テキスト:宮川麿 イラスト:mucha
DTMに関する初心者向けのお悩みをサウンド・コンポーザーとして活躍する宮川麿さんが、Q&A形式で答えていくコーナー。連載でさまざまなお悩みを解決していきます!第10回は作曲家志望のカワウソから「マキシマイザーって何?」という質問です。
目次
マキシマイザーってどんなツール?
ミックスを頑張っているあなたにマキシマイザーを。
作曲家の麿です。今回も、全DTMユーザーが一度は抱える悩みランキング上位“なんか音ショボいんですけど!?”シリーズです〜。今回は“音圧を上げるための魔法=マキシマイザー”についてお教えします!
カワウソです! 前回のレッスンでは、麿先生のおかげでミックスが理解できました! 今回はマキシマイザーマスターして、さらにDTMの技術を上達させたいと思います!
マキシマイザーって何?
マキシマイザーとは、音圧、音量感を上げる専用のツールです。とっても簡単お手軽に音量が上がってしまうので魔法の調味料、劇薬なんて言われています(嘘です)。
“マキシマイザーで音量が上がる”って言うけれど、普通のボリューム・コントロールやコンプレッサー、リミッターとはどう違うのですか?
マキシマイザー、ボリューム操作、コンプレッサー、リミッターも基本的には音量を操作するものとしては同じです。その中で特にマキシマイザーとリミッター、そしてコンプは基本的な動作の仕組みが同じものになっていますが、用途や使い方が異なると覚えておきましょう。マキシマイザーはもともとCDに収められる音量に限界があり、その限界を超えない範囲で最大限音量を稼ぐために開発されたツールです。楽器などを録音した音は、瞬発的に音が大きくなるピークと呼ばれるものががたくさん存在しているんですね。で、このピークが一瞬“バン!”って大きく出てしまうと、DAW上のピーク・メーターが振れて赤く点灯し、音割れが起こります。でも、ピークが振れないようにすると、全体的に音量が下がってしまうのです。結果、全体的な音量が小さいと、迫力が足りないという印象につながります。それを一発で解決してくれるエフェクターがマキシマイザーです。
つまりどれも音量を操作するものだけれど、その中でマキシマイザーは“全体の音に迫力を出したい”と思ったときに選んで使ってみればいいのですね。麿先生の普段の使い分け方も教えてもらえますか?
いいですよ! ミックスでは、コンプもリミッターも基本的には音のピークを削りダイナミクスを平均化する用途で使用しています。歌などにかけるコンプは聴感上の印象を整える用途、オケや全体にかけるコンプは音のまとまりを出したり密度を増やす用途に使います。近年のリミッターとマキシマイザーは基本的に似た用途でくくられますが、リミッターではコンプで抑えきれない生音のスネアのピークを叩いたり、歌の突発的なピークを抑えるのに用いたりします。マキシマイザーは、突発的なピークを抑えて、そのほかの部分の音量を上げることで、迫力あるサウンドにしてくれます。主にマスター・フェーダーにかけて、曲全体の音量をコントロールする使い方が多いです。そんな大人気のマキシマイザー、各社からたくさん出ており、性能も年々上がってきています。
なるほど! なんか調べたらいっぱい種類があるみたい! こんなにあったら選べないなぁ。どうしよう……。
麿先生おすすめのマキシマイザー4選
僕がセレクトした代表的なマキシマイザーを4つ紹介します。マキシマイザーは、単体のものだけじゃなくて、マキシマイザー機能を持つ多機能プラグインもあるよ!
IZOTOPE Ozone
昨今一番人気です。これ一つあればマスタリングはお任せ。マキシマイザー以外にもEQ、コンプ系はもちろん、AIを使った自動マスタリング機能まで搭載している至れり尽くせり具合。ただし完全プロ仕様なだけあって、値段は少しお高めです。機能が多い分初心者にとって難易度が高いという点も考慮しないといけないと思いますが、予算がある方にはぜひお薦めしたいですね。
IK MULTIMEDIA Stealth Limiter
ボタンも少なく、簡単な操作で爆音にできてしまいます。これが発売されたときは音がつぶれずに音量感が上がって、とても感動しました。マキシマイザー特有のひずみが出にくく、透明感ある音量アップが期待できます。値段も安価なのもポイントです。
FABFILTER Pro-L2
個人的に使用頻度の高いのがこの子です。透明感のあるマキシマイズからラウドな感じまで、音色キャラクターを変えられる便利機能が付いていて、音圧感をコントロールしやすいので愛用しています。ラウドネス・メーターを搭載しているのも中級者以上にうれしいポイントでしょう。そこそこ良い値段がしてしまうのがネックですが、たまにセールがあるのでそこを狙うのもアリ!?
WAVES L2/L3 Multimaximizer
“マキシマイザーといえばLシリーズ”と言うほど、マキシマイザー系の元祖プラグインです。これを使用された音源は数多に及ぶでしょう。発売から結構な年月が経っていますが、いまだに人気です。昔はすごく高価だったのですが、最近はセールなどで安価に狙いやすい一品。ガッツリ音圧を上げるには最適ですが、Lシリーズ特有のキャラクターがあるのと、後発のマキシマイザーに比べると個人的にはクリアさが物足りないかなという印象です。
まとめ:迫力ある音にしたければやり過ぎは禁物
これらマキシマイザーですが、悪魔の調味料なので、かけ過ぎると音が割れたり、ダイナミクス(音の起伏)の無いのっぺりした音になりがちです。結果的に、迫力の無い音になってしまう……本末転倒ですね。音量を大きくして派手にしたい!という気持ちはとても理解できますが、美味しい調味料も入れ過ぎたら料理を台無しにしてしまいますよね? 用法用量は正しく守って使うことが大事です♪
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