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聞き手:Mizuki Sikano ※メイン画像引用元:YouTubeサムネイル(リンクは文中)

ネット発の歌い手というだけでなく自らボーカル・ミックス、エフェクト・プロセッシングも行う美的センスとこだわりの持ち主、超学生(読み:ちょうがくせい)。そんな彼ならではの視点で“ネット発アーティスト”を紹介し、そのサウンド的に魅力的な部分を語ってもらう。彼の脳内で日常的に行われている音楽的研究を通して、歌と音楽制作の楽しみを新発見できる連載! 今月はキタニタツヤ×はるまきごはん「月光」です。

ネット発アーティスト・サウンド解剖開始

余談:マイブームはリンゴのカヌレ

ー1カ月ぶりなので余談から聞いてみようかと思うのですが、最近マイブームとかはありますか?

超学生 え!? まさかの……それは音楽以外でですか?

ーそうですね。ディープな音楽の話をする前に、そういうのもお聞きしてみようかなと!

超学生 う〜ん、あ! コンビニで売っている“リンゴのカヌレ”が美味しいでーす。

ー良いですね(笑)。プレーン味じゃないんですね。

超学生 なんか配信で“カヌレを食べたことがない”と言ったら、ファンの方にファミリーマートの“リンゴのカヌレ”をおすすめされたんですよ。それで買って食べてみたら、本当に美味しかったんです。最近のマイブームです。

ー甘いものが結構お好きなんですね。

超学生 好きですね。あとマカロンを食べたいと思ったので通販で購入してみたら24個も入っていて、だいぶ多かったなと。今はもうマカロン要らないです。

今月の選曲キタニタツヤ×はるまきごはん「月光」

ー今度リンゴのカヌレ食べてみます! ということで、本題にいきましょうか。まずは今月取り上げる「月光」を選曲した理由を教えていただけますか?

超学生 まず、めちゃくちゃ好みだったんですよね。MVを見なくても“夜の曲なんだな”って分かるようなしっとりした楽曲で。あと、コラボ楽曲ということでキタニタツヤさんとはるまきごはんさん2人の“公約数的な”アレンジやミックス、音作りになっているのが面白いので、ここでお話したいなと思ったんです。おそらく2人で打ち込みをやられたのは前提として、歌詞、ミュージック・ビデオ、楽曲の世界観ははるまきごはんさん、音や楽器のセレクトなどからはキタニさんの色を強く感じなと思いました。だからサウンドの話をすると、デジタル感が少なくてネット出身クリエイターっぽくないサウンドに感じられます。アナログ機材を通したような温かくて、太い音がするんです。

ーキタニさんとはるまきごはんさんのサウンドは、超学生さんから見てどんな特徴があると感じられますか?

超学生 個人的な感覚にはなりますが、キタニさんはやっぱりロックとかポップスで聴けるような太い音が印象的で、はるまきごはんさんは「約束」と「再会」などを聴いて以来ずっと各楽器の配置……定位感も含めてステレオ・イメージがすごい優れてる方だな、って思っています。

ーその場合「月光」をインターネット感のないサウンドに持って来させている要素は、キタニさんの音楽の特徴にある、ロックやポップス的音作りにあると感じる?

超学生 もちろん実際は分からないですけど、聴いた感覚的にはそうじゃないかと思うんですよね。

ーということは、はるまきごはんさんの独創性などはミックスなどの音作りよりも、アレンジなどに反映されているのではないかと思いますか?

超学生 そうなんですよね。はるまきごはんさんはミュージック・ビデオもご自身で手がけられているのもあり、世界観が結構飛びぬけて確立されているボカロPの1人だと思ってるんです。中でも未来かつ宇宙っぽい空気感を構築するのが得意な方という印象で、「月光」でもそれが反映されているように感じます。

2人の声が似たニュアンスの世界観でまとめられている

ーお二人のサウンドもですが、アーティスト・イメージもかなり違いますよね。

超学生 そうなんですよ、そこも面白いなと思ったところで。キタニさんは音の一つ一つの主張が強かったり、歌詞や音の太さなどもはっきりしているので全体的にパワーを感じるのですが、はるまきごはんさんは歌い方も繊細で歌詞も内面的ですし、アレンジでも慎重に音を置いていった上でそれを極限まで外側に向けて広げて世界観を作っているようなイメージなんです。だからお2人は、音楽的に結構逆の要素をいろいろと持っているアーティスト同士だったんじゃないかと思うんですよ。

ー歌い方とボーカル・ミックスの方向性も、逆の2人ということ?

超学生 そうですね。キタニさんは迫力のある歌い方で、ミッドを太く艶かしく聴かせるボーカルというイメージです。はるまきごはんさんは歌い方が繊細で、ハイ(編註:エア成分や子音の響きに関係する高域)の処理をきらびやかに処理したエアリーなボーカルが持ち味だと感じています。

ーそういうサウンド的に逆な点が多く見られる2人のコラボだから面白いってこと?

超学生 普通コラボ曲では、2人の声の個性を誇張して生かすことが多いと思うんですよね。だから、はるまきごはんさんの声は繊細にエアリーに聴こえるように作って、その上でキタニさんの声は温かく作って、2人が例えばユニゾンしたときに奇麗にバランスを取り合えるみたいな、僕だったらそういう表現をするんじゃないかと思うんです。でも「月光」では2人の声が似たニュアンスの世界観でまとめられている。どちらも比較的太く温かく広がったサウンドですが、キタニさんの声にはエアリーな成分が少しプラスされている気もするし、はるまきごはんさんの声は少し太く重心が下がった音になっていて、2人のソロで普段聴けないボーカルを聴けるのが面白いと思いました。

はるまきごはん’s ボーカル・ミックス予想

ー普段のはるまきごはんさんの声について伺いたいと思います。はるまきごはんさんは今でもボカロ曲をコンスタントにリリースしていて、ボカロのボーカル・ミックスも頻繁に行っている方ですね。そこからの影響が自身のボーカル・ミックスにも反映されていたりとかはしそうですか。

超学生 プラグインのデジタル感とかは、生かしてミックスしているんじゃないかなとは思います。これは僕の勝手な印象でしかないですが、はるまきごはんさんの使うエフェクトはWAVESのH-SeriesやRenaissanceっぽいと思うことがあるんです。僕の中ではWAVESプラグインを使うとデジタル寄りの独特なニュアンスが加わるのが魅力だと思っていて、そのデジタル的エッセンスがはるまきごはんさんの声から聴こえてくるんですよね。僕だったらあのエアリーなボーカルは、ディエッサーで高域の暴れを抑えた上で、チャンネル・ストリップというエフェクトのWAVES SSL E-Channelなどを使って再現するかなと思います。本当はどのような処理をしているのか、お聞きしてみたいです。

キタニタツヤ’sボーカル・ミックス予想

ー一方で、キタニさんのボーカルは“ロックで聴けるような太い音”ということでスタジオ機材などの影響が強く感じられるということだと思います。

超学生 僕の聴いた印象として、キタニさんは140〜150Hzの低域成分より、800Hz辺りの声の太さや生っぽさみたいなところが集まる中低域を“ぬるっと”前に押している感じがするんです。それがEQとかで押し出しているというよりかは、コンプの歪みとかで生み出されたものなんじゃないかって思うんですよね。アナログのコンプって歪んだときに特定の帯域が前に押し出されることがあって、これはそういう出方だなと思います。

ーそういった、中域に粘り気をもたらして良い感じに聴かせる特徴を持ったアナログのコンプなどを使っているのかもしれませんね。「月光」のミックス・エンジニアは浦本雅史氏が担当しています。

超学生 そうなんですね。サンレコに掲載されている浦本さんのスタジオ機材を拝見しているのですが、NEVEやCHANDLER LIMITEDの機材が置かれていて、まさにと思うイメージの高級コンプたちが並んでいるなと思いました。あとこの音像には、マイクを置く位置=マイキングも関係していると思います。録った時点で大きめに収音されている帯域がコンプの影響を受けて、独特のニュアンスになっていると思うので。

ーそれで言うならば、マイクの種類の影響も大きそうですね。

超学生 これも分からないですけど、普段のキタニさんの声はクリアな傾向のマイクで録音しているんじゃないかと思うんです。ウォームなマイクで録るとボワボワしてしまいそうだし、細いマイクだとあの迫力は出ないと思うから。でもそのマイクのチューニングによって、独特の質感が出ている可能性もあると思います。普段のはるまきごはんさんの声は、オフマイク(編註:マイクとの距離が遠め)で録っていると思うのですが、音自体は割とがっしりしている気がして。ウォームなマイクで録られているのではないかと……まぁ推測でしかないですが。ただ、今回の2人の声はキタニさんの楽曲で聴けるニュアンスに近いんじゃないかな、とは思います。

ーそこはエンジニアによるエッセンスが大きい部分ですね。

超学生 そうですね。あとエンジニア・ワークではローエンドの処理も素晴らしいと思いました。ラウドネス・レベルを考慮すると、ローエンドでいかに支えるかがとても大事になると思いますが、「月光」は楽器数が多いけれどキックとかベースを基調としていて、ほかの楽器パートは向こうで聴こえる感じ。でも、各音のトランジェントはしっかりと聴こえてくるのが今っぽくて奇麗だと思います。

ーご自身でも「月光」を歌ってみたいと思いますか?

超学生 超えなきゃいけないハードルが幾つかありますね。一つ目は、コラボ相手を探さないといけないのと、ミュージック・ビデオの映像の使用が許可されていない楽曲なんでオリジナル映像を作らないといけない。そういったところをクリアできたら、ぜひ挑戦してみたいと思います。

超学生が8月に購入したプラグイン

FABFILTER Pro-L2(リミッター)

ー最後に、8月に購入したプラグインは何かありますか?

超学生 FABFILTER Pro-L2です。これは、トゥルー・ピーク(編註:作った音源をファイル書き出しした後に発生が確認できるノイズ)リミットのオーバー・サンプリング(編註:音声変換時に行うサンプリングを高い周波数で行いノイズを発生させないようにする機能)で、8倍とか16倍だけじゃなくて“32倍を選択できる”というのが気になって購入しました。あとは“STYLE”と書かれたところから、あらゆる音楽ジャンルに適した効果を発揮できるようにプリセットを8つ用意しているのも良いなと思いました。

リミッターってどんな機材?

plug+(プラグ・プラス)

リミッターはミックス/マスタリング段階などでオーディオ・データのピークを抑えて、クリップ・ノイズなどを防いだり、小さい音量を上げて音圧を出すような用途で使うエフェクトのことを指します。打ち込みで音楽を作って自分でネットにあげたい人は持っておくと便利!

ーこれまで使っていたリミッターとはどう違いますか?

超学生 僕はパラメーターの設定で結構優柔不断になるタイプなので、これまではワン・ノブ操作できるような簡単なリミッターを選んでいたんです。でも、設定を細かく変更できるものも試してみたいと思って買ってみました。今はプリセットなどを眺めながら、ちょっと使い方を模索中です。

ー使ってみてはいるんですよね?

超学生 そうですね。良かった機能は、オーバー・サンプリングでした。普段使っていたリミッターでは、高域がキリッとするのが好きじゃなくてオーバー・サンプリングをオフにして、出力(編註:アウト・シーリング)を下げてたんです。でもPro-L2は音質変化が起きづらくて、むしろ良い音になるのでオーバー・サンプリングをオンにできるようになりました。購入して良かったなと思います。

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