聞き手:Mizuki Sikano ※メイン画像引用元:YouTubeサムネイル(リンクは文中)
ネット発の歌い手というだけでなく自らボーカル・ミックス、エフェクト・プロセッシングも行う美的センスとこだわりの持ち主、超学生(読み:ちょうがくせい)。そんな彼ならではの視点で“ネット発アーティスト”を紹介し、そのサウンド的に魅力的な部分を語ってもらう。彼の脳内で日常的に行われている音楽的研究を通して、歌と音楽制作の楽しみを新発見できる連載! 今月はAzari「Be My Guest」です。
目次
ネット発アーティスト・サウンド解剖開始
余談:Kindleタブレットをお風呂に持ち込んで漫画三昧な話
ー12月はご多忙の様子でしたよね。最近はどうでしょうか?
超学生 連載3回目の余談で、“Amazon Kindleのタブレットを2枚持ってる話”をしましたよね。あのKindleタブレットを漫画を読むためにめちゃくちゃ使っていて、最近はお風呂でも使えるようにタブレットが入るくらいのジップロックを買いましたね。
―ジップロックって、食品を入れるあのやつ?
超学生 そうです! お風呂にまでKindleタブレットを持ち込めるようになっちゃったら、さらに漫画を買いまくるし、Kindle Unlimitedで読めるタイトルも含めて何冊も読むようになってきちゃった感じ。
―イチオシの漫画タイトルは?
超学生 『猫を拾った話。』っていう、子猫を拾ったと思ったら“これ本当に子猫か?”みたいな話ですね。元々はTwitterで知ってたんですけど、Kindleのおすすめみたいな欄にこの作品が出てきて“単行本あったんだ”と思って今読んでいます。この猫に奇妙な雰囲気はあるんですけど、基本的には癒し系で読んでいてとにかく可愛い~ってなる。
猫を拾った話。1話(1/8) pic.twitter.com/EnZ0ddSwmt
— 寺田亜太朗『猫を拾った話。』④巻12/14 (@t_atarou) March 22, 2020
―ホラー系じゃないんですね。
超学生 まぁ時々ホラーな演出も挟んでくるしこの猫の正体も全然判明しないんですけど、かわいいんです。僕は結構動物が出てくる漫画が好きですね。
―Kindleタブレットはカラーじゃないから、“漫画だとどうなんだろう?”と一瞬思ったんですけど。
超学生 確かに。カラーで漫画読みたい人はダメですけど、基本的に漫画はモノクロでいいと思っているんで、僕は大丈夫でしたね。
今月の選曲 Azari「Be My Guest」
―では本題に行きましょう。今回、Azariさんの「Be My Guest」ですね。Azariさんは何者なんでしょうか?(笑)。超学生さんは、この音楽性も世界観もとても好きそうです。
超学生 何者なんでしょうね? もう、おっしゃる通りAzariさんの音楽が好きです。あと毎回Azariさんの表現は、“現代のリスニング環境とかなり相性の良い音”をしてると思ってて。“いつか、ここでお話できれば”と思ってました。
―そんなAzariさんの「Be My Guest」を選曲した主な理由は何でしょう?
超学生 3つのポイントにまとめると、
・Azariさんの怖いワールドの描き方
・低重心+広いステレオ・イメージ
・ドライで生々しいサウンド
です!
Azariさんの作る怖いワールドに迷い込んじゃう
―超学生さんが本能的にAzariさんの音楽に惹かれる理由は?
超学生 やっぱり世界観ですかね。ほかにもホラーを作るボカロPとして、例えばなきそさんとかが居ますが、なきそさんの作るのはある意味でリアルなホラーで、僕らの住んでいる同じ世界に居る、恋愛的、情緒的にちょっとおかしな人という感じだと思うんです。Azariさんのホラーはそういうのと、ちょっと違う。
―なきそさんが描くのは、人間誰しもきっかけがあれば実際なってしまう可能性のある怖い人格みたいなイメージですね。
超学生 そういう描き方は、多くの人が共感しやすいホラーだと思うんです。一方で、Azariさんのホラーは、もう完全に“Azariさんの作るワールドに迷い込んじゃう”感じ。現実世界では起こりづらいことが起こっていくストーリーで……全く別方向だと思うんです。
―含みがあって、想像欲がかきたてられますよね。
超学生 おっしゃる通りですね。未知は、恐怖の根源だと思うんです。人間の恐怖のトップは死だと思いますが、死ぬことがなぜ怖いかというと、“誰も死んだ後のことを知らないから”じゃないかなと。Azariさんの作る世界っていうのは不思議なもので、“ここに入ると、どうなっちゃうの?”っていうのが分からないですよね。
―主人公がどこに居て、何に巻き込まれているか、謎めいてますよね。
超学生 しかもAzariさんは、主人公がホラーに巻き込まれるまでのグラデーションも奇麗に描きます。いきなり“目が覚めたらヤバい世界に居ました。ここは地獄です”って、僕の大好きなパニック・アット・ザ・ディスコの楽曲などでされる表現とは違う。もちろん、だからこそ映画みたいに、一線を引いて楽しめるというのはありますが。
―Azariさんはそれとは違う?
超学生 Azariさんの描く主人公って多分僕ら聴き手で、だから最初は日常に居る設定なんです。そして気付いたら、手遅れみたいなグラデーションを描いている。視聴者を巻き込むような作りになってるんですよね。
―ということは、歌がストーリーテラーような役割を持っているんじゃないかと。そういうポイントは歌いやすさにつながったりしますか?
超学生 どうですかね……僕は基本的に主人公になり切らないと歌いづらいので、要素的にこういうのがあると入り込みやすいみたいなものは、特にないんです。でも「Be My Guest」の歌いやすい部分は、やっぱり楽器数が少ないからテンポ感がハッキリ聴こえるところ。録音時にグルーブが掴みやすくてノれるのが良いですね。
―これくらいスッキリしたオケだと、自分のボーカルのモニターがしやすい?
超学生 なるほど、確かにそうですね。ただ、こういう楽器数が少ないヒップホップでは、楽器数の多いブワーッと音圧たっぷりな曲だと分からなかったようなリップ・ノイズが聴こえてきたりして、“ボーカルを普段より神経質に処理する必要があるんじゃないかな”と。
―自分の声をセルフでミックスする方にとっては、さらに神経質になるのかもしれない。
超学生 あと僕はボーカルのオートメーションを細かく書くタイプなので、こういう楽器数が少なく電子楽器で構成されている楽曲の場合、ダイナミック・レンジが人間的じゃない場合が多いから、“丁寧にオートメーションを書かないとな”と思います。
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