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※メイン画像引用元:YouTubeサムネイル(リンクは文中)

物語を引き立てる2人のボーカルの処理

Kanariaさんの声質は高く、繊細な男性の声と言えます。それに対し、星街すいせいさんは重心が低く太い、豊かな女性の声を持っています。異なる2人の声は、楽曲に独自の調和とコントラストをもたらします。

サウンドに注目すると、Kanariaさんの声にはザラザラとしたエフェクトが施されています。このサチュレーション的にザラザラとさせる処理により、彼の声はより生々しく、感情的な強弱を強調しています。特にこの処理は、“序盤の形容詞的歌詞”や“後半の情景を描く歌詞”と楽曲全体の雰囲気とも良好に一致しており、聴き手に強い印象を与えます。この処理はKanariaさんが普段のボーカロイド作品でも用いている手法であることから、リスナーに親しみやすさと納得感を与えています。

そして、星街すいせいさんのボーカルは、自然に残された録音時のダイナミクスに温かみのある音色処理が絶妙に組み合わさりパンチのあるシルキーな音になっているため、Kanariaさんのスパイシーな声とは対照的な鮮やかさを楽曲に与えています。星街すいせいさんの声の新鮮さと、Kanariaさんの声の音質にある安定感が見事に調和して、一体感が生み出されているのです。

このように、2人の異なる個性を生かしたボーカルの処理は、調和と対比を通じて楽曲全体に豊かさとと新鮮さをもたらします。2人の声が楽曲の中で完ぺきに融合し、それぞれの個性を最大限に引き立てながらも、共に1つの物語を語る力を引き立てています。

アナログ感のあるエフェクト処理で没入感が深まる

Kanariaさんの過去の作品と「レクイエム」を比較すると、エレクトリックギターやマスタリング(編註:楽曲のミックス後に行う最終仕上げ)で施された処理には、明らかにブラッシュアップされたアナログ感が感じられます。具体的な機材またはプラグインは明らかではありませんが、これらアウトボードを通したかのような音質は、音楽に厚みとリアリティを提供しています。

「レクイエム」の中で聴けるアナログ機材の音の要素は、その自然な響きと共にデジタル音源との対比を形成して、その鮮明さを強調しています。特にギターの音色は生々しく、過去のKanariaさんの音源から一段階進化した自然な質感を通じて、“新たなKanaria楽曲のイメージ”を鮮明に描き出しています。最終段のマスターバスに施されるハードウェア処理(またはそれに近い質感のプラグイン)は、楽曲全体を包むような温かさと密度感をもたらし、その一方で洗練された近未来的なサウンドも維持しています。デジタルとアナログ、個性的なボーカルなどが一体化する接着剤の役割も果たし、楽曲全体が一貫性とまとまりを持つことを可能にしています。

これらの手法は、Kanariaさんの最近の楽曲作りの特徴であり、デジタルとアナログの両面を活用することで、聴き手に対する鮮烈な印象と、音楽の世界への没入感を深めています。

裏方リズムパート×丁寧なローエンドの処理

「レクイエム」において、ローエンドの処理とアレンジ作りは特に重要な役割を果たしています。ローエンドとは、音の低い領域、すなわち低音部のことです。ここでは具体的に、ベースの音を中心に考えます。

楽曲中のベースの音は低音の核になり、ドラムと合わさってリズムの土台を形成します。今回のベースの音は、アタックが丸く、サステインもそこまで長くない比較的柔らかい音。それとは対照的にキックの音が固く、重心の高い、やや尖った音になっています。これにより、リスナーは音楽のリズムをはっきりと感じつつ、同時に心地良い低音の振動に身を任せることができます。それでいてローエンドが丁寧に処理されているため、EDMやK-POPのように画面から飛び出てくるような音ではなく、あくまで楽曲のリズムを支える裏方的な音に仕上げているのがKanariaさんらしさだと思いました。

また、楽曲全体のアレンジも見逃せないポイントです。編曲、つまり楽器の構成や音色選びは、楽曲の個性を形作る重要な要素。この曲では、サビから積極的に登場する飛び道具的な高音のシンセのメロディや、中音域のリズムパート、ギターとともに、低音部のベースラインが独自の役割を果たしながらもまとまりを持っています。

以上のように、本楽曲におけるローエンドの処理と編曲は、2人の声をより個性的に輝かせると共に、独自の世界観を持つKanariaさんらしさを引き立てる重要な要素です。これらの要素が一体となり、一つの楽曲としての魅力を最大限に引き出しています。

超学生が最近購入したプラグイン

UNIVERSAL AUDIO UAD-2 A/DA Flanger(フランジャー)

最近DAWをIMAGE-LINE FL Studio(以下、FL)からPRESONUS Studio Oneに変えたのですが、FL付属のような良い質感のフランジャー/コーラスプラグインを探しており、UAD-2のA/DA Flangerが生々しさがあり、良かったので購入しました。見た目も気に入っています。

曲のボーカルの一部分に演出としてかけたり、ハモリやコーラスを少しにじませるために使っています。アナログ感のあるフランジャーなので、ある程度大げさにかけても安っぽくならないのはさすがのUAD-2という感じでした。

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