執筆&サンプル制作:アンメルツP
イラスト:夕凪ショウ(メイン画像)/べこ(キャラクター)
動画制作&編集:plug+編集部
本企画はボカロ曲を作るために、知っておきたいことを中心にその魅力や制作の流れをいっきに解説。自身の楽曲制作に取り入れていくヒントを紹介します。解説は、ボカロP歴15年のベテラン、アンメルツP。なるべく多くの読者が実践できる内容を中心に制作方法をご紹介します。
ステップ2は、ボカロ曲の作り方【STEP2:ボカロに歌わせる/作詞の方法/曲に仕上げる】として、「まずボカロを歌わせてみよう!」という観点でレクチャーを進めます。ここからいよいよボカロ・エディターをDAWに立ち上げ、「曲を歌わせていく作業」を基本的な流れにて説明していきます。
ぜひ、はじめの一歩を踏み出してみましょう。
※本企画では、「ボカロ」という呼称を、音声合成ソフト/制作手法の総称として使用しております。詳しくはステップ1の最終セクションの解説をご覧ください。
「VOCALOID(ボーカロイド)」および「ボカロ」はヤマハ株式会社の登録商標です。
本記事連動 YouTube動画を公開中!
『ボカロ曲の作り方【STEP2:ボカロを歌わせる!】
〜作曲・作詞編 by アンメルツP』
『ボカロ曲の作り方【STEP2:ボカロを歌わせる!】
〜作詞・ボカロ調声・編曲 編 by アンメルツP』
こんにちは、アンメルツPです。
今回からステップ2として、「まずボカロを歌わせてみよう!」という観点でレクチャーを進めてみます。ステップ1では「ボカロを歌わせる環境整備」のお話をしました。ここからいよいよボカロエディターをDAWに立ち上げ、「曲を歌わせていく作業」を基本的な流れにて説明していきます。併せて、作業を解説した動画もあるので、参考にしてみてください!
今回のゴールは、「気張らず、曲作りの技術は置いて、とにかく歌わせてみること」です。ゼロから最初の成功である”ボカロに歌ってもらうこと”の楽しい感覚を味わってもらえるとうれしいです。
なお、曲作りのテクニックは突き詰めればトピックがいろいろ出てきます。しかし、皆さんがボカロを歌わせることに成功さえすれば、後は自由に調べ始めると予想しています。本ステップを真似しただけでは何か物足りない感覚があれば、まさに大成功だと考えています!
なお、ステップ1では、ボカロPの作業や基礎知識をざっと説明しています。未読の人はステップ1を読んでステップ2に進むとより理解が深まります。
目次
2-1 ボカロ・アプリをダウンロードしてみよう!
ボカロ・アプリを購入、もしくは、初音ミクV4Xなど体験版をダウンロードして準備します(DAWはステップ1で紹介したように各種環境を整える)。
そして、最初に思うことが「ボカロに何を歌わせればいいんだろう??」でしょう。
そこで、最初は好きな曲を歌わせるのがオススメです。何もアイデアがないところから、いきなりオリジナル曲を歌わせるのはかなりハードルが高いからです。自分の知っている曲のカバーでボカロを歌わせることが最初の一歩になってほしいと考えています。
では?具体的にどこからカバー元の音源を手に入れるのか?
ボカロ曲の場合はカラオケ音源が公開されており、誰でも利用できる場合が多いです。早速、カバーしたい曲(=動画)をニコニコ動画で探してみてください。
動画の概要欄で作者本人がカラオケ・ファイルをご厚意で公開している場合が多いです。このオケをネットからダウンロードして利用します。これで、だいぶ気が楽になったかと思います。
しかし、この方法では、ボカロの声となる歌のメロディ(歌メロ)をオケから耳コピして打ち込む必要があります。うーん、なかなかハードルが高いと思った人も多いのではないでしょうか?
しかしご安心ください。ボカロを歌わせるための調声ファイル(※ボカロ設定とメロディのMIDI情報が一緒になったもの)が公開されていることもあります。
このファイルを探してみましょう。多くの場合、作曲者であるボカロPが公開していることは少なく、曲をカバーした、通称”カバー職人”が公開していることが多いです。
この調声ファイルは、VOCALOIDの場合は拡張子「.vsqx」や「.vpr」が付いています。「VSQX 配布」でGoogle検索すると、ニコニコ動画やpiaproなどでファイルを公開しているボカロユーザーを探すことができます。その配布ファイルをダウンロードしてボカロ・エディターに読み込ませると、簡単に歌わせることができるわけです。
2-1-1 ボカロ用制作環境にデータを取り込んで歌わせる方法
ステップ1-3で紹介したように、ボカロ・エディターは単体で動作するアプリと、必ず別途、作曲ソフト/DAWが必要になるものがあります。
単体アプリでは、VOCALOID6エディター、CeVIO AIソングエディターがよく知られています。調声ファイルだけでなくオケの音声ファイルも読み込めるため、ダウンロードしたカバー曲を鳴らすだけなら、アプリ単体で完結もできます(※編曲したり、ミックス・マスタリングしたりする作業をDAWで行います)。
別途、DAWソフトが必要なのが、「初音ミクV4X」購入時についてくるPiapro Studioなどです。Piapro Studioは、声を担当する楽器のように扱います。つまり、カラオケ・ファイルを作曲ソフトに読み込ませた上で、楽器の1つとしてPiapro Studioを立ち上げ調声ファイルを読み込ませます。
お手持ちの作曲ソフトによって具体的な読み込みやトラックの立ち上げ方法などは異なります。別途お手持ちの作曲ソフトのマニュアルやネット記事を探しみてください。
【参考WEB記事】
無料の「Cakewalk」と「初音ミクV4X体験版」でミクさんを歌わせるまでの全手順 | G.C.M Records
2-1-2 既存のボカロ曲以外で音源を探す方法
カバーしたい曲がボカロ曲以外のJ-POPなどの場合、楽曲のMIDIファイルを探すのもオススメです。たとえば、YAHAMAが運営しているサービス「ぷりんと楽譜」では、J-POPはもちろん、一部のボカロ曲のMIDIデータも販売されています。
MIDIファイルとは、楽曲の演奏情報が記録されたファイルです。作曲ソフトで読み込むと、楽曲のオケを構成する楽器の演奏情報が取り込まれます。
ただ、実際に鳴る音は作曲ソフトの中に入っている音源に置き換えられるので、思った通りの演奏にはなりません。そこで、各トラックに適切な楽器を選び直すことで、原曲やイメージした演奏に近い雰囲気のオケを再現できます。また、編曲をするにも非常に学べる教材です。
カバー曲でボカロに歌わせるのは、「ボーカル」ですので、ボーカルのフレーズを奏でているトラックを選び(トラック1やトラック2に入っていることが多いです)それ以外を削除したMIDIファイルを別名で保存した後に、Piapro Studioなどのボカロ・エディターに取り込むとボカロが歌ってくれるようになります。
場合によっては極端に高い声や低い声になることもあるので、その場合はノート(音符)全体を選択して、1オクターブ(「ド」からひとつ上下の「ド」)低く or 高くして試し聴きしてください。
2-1-3 歌わせたら、ボカロの声を調整してみる
無事にボカロを歌わせることができたら、ボカロのカスタマイズにも挑戦してみましょう。
今回はカバーなので、入力された音符を動かしたりしないで、歌詞の変更してみます。1番サビの歌詞を2番に差し替えたり、フレーズの所々を替え歌にするなどしてみてください。ボカロがその通りに歌ってくれるのでとても楽しいと思います。あるいは、作曲ソフトやエディターでテンポを変えてみたりして、歌い方がどのように変化するかを確かめてみてください。
ボカロ・エディターには、さまざまなパラメーターがあります。最初は適当で構わないので、いろんなパラメーターを操作して歌い方が変わることを観察してみましょう。このように適当にいじってみると思ってもいない面白い表現に出会うこともあります。
ちなみに、分かりやすいパラメーター(=変化できる設定の値)ですと、初音ミクV4Xには「ジェンダーファクター」(GEN)があります(下図)。これを上げたり下げたりすることで、声が一気に男性的な声や子どもっぽい声に変わります。CeVIO AIにも同様の効果となる「声質」のパラメーターが用意されています。お手持ちのアプリでも「声質を変える」パラメーターを触って楽しんでみてください。
個人によって好みとなるパラメーターの設定値はバラバラです。自分の好みに合わせて細かく変えていきましょう。
この細かいパラメーター調整(調声)が面白いところで、同じボカロを使っていても、最終的な声の出力は各ボカロPによって本当に変わってきます。
これが「我が家のボカロ」「うちの子」的な個性となって曲に現れてゆくのです。
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