
2023年 ボカロ人気曲 24選！
-今年聴かれたボカロ曲はなに？編-
2023年を通して聴かれた曲を動画再生数で選んでみました。
この記事をシェアする
一緒に読みたい記事
-
-
-
#基礎から練習
ボカロ曲の作り方①【ボカロの歴史／ボカロPの作業／基礎知識】
注目記事
-
#基礎から練習
やまもとひかる 爆誕!! スラップ・ベースっ子講座
-
#ゼロから学ぶ
きつねASMRと学ぶASMRの始め方
-
#上達のヒント
超学生のネット発アーティスト・サウンド解剖。
-
#ゼロから学ぶ
マンガで楽理を学ぶ！「音楽の公式」
-
#基礎から練習
ボカロPに学ぶ。ボカロ曲の作り方
-
#上達のヒント
宮川麿のDTMお悩み相談室
-
#ゼロから学ぶ
初心者の頼れる味方！ はじめての楽器屋さん
