テキスト:宮川麿 イラスト:mucha
DTMに関する初心者向けのお悩みをサウンド・コンポーザーとして活躍する宮川麿さんが、Q&A形式で答えていくコーナー。今後、連載でさまざまなお悩みを解決していきます!第2回はボカロPを目指す小動物から、音楽制作ソフト=DAWに関する質問です。
麿先生、こんにちわ! 僕はボカロPを目指して、これからDTMを始めようと思ってるリス。 なんか、作曲とか音楽制作に使えるソフト(DAW)でおすすめがあれば教えてくれませんか?
こんにちわ。結論から言うと、どのソフトを選んでもOK。どれを使っても打ち込み、録音、ミックスはできます。君のフィーリングで選べばいいよ!
目次
おすすめの音楽制作用ソフトは?
ということで、今回はお薦めのDAWを紹介していこうと思います。昔は、“録音はPro Tools”“打ち込みはAPPLE Logic”というような定説がありましたが、今は時代も変わり、どのソフトでも打ち込み、録音、ミックスといった一連の作業が問題なく完結できるようになっています。自分にフィットしそうなものを選んでください。
……と言いつつも、どこかからともなく
DAWソフトからどんなバイブスを感じたらいいの!? フィーリングだけじゃ選べないんですけど!
なんて声が聞こえてきていますね。細かい話をするとソフトごとに“録音に秀でている”とか“ダンス・ミュージックに特化している”などの特徴がありますので、
■自分が作りたいジャンルは何か
■打ち込みをやりたいのか、録音を中心にやりたいのか
を加味して選ぶといいかもしれません。以下、定番のソフトについて僕が思う簡単な特徴を紹介しますので、自分のやりたい音楽性に合わせて選んでみてくださいね♪
PRESONUS Studio One(読み:プリソーナス スタジオ・ワン)
突然ですが、私はStudio Oneです★難しいことはちょっと苦手な末っ子。直感重視のイージー主義で生きてます★ リス、仲良くしようよ!
素直な感じが良さそうだけど、めっちゃ呼び捨てしてくるな。
すごく良い子だよ!僕はいろんなソフトを触った結果、現在はStudio Oneをメインで愛用してます。僕、説明書が嫌いなんですが、後発のDAWであることもあり操作が簡単。ドラッグ・アンド・ドロップで大体事足りてしまうのが良いです。メニュー項目が少ないので迷子になりづらいのも大きな利点。DAWの画面に目眩がするタイプの方には、特におすすめ!
確かに、説明書はあまり読みたくないから、そもそもシンプルな設計のDAWには魅力を感じるなぁ。
サクサク動くのも魅力。あと、マスタリング専用の機能を搭載しているのは個性だね。そのほか付属の音源も充実していて、価格も安く、Studio One Primeという無料版もあるので、DTM入門者の方々はぜひ試してみてください!
■Studio One 5 Professional日本語版:42,800円前後
■Studio One 5 Professionalクロスグレード日本語版:32,000円前後
■Studio One 5 Artist日本語版:10,600円前後
■Studio One Prime:無償
※いずれもダウンロード版
※オープン・プライス(記載は市場予想価格)
AVID Pro Tools(読み:アビッド プロ・ツールス)
どうも「レコーディング、ミキシングは母の味」こと、Pro Toolsです。デジタル・レコーディングの母……と呼んでね。34年間実直に変わらない堅実なスタイル貫き通しております。
なんか、ちゃんとした方ですね。
録音もガンガンして、プロと同じミキシングと環境でやりたい、という方にはThe業界定番=Pro Toolsが間違いないです。付属のエフェクトのクオリティもプロ仕様で高く、波形編集に関しては他の追を許さないくらい使いやすく、プロが愛用する理由の一つとなっています。
録音に特化したDAWってことなのか?
もともと録音専用ソフトなので、打ち込みに関してはほかのDAWの方がやりやすいといった意見もいただいておりましたが、最近は付属の音源も増やしていて、打ち込み分野にも力を入れておりますよ。
ちなみに、大体のレコーディング・スタジオではPro Toolsが導入されています。そのため、音楽家の中にはミックス・エンジニアと円滑にやり取りするためだけにPro Toolsを使っている人も。自分もその一人です。操作性については業界標準と言えるでしょう。唯一のネックは、年間サブスクリプション方式なので、毎年ソフト代がかかってしまうことです。
■Pro Tools Artist:12,870円
■Pro Tools Studio:38,830円
■Pro Tools Flex:129,800円
※いずれも年間サブスクリプション価格
STEINBERG Cubase(読み:スタインバーグ キューベース)
MIDIもオーディオも任せてください。何でもこなせるので、友達からは「職人だね」とか言われてます。
ちょっとナルシスティックな香りするけど、素直な優等生か。
日本でのシェアが圧倒的に多いDAWです。中田ヤスタカ氏やヒャダイン氏など、人気クリエイターも愛用しています。いわゆる打ち込みを中心に作っていきたい方には、このCubaseと後述のAPPLE Logic Proの愛用者がプロに多いのでおすすめです。Cubaseはユーザーが多いので、ネット上の情報量も多く、困ったときに解決策が調べやすいといった利点があったります。
それ、結構大事そうだな。
最初から実戦で使えるクオリティの音源やエフェクトが付属しているので、これだけで打ち込みトラック制作がスタートできちゃいます。打ち込みにも録音にも向いており、Cubaseで出来ないことは無いというくらい多機能。ただその多機能がゆえに、メニューや選択肢が多くて、少しだけ操作が難しいのが悩みのタネでしょう。
例えば、メロディやコードを作るための作曲アシスト機能も搭載しているので、理論が苦手な方も安心ですね。(編注:詳しくはサンレコの連載で紹介されています)人気のマルチ音源Halion Sonic SEやアナログ・モデリング・シンセのPrologueなど、プロも愛用する音源や、ピッチ修正などができるVariAudioなど、プロ・クオリティのソフトが充実しているのも人気の理由です。
■Cubase LE(対象製品にシリアル付属)
■Cubase AI(対象製品にシリアル付属)
■Cubase Elements 12:13,200円前後
■Cubase Artist 12:35,200円前後
■Cubase Pro 12:62,700円前後
※オープン・プライス(記載は市場予想価格)
APPLE Logic(読み:アップル ロジック)
わたしはLogic Pro、世界から愛されるお姉さんです。柔らかさと優しさで包みます。どんな人のニーズにも答える分け隔てなさで、初心者から上級者までみんなにモテちゃうんですよね。
自分で言っちゃうんですね。
こちらも打ち込みを中心に作っていきたい方におすすめです。プロ仕様のDAWとしては超破格のお値段。Logic Proはもともと非常に高価なソフトでしたが、APPLE傘下となってから破格と言えるような値段になりました。ということで、Macのみ対応のソフトです。Mac専用ということもあってソフトの動作の安定性が高いのも人気の理由の一つです。
Logic Proは、APPLE製品持っている人が無料で使えるDAWソフト、GarageBandのグレードが高くなったものって感じなのか?
そうとも解釈できるかな。両ソフトの互換性もあるので、GarageBandからステップ・アップしたい方には特におすすめです。また、大量の音源、ループ素材、豊富なエフェクトなどが入っており、とてもお買い得になっています。シンプルで見やすい操作画面は、初心者の方にとっても使いやすいでしょう。
■Logic Pro:24,000円
※Apple Storeで購入
ABLETON Live(読み:エイブルトン ライブ)
ビートを作りたいなら、俺がNo.1の自信ありますよ。曲を作るために生まれた特化型次男坊で、クールなクリエイティブに長けた天才肌……って感じですかね。
そろそろDAWの上から目線に慣れてきた感じある。
トラック・メーカーの世界標準で、世界シェアNo.1です。昨今のヒット・チャート的なトラック制作に特化してます。ループなどを駆使して制作するスタイルにはベスト・マッチ。シンプルなインター・フェースも見やすく、直感的に作業できるように考えられています。ライブ演奏にも特化しており、DJスタイルのライブでリアル・タイムにパフォーマンスする人には間違いなくおすすめ。
なんでトラック制作に特化しているの?
アルペジエイター、和音を指一本で打ち込める機能、MIDIエフェクトなども充実してて、鍵盤が弾けない人でも直感的に打ち込めるんですよ。楽器が得意でなくて、4つ打ちのダンス・ミュージックやループ・ミュージックを作りたい人にとっては、これほど使いやすいDAWはないですね。
だから、Jポップのように複雑な展開でループ要素が少ない音楽では、そこまでメリットを感じづらいかもしれません。主に“ダンス・ミュージックしか作らないぜ”という方には、Liveや後述のIMAGE-LINE FL Studioがおすすめ。ダンス・ミュージックのトラック制作に特化した仕様で、世界のDJやクリエイターに愛用者が多いですよ。
■Live 11 Lite(対象製品にシリアル付属)
■Live 11 Intro:10,800円
■Live 11 Standard:48,800円
■Live 11 Suite:80,800円
※オープン・プライス(記載は市場予想価格)
IMAGE-LINE FL Studio(読み:イメージ・ライン エフエル・スタジオ)
ドウモ、FL Studio(略称:FL)デス。踊るの……好きデス。日本人に海外のダンスを感じてもらいたいデス。
こう見えて、リスもロンドン出身デス。
FLは後発のDAWで、こちらもDJやトラック・メーカー向けのDAW。DJ、トラック制作に重点を置いたプラグインの充実度が高く、シンセを使った音楽やループ・ミュージックに特化しています。世界的にも上位のシェアを誇っているようです。
近未来的なヴィジュアル……マスコット・キャラが曲に合わせて踊ってくれるプラグインがある! 遊び心がクリエイター心をくすぐるなぁ。
基本的にはブロック単位で(数小節のフレーズ)を作り、それをプレイリストに並べて組み立てていくスタイルで作れるため、慣れてしまえばスピード感のある制作ができます。比較的近しいDAWであるLiveなどと比べると、値段がお手頃なのが魅力です。そしてアップデート費用が永遠に無料なのもうれしいですね。アップデートでは流行のジャンルの音やシンセ音源の追加などもあり、洋楽トラック志向のDAWといった印象です。
国内シェアはまだまだこれからデス。ソフト内が英語表記のみだから……英語がワカラナイ人には少し慣れが必要カナ。
■FL Studio 20 Fruity:17,600円
■FL Studio 20 Producer:28,600円
■FL Studio 20 Signature:37,400円
まだDAWを触ったことのない方には、購入前の練習的に、まず無料で使えるAPPLE GarageBand(ガレージ・バンド/Mac専用)やStudio One Primeをおすすめしています。機能的に制限がありますが、初めてDTMを触るにはうってつけです。まずはこの辺りの無料版を触ってみてから考えてもよいかもしれません♪
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