執筆&サンプル制作:アンメルツP
イラスト:夕凪ショウ(メイン画像)/べこ(キャラクター)
動画制作&編集:plug+編集部
目次
2-3 ボカロ曲の作詞や簡単な編曲
このセクションでは、前回の作曲に引き続き、作詞とボカロ調声、簡単な編曲を通じて曲を完成させます。前回の続き、15秒の曲を完成させることを目標に話を進めていきましょう。
現段階で、作曲=コードとメロディは完成しており、ボカロが「ららら」で歌うところまで作りました。ここからは歌詞を作っていきます。
2-3-1ボカロ曲の作詞
作詞は、「特別な才能がある人しかできない」と考えている人も多そうですが、実はそんなことはまったくありません。基本的に「なにかを言葉に書くこと」ができれば作詞はできます。作曲と同様に、作詞にも「作るための技法」が存在するのです。
それでは私がやっている作詞の手法を順番に紹介していきたいと思います。
まずは歌詞の文字数をはっきりさせることから始めます。
方法は、ボカロが「ららら」で歌っているDAW画面を再生し、メモ帳のアプリを開き、歌っている文字数をフレーズごとに記録していきます。例えば、この曲の場合「4/54/8 54/10」のようにメモします。4文字、次は5文字&4文字、次は8文字…という具合です。このとき、歌詞を仮に「いにさしごろなは…」と口ずさむと文字数がとても分かりやすいです。※動画で作業の様子をぜひご確認ください。
こうして、メモ帳に、作詞するための文字数が完成しました。ここで保存しておくことも忘れずに。
続いて、歌詞でどんなことを言いたいか「テーマ」を決めます。
難しいと思った人、ここも一言だけ決めればOKです。簡単です。
今回はボカロ作曲講座の曲をテーマにします。私がいつも感じている「ボカロ曲作りをみんなにもやってほしいなあ」という思いをそのまま書くことにします。
そうしたら、曲を繰り返し聴きながら、とにかく思いついた言葉を洗いざらいメモに書き出します。要するに一人ブレイン・ストーミングです。メロディ作りと同じく、私のやっている手法をいくつか、まとめると…
歌詞づくりの発想手法
1テーマに関係ありそうなこと
2一見関係なさそうなこと
3ひとつ前の言葉から連想すること
4ひとつ前の言葉から連想すること
5曲を聞いてとっさに当てはめたいと思ったフレーズ
などなど、なんでもいいから数を出します。ブレストなので類似や重複は気にせずどんどん書きます。
このようにしてある程度の数(15秒の曲なら20個くらいが目安)を出したら、さきほど記録した文字数にあてはまる言葉をこの中から探したり組み合わせて埋めていきます。これだけで比較的簡単に歌詞ができるのです。
もし、1文字足りないとか余っているけど入れたい場合、以下の解決策を考えます。
字余り、字足らずした場合の歌詞づくりの発想手法
1言い換えをする。ネットの「類語辞典」を活用
2「に」や「は」などの助詞、「ふと」などの汎用フレーズを足したり抜いたりする。
3メロディのほうを分割したり統合できないか考える。
この結果、以下のような歌詞が無事に完成しました。
4
5
4
8
5+4
10
みんなも
思い出や
ツイート
歌わせてみせて
最初のチャレンジは
意外と簡単だよ
できた歌詞をさっそくボカロに流し込んでみましょう。すると、念願の自分で作詞したフレーズを歌ってくれました。
【TIPS】
初音ミクV4Xでは、歌詞を流し込む際に注意すべき点があります。この曲ですと「最初のチャレンジは」の場所ですが、ここでは日本語として発音が変わるため「は」ではなく「わ」と打ち込んであげましょう。「どこどこへ行く」の「へ」も「え」と打ちます。
歌詞のブレストで詰まったら、あえて「しりとり」などで全く関係ない言葉をつなげると、自分の中での発想のリミッターを解除できます!
2-3-2ボカロで歌わせて声の調整をしていく
ボカロ用メロディのフレーズデータを調整する
リピートして再生しながら不自然だと思ったら調整していきます。フレーズ部分の音符は、16分などの細かい単位で長くしたり短くしたりして、いい感じに聴こえるように長さを変えてみしましょう。ボカロの声自体を変える「調声」作業の前に、フレーズの入力データをうまく調整することが大事な作業です。
ボカロ音源のパラメーターを調整する
続いて、ボカロ音源のパラメーターを変えて調整していきます。うまく操作すれば劇的に声を変えることができます。ここでは初音ミクV4Xを例に重要度が高いものを紹介します。それぞれのエディターでも同じようなパラメーターがあると思いますので、参考にしてしてみてください。
多くのボカロ音源では、声質・音量・音の高さ、それぞれに作用するパラメーターがあります。それぞれが何を変えるかを意識して作業しましょう
ボカロの歌い方(ブライトネス)
まず「BRI」(Brightness、ブライトネス)パラメーターがあります。こちらは基本的にデフォルトよりも上げると力強く歌ってくれるようになります。デフォルトではわりと淡白な歌い方をするボカロも多いので、多くの曲でこのパラメーターを上げています。
ボカロの音量(ダイナミクス)
次に「DYN」(Dynamics、ダイナミクス)で、これは声量(音量)を細かく上下させることができます。特にフレーズの最初にカーブを書くように強調すると、これだけでかなりハキハキした印象に変わります。
ボカロの細かな音程(ピッチベンド)
細かい歌い方を変えるには、PIT(Pitch Bend、ピッチベンド)が一番です。これは、ドからド#と言った音符単位よりもずっと細かく音程を上下できます。歌い始めにカーブを描くと、しゃくりあげるような歌い方ができるようになります。
ピッチベンドと一緒にPBS(Pitch Bend Sensitivity、ピッチベンド・センシティビティ)も使うことがあります。こちらは数字を大きくすることでピッチベンドがより大きく上下するようになります。これを応用すると、しゃべらせたりラップさせることも可能です。
こうしてボカロの歌わせ方を、自分の理想とするものに近づけていきます。
2-3-3 オケの編曲
同時に余裕があれば簡単な編曲もしてみましょう。バック・トラックにドラムとベースの音を加えてみます。これでオケがぐっと曲のようになります。
音楽ジャンルによって使う楽器はさまざまですが、ドラムやベースは多くのジャンルで使います。この機会に打ち込み方を身につけておきましょう。
ドラムの打ち込み
手持ちの作曲ソフトから、良さそうなドラムやベースの音を探してみましょう。Cakewalkの場合は専用音源「SI-Drum Kit」と「SI-Bass Guitar」が用意されています。
ドラムは、「四つ打ち」と呼ばれる基本的なパターンで打ち込みます。
「ドッドッドッ」バス・ドラムの音を4分音符の間隔で。
「ツーツーツー」ハイハットの音を4分音符、バスドラムが鳴っていない裏拍に。
「タン」スネアの音を2拍目と4拍目に置きます。
これだけで踊れそうな感じのドラム・パートができました。
さらに、4小節目の終わりに、変化をつけてアレンジします。一般にフィルやブレイクなどと呼ばれます。
ベースの打ち込み
ベース・ラインはコードを構成する音のうち一番下の音、いわゆる「ルート音」を8分音符の間隔で打ち込んでいくのが簡単です。音は小さいベースですが、曲の底をどっしりと支える重要なパートとなります。
これで、ピアノとボーカルだけのバージョンよりもだいぶ完成度が上がりました。
この状態で曲をリピートしながら、各楽器のボリュームを聴きやすいように微調整しましょう。これがごく簡単なミックス作業となります。
このようにして無事15秒の曲が完成しました。いかがでしたでしょうか? ”作るだけなら意外と簡単”という印象を持った人も多いのではないでしょうか。
次回、ステップ3ではさらに、3分フルサイズのボカロ曲作りに挑戦していくことになります。引き続きどうぞよろしくお願いします。
「ボカロPに学ぶ。ボカロ曲の作り方」記事一覧
-
#基礎から練習
ボカロ曲の作り方①【ボカロの歴史/ボカロPの作業/基礎知識】
一緒に読みたい記事
-
#基礎から練習
できる ゼロからはじめる作曲 超入門
注目記事
-
#基礎から練習
やまもとひかる 爆誕!! スラップ・ベースっ子講座
-
#ゼロから学ぶ
きつねASMRと学ぶASMRの始め方
-
#上達のヒント
超学生のネット発アーティスト・サウンド解剖。
-
#ゼロから学ぶ
マンガで楽理を学ぶ!「音楽の公式」
-
#基礎から練習
ボカロPに学ぶ。ボカロ曲の作り方
-
#上達のヒント
宮川麿のDTMお悩み相談室
-
#ゼロから学ぶ
初心者の頼れる味方! はじめての楽器屋さん