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テキスト:宮川麿 イラスト:mucha

DTMに関する初心者向けのお悩みをサウンド・コンポーザーとして活躍する宮川麿さんが、Q&A形式で答えていくコーナー。連載でさまざまなお悩みを解決していきます!第4回はDTM始めたての小動物から「終わりの見えない作業」に関する質問です。

私はうさぎです。DTMを始めて1年目の17歳です。最近打ち込みで作り始めた曲が全然完成しないの!もう4カ月経ってた!

宮川麿(みやがわ・まろ)

初めまして、僕は作曲を始めて約20年生です。僕も今だに“完成!”と思って、次の日聴いて修正……また次の日も修正。“これだ!”と思ってリリースされてから1年後、「ここをこうすればよかった」「わぉ自分天才?」なんて感じをずっと繰り返しております。

え、プロもそんな感じ……!? とても言いづらいけれど、もしかして麿さん、道草して毎日サボってるんじゃないの?

宮川麿(みやかわ・まろ)

まさか!今日もコードとメロディをひたすら12時間いじってました(汗)。結論から言うと、自分が納得いく形に持っていけたときが完成なんです。

“完成”というゴールはない

さてこんな悩み多きDTM生活に、解決になるようなならないようなことを言いますが、音楽というのは「自分が完成だと思ったときが完成」です。第三者がどう言おうと、自分が納得いく形に持っていくことが大事だと思います。

これを掘り下げると哲学的な話になりそうですが、完成かどうかは自分で決められます。それが1年だったり1時間の人も居るのです。自分で満足できない段階なら、完成イメージに達するまで時間が許す限りいじるのもいいですし、“こんなもんでしょ”って割り切るのもいいと思います。

DTMで暗中模索なんて、亀のモーニング・ルーティーンだ!(編註:うさぎ界のことわざ。亀が効率よく朝の身支度をする間に夜を迎えてしまうことから「時間をかけ過ぎると目的が見失われること」との教えを表す)。

という声が聞こえてきます。うさぎはやっぱり、速く走りたいタチなんですね。

うさぎみたいな考えの皆さんへ、僕はある程度進めたら曲としてファイル書き出しをして、DAWを閉じます。で、1日とか半日とか時間を置いてから聴き返します。そこで“う~ん”となればもう一度作り直すし、OKならそのまま完成です。ただの直感ですが(笑)、こういった自分ジャッジ・ルールを決めておくと、完成を決めやすくなるかもしれません。

ちなみに、聴き直すときのファースト・インプレッションを大切にすることも心掛けています。違和感を覚えたところには大体何か問題があるし、“微妙”って印象のときは後で聴いてもやっぱり微妙だったりするからです。迷うくらいなら作り直すくらいの気持ちがちょうど良いと思っていたりします。

パッとしない曲を作ったときにどうするか

最近の私の悩みは、自分で聴くのもダルいようなループ・ミュージックを量産してしまうこと!もっと緩急があってワクワクするポップスに展開させるには、どうしたらいい?

宮川麿(みやかわ・まろ)

そうだなぁ……その状況に陥っているのは、自分のダメな部分に気付けていないパターンだと思うので、ここでは3つダメな例と改善策を教えるよ!

1. Bメロからぬるっとそのままサビへ繋げてませんか?

宮川麿(みやかわ・まろ)

“サビ(ドロップ含む)が地味”とか“派手さが足りない”と感じる方、サビを華やかに聴こえさせたいならば、Bメロからそのままぬるっとサビに入ってしまうのは勿体無いです!鳴ってた楽器を一斉に止めて、その後展開するサビらしさを演出するための“ブレイク”という技を使ってみましょう!

簡単に言うと、サビ直前の1小節音を止めるだけですが、そのブレイクの直前の一拍を使い、ドラムのフィル、リズムのキメ、なんかを入れるとより空白時間が際立ちます。僕はサビにより勢いを付けるために“リバース(逆再生)・シンバル”や“リバース・ピアノ”だけを入れたり。EDMならば派手なスネアとかを入れたりしますね!

神は細部に宿ると言いますので、大事なサビ前ではお膳立てしてあげるようにしましょう!このテクニックはイントロなど、セクションを問わずに使えます。

バラエティ番組の芸人さんや会社にいるおじさんも、大事なこと言う前ちょっと黙るって言うもんね!そういう感じかぁ!うさぎ、掴めてきた!

2. 歌のバランスがバラバラで歌詞が聴こえづらくないですか?

宮川麿(みやかわ・まろ)

うさぎのデモ音源を聴いたんだけど、歌の音量がテイクごとにバラバラで、サビになるとコンプがかかりすぎて逆に声が引っ込んで聴こえたり、結果的に歌や歌詞が聴き取りづらいのが非常に勿体無い!結論から言うと、コンプである程度整えたら、オートメーションを書いてボーカルの音量を調整してあげましょう。

言うなれば、歌はすごくダイナミクス(音の大小)がある楽器。そのままダイレクトに録音すると、Aメロは小さめ、サビは声を張って大きい、などの状態になりやすいです。それをある程度整えるため、コンプは必須なのですが、深くかけ過ぎるとノイズや不必要な成分まで前に出てきてしまう上に、一番大事なニュアンスの部分が台無しになってしまう恐れがあります。

コンプで抑えれきれない部分とコンプがきつくかかって埋もれちゃった部分、2つを意識してオートメーションで整えていくイメージで作ると、ナチュラルで聴きやすくなるはずです!

他にもWAVES Vocal Riderなど歌のレベルを自動調整するプラグインにサポートしてもらい調整するのもお勧め。歌モノの場合、リスナーはほとんどボーカルを聴くことになりますので、一番時間をかけて丁寧に作ってあげてくださいね♪

3. 迫力のある音作りの方法を知っていますか?

うさぎ、“音に迫力が無いなぁ”とか“お友だちと比べると音がしょぼいなぁ”って思って困ってた。麿先生はどうして上手にできるの?

宮川麿(みやかわ・まろ)

僕も10代のころは自分が作ったデモをコンポで流したらすっかすかでびっくりしたのを覚えてる(笑)。皆さんも自分の作った音をもっと派手にしたい!と思いますよね。これにはミックス上のさまざまな要因がありますが、ステレオ・ミックスの音圧と音量が最適化されてないケースが多いです。

プロの音源は、曲中にある突発的なピークを抑えて、全体のレベルが大きく聴こえるように作っています。マルチバンド・コンプ、マキシマイザー、ピーク・リミッターといったツールで行います。これにより、音の密度が上がって、楽曲全体の迫力や音圧も上がるのです!

最近はIK MULTIMEDIA T-Racks Oneなどのように、マキシマイザー/コンプ/EQ/ステレオ・イメージャーなどが一つになったお手軽プラグインもあるので、難しいこと抜きにしたい人にはお薦め。僕も結構、使っています。

使うときには、音量を大きくしたいがゆえにかけ過ぎて音が割れてしまったりしないように注意です。マキシマイザーやリミッターは手軽な反面、歪んだり、ミックス・バランスが崩れる原因にもなります。かけ過ぎは厳禁です!

それでも終わりの見えないあなたへ

宮川麿(みやかわ・まろ)

まだたくさん曲を作ったことが無い人で、完成かどうか迷うようだったら、どんどん次の曲の制作にシフトしていくのがお勧めです。曲を作れば作るほど、クオリティは上がりますし、いろいろな判断ができるようになります。曲作りを繰り返すことで、見えてくる景色が広がっていくと思いますよ♪

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