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※メイン画像引用元:YouTubeサムネイル(リンクは文中)

チープなサウンドと全力疾走感のあるアレンジ

今回の曲は『チェンソーマン』を題材にしていて、中でも特に“パワー”という登場人物に寄り添った楽曲になっています。「錠剤」は、サンプリング音源やシンセサイザーのレイヤリングなど、あえてチープな音を用いて『チェンソーマン』世界観+“パワー”のキャラクター性を構築していますが、展開やリズムからは“全力疾走感が感じられるため、これらを総合的なアレンジとして見たときにjohnさんの作品に対する愛が感じられます。

ちなみに『チェンソーマン』のエンディングテーマを担当するアーティストは週替りで複数居て、johnさんと同じボカロP出身のアーティストであるKanariaさんやsyudouさんなどが作った曲もとても素晴らしいです。でも“このレトロでチープなサウンド”を取り入れる手法により『チェンソーマン』の世界観を描き出しているのはjohnさんだけなのです。

単に“チープなサウンド”と聴くと、言葉の響き的に、技術的な欠陥のように感じられる方も居るかもしれません。しかしながら、そうではなく、これはむしろjohnさんの個性が最も含まれた音楽的表現になっているのではないかと思っています。

緩急の演出=キャラクターの波乱万丈さに

楽曲全体を通じて見事に表現された緩急とそのコントラストは、“キャラクターの波乱万丈さ”を表現するだけでなく、聴者の感情の流れをも巧みに操作して揺さぶっています。曲の展開として用意されている、リズムの変化、音の密度の変化、明るさと暗さの交替などが、『チェンソーマン』のさまざまなシーンにおけるキャラクターの感情を反映しているように聴こえるのです。

緩急を演出する手段として、例えば、楽曲冒頭でのシャウト、ラストサビ直前での空白、2番からのやや整理された編曲などが挙げられます。この3つが、特にアニメの特徴を顕著に表現しているように感じられました。あるインタビューでjohnさんは“1番では僕やデンジから見たパワーを、2番以降は作品全体のイメージを歌っている”と仰っていたので、johnさんにとっても緩急を特に大切にしていたのかもしれません。

また、ネタバレを避けるためにも詳細は省きますが、「錠剤」がエンディングとして流れる第4話でのパワーの感情の起伏などが、johnさんの歌としてはめずらしい“シャウト多めの歌い方”にも表れているように思えます。これに関しては次の項目にて詳しくお話したいと思います。

独自のウェットなボーカル処理

「錠剤」に限らず、普段からウェットなボーカル処理を好んでいるjohnさんは、その点では現在の音楽シーンで珍しい存在だと言えます。しかしこのウェットな処理は、johnさんの自然なザラつきを持つ声質と見事にマッチしていると思います。ライブで直接聴いたり、ラジオで地声も確認した上で、そう思いました。

特に「錠剤」ではメインボーカルをコーラスやハモリと組み合わせたり、定位感もやや曖昧にしており、リズムエディットもタイトに行わず、録音されたものをそのまま生々しく使用するスタイルです。このボーカルミックスは、聴き手に何かを訴えるのではなく“登場人物や作品そのものの感情の揺れを表現したい”という目的において完ぺきにマッチしていると言えます。

ミックスだけでなく歌唱方法についても、珍しくシャウトなどをして激しい歌い方を多用している「錠剤」では、ワイルドな人生感を持つ登場人物たち=パワーやデンジ、そしてスプラッター映画(編註:殺害シーンなどを含む映画スタイルのこと)のような破天荒な進行を見せる『チェンソーマン』そのものを表現しており、johnさんの惜しみない作品愛を感じ取ることができました。

超学生が最近購入したプラグイン

ANTARES Auto-Tune Pro X

純粋にピッチ補正をする用途でAuto-Tune Pro Xは何となく不便なイメージがあったのですが、知り合いのミキシングエンジニアに“使い方次第では素早く自然な補正が可能”だとお薦めをされたので買ってみました。

僕は既に詳細な設定を行うグラフモードが使えないUNIVERSAL AUDIO UADプラグインのバージョン(Antares Auto-Tune Realtime Advanced)を所有していましたが、せっかく今回Auto-Tune Pro Xでグラフモードを使えるようになったので、ケロケロボイス加工ではなく、今までCELEMONY MelodyneやSYNCRO ARTS Revoice Proで行っていた繊細なピッチ補正をこちらで練習してみています。

洋楽っぽいサウンドに色付けがされるのと、オートモードによって手動で上下させなくても好みの音程感になるため気に入っていますが、まだ操作感に慣れていないため、もっと使い倒す必要があると感じています。

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