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取材&テキスト:plug+編集部

 

この夏、音楽ユニットArika(アリカ)が始動した。声優として活動し実績を重ねる、夏吉ゆうこさん。ギタリスト・作曲家としてさまざまなプロダクションを行う、大和(やまと)さん。それぞれのバックグラウンドを持つ二人がアーティスト表現として音楽作品を作るユニットがArikaだ。そのプロジェクトを指揮する、プロデューサーであるタノウエマモルさん(ハートカンパニー所属)を加え、三者が紡ぎ出すArikaの活動を追っていき、plug+でお伝えしていこう。初回は、タノウエさんにプロジェクトの発端やビジョンを、インタビューした。

 

さらに、Arikaのメンバーが「プロダクション・ノート」を通してリアルタイムに伝える連載もplug+上で開始することに。初回は、Arikaの二人から動画メッセージとコメントが届いたので紹介していこう。

 

先日、まさにMV『暁光』を通し登場したArikaですが、お二人がユニットとして出会った経緯を教えてください。

タノウエ Arikaは前々からやってみたかった私個人のアイデアと、メンバーとの出会いが形になったもので、私としてはプロデューサーという肩書きで初めて手掛けるユニットですね。夏吉さんとは、アニメ『アサルトリリィ』の音楽制作で関わったことがあり、以前から「歌が魅力的だな」と感じていました。夏吉さんは当時、声優としての歌手活動が主だったこともあり、Arikaを、夏吉さんとしての表現のホームグラウンドになるようなプロジェクトにしていきたいという提案をさせていただきました。

大和は、ハートカンパニー所属の音楽作家という立場であり、さまざまな現場を一緒している経験がありました。アニメ関連の楽曲を手掛ける場合、おのずと楽曲に求められるテイストや世界観が決まってきている状況があって。それに対をなす部分というか、大和のアーティストとしての表現が魅力的なことも知っていたので、普段のお仕事以外で楽曲を出していけないかと常々考えていたんです。そんな中、とある現場終わりに、(後にArikaのエンジニアを担当していただいた)Redefineの新垣安奈さんを交え、「こういう音楽を作っていけたら楽しいよね」といった感じで3人で意気投合したことがきっかけで、本格的に何か新しいことをできないかな?と考えるようになりました。

私自身も元々バンドマン、作家でもあったので、音楽的にストイックなプロジェクトを自分で手掛けたいという願望がずっと頭にあり、「夏吉さんと大和が組んだら、すごい表現ができるかも」とアイデアが見えてきたところで、各方面に声をかけ、プロジェクトの道筋を調整していきました。

Arikaプロジェクトを手掛けるプロデューサー タノウエマモルさん

●メンバーが決まり作品を作るとなると、方法、形態、進め方など考えることになると思います。今冬リリース予定のEPはどんな発想から生まれたのでしょう?

タノウエ フルアルバムでという選択肢もあったのですが、それだと正直予算や制作のカロリーが高いなと感じていまして。同時に、インスタントにコンテンツが消費される世の中で、10曲で1つの世界観を作るよりはもっとコンパクトに、キャッチーに考えるのが最適だろうと考えました。

その上で、シングルでA面/B面では少し物足りない…だとしたら、Arikaという共通点を持ちつつ、違うカラーや世界観も提示できる4曲で表現することが最適だなと考えました。

●現在だと音源配信や動画サービス、SNSのようなメディアなど「打ち出し方の戦略」を自由に設計できますよね。

タノウエ はい。広がり方を想像して、さまざまな形で発信していく楽しみはありますね。例えば、TikTokのようにサビ頭5秒で掴みを作るみたいな戦略があることも理解しています。ただ、Arikaは私を含めた3人とも共通で「今まで数多くの音楽にふれてきた」「音楽と共に育ってきた」という想い、背景があるので、「音楽が好きな人に反応してほしい・広がってほしい」と純粋に思っています。

年齢や立場によっても価値観がいろいろある中、ターゲットを絞りすぎることで音楽性がいろいろブレていくのも違うと思うんです。まずは「Arikaとしてかっこよい作品」を出すことが音楽ファンにとって一番の魅力になるし、その魅力的なものについてきてくれるだろう、と信じています。そこからファンがArikaを自由に捉えてもらい、広がっていけばいいなと思っています。

●Arikaというユニット名も、いろいろ想像できる響きがありますよね。

タノウエ メンバーの2人と沢山アイデア会議をしながら決めました。「心の拠り所」という風に捉えることもできますし、理系的に説明ができるところもあって。並びで上に来やすいAからはじまる単語にしたい、海外でも通用するような語感にしたいという考えもありました。

●MVやロゴ、アーティストイメージなど、ビジュアルについては、どんなものを形にする意図がありましたか?

タノウエ ビジュアルについては、個人的にも仲が良いfhána(http://fhana.jp/)の佐藤純一さんに全面的にお任せしています。私からは、都会的なイメージに少しだけ毒々しさを感じるような雰囲気にしてほしいとお伝えして、それをもとに形にしてもらいました。

●『暁光』は、醸し出す「深み」に、引き込まれる何かがありますね。曲づくりで考えたことなど聞かせてください。

タノウエ ありがとうございます。私の普段のディレクター業務だと、クライアントの目的・依頼を汲み取る形でディレクションをしながら作品作り上げていくのが基本スタイルですが、Arikaは「二人の表現のホームグランドでありたい」という想いが一番にあるので、まずは二人の持っているものを引き出すことが重要だと考えています。

今回は、リファレンス(参考となる素材や曲)もあえて設定しておらず、おおまかな方向性のみを決めて、「あとはかっこいいものお願いします!」みたいなやり取りをしました。制作を進めていくうちに、夏吉さんと大和のやり取りがスムーズに回り出した感触もあって、最近はそれを見守る立場に徹することが増えてきましたね。

夏吉さんの声は、いい意味で揺らぎや隙間があって、聞き手が入り込める”余白”が魅力です。彼女の持ち味をなるべく活かせるように試行錯誤しながら制作を進めているので、今後、想像もしてないアプローチで曲ができるんじゃないかなと、楽しみです。

●4部作のテーマが、「朝、昼、夕暮れ、夜」と聞きましたが、『暁光』の持つ落ち着いた雰囲気から昼はどうなるんだろう?と楽しみです。

タノウエ 「派手な明るさ」ではないかなと思っていて、おそらく4曲ともその感覚を持っていきそうです。
これまで夏吉さんは、声優=キャラクターとして歌う機会が多かったはずで。Arikaは自分の表現の場として、まずは好きに歌ってくださいと、彼女なりの解釈で好きに表現してもらうことを考えています。彼女は引き出しがたくさんあるシンガーなので、プロジェクトに合わせて「歌い方をオーダーする」というより、楽曲に、お互いが寄り添って表現してもらうスタイルを採っていきたいと考えています。

●普段のボーカル・ディレクションで、こだわりはありますか?

タノウエ 個人的に好きなお仕事なので、語ると長くなりそうです…。(笑) 一番大事なのは、気持ちよく終わってもらうことだと思っています。私の場合、声優さんのボーカル・ディレクションをすることが多いんですね。中には、歌が苦手な方もいたりするんです。その場合、自信を持って安心して歌ってもらう”空気づくり”が一番大切だと考えています。結果そのほうが音楽的にも良い仕上がりになることが多いので。自分のこだわりと、歌としてのこだわり、仕事としての楽しさなど、バランスを取りながら、トークバックを使って采配していきます。

●大和さんのプロダクションで、Arikaだからこそのアプローチみたいなものはありますか?

タノウエ 大和が言っていたのは、普段の制作では使わないような、音作りや表現手法を採用していきたいと。実際に音としてもそれを感じることが多かったですね。私としてはプロデューサー視点で「その音を持って、世の中にどう価値を作っていくのか?」という部分で力を発揮出来ればと思っています。

Arika 1stリリース『暁光』
(Arika 「暁光」Lyric Video)

●『暁光』の唐突な終わり方もリスナーとして「おっ」と惹かれました。引っかかりがあるというか…

タノウエ そのような感想が嬉しいですね。最大公約数的に曲を作るのでなく、良いと信じたものを作る、自分たちの一番かっこいいものを出すスタイルをとることで活動が続いていくのだと信じています。たとえ《大衆的な曲》にならないとしても、ファンの心の中に残りつづける《楽曲の良さ》で勝負していきたいと考えています。

●広がりとしては、既存ファンもたくさんいるお二人なので、ファンが盛り上がって「楽曲を世の中に広めたい!」みたいな流れが生まれそうですね。

タノウエ すでに多くのファンがいることはとてもありがたいことだと思っています。まずはそこから広がっていけば、幸せだなと。インディーズでの活動なので、メジャー・デビューという目標や、タイアップ案件があれば当然うれしいですが、内面的な目標としては、来年以降はライブをどんどんやってみたい気持ちが大きいですね。Arikaの場合、スタジオワークに限らず、人前で表現することの楽しさを知っている二人なので。
今後Arikaが、何かの作品に音楽的な力添えができる場面もあるといいですよね。そんな機会や作品に巡り会えるように、まずは自分たちの作品を素敵に仕上げることをいつも考えています!

Arikaプロジェクトにおけるタノウエさんのビジョンはいかがでしょうか?気になる楽曲はぜひ、MV『暁光』やサブスクリプションサービスで具体的な楽曲プロダクションは、来週から始まるArikaのplug+連載を乞うご期待!

2022年9月23日Plug+WEBサイトにて連載 スタート!

Arikaプロダクション・ノート

Arikaの楽曲制作の過程を、メンバー二人のリアルな声として伝える『Arika プロダクションノート』。制作における、試作や思考も含め、どのようにして楽曲が形になっていくか?をメンバー本人による制作日記でお届けします!開始に伴い、Arikaのお二人から動画メッセージとコメントをいただきました。

Arika 公式ホームページ
https://arika.info/

Arikaのボーカル、夏吉ゆうこです。
普段は声優をやりながら平和に暮らしています。
曲作りの過程を発信させて頂くということで、やったー!という気持ちと、いいのか!?という気持ちです。音楽制作の経験が無かったわたしにも、ありのままのことなら書けるはず!ということで、作詞やボーカルRECの事を私なりの視点で書いていこうと思います!

Arikaコンポーザー/ギタリストの大和です。
新曲の制作過程を、ブログや動画にしてお届けすることになりました。
これから作っていくので、これを書いている今はほぼノープラン!
普段お見せすることがない様な場面も、お見せ出来るかもしれません。どうぞご期待ください。

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